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異能が現実のものとなったこの街の片隅で。  作者: 松葉天佑


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立ち往生

 さて、情けなくも那須に助け舟を求めた神栖と高月、この2人は今どうしているだろうか。




 彼らは互いの手を握り、








 立ち往生していた。








(マズイマズイマズイ……!)


 那須の助言を頼りに高月を外に連れ出した所までは良かった。

 いや、ノープランな時点で良い訳がない。



遡る事数分前。



「まずは…あずちゃんからだ…」


 彼女はやはりお優しい人だ。2件の救助要請を受けた那須は、1つ1つを丁寧に処理していく。



《ひとまず神栖君を信じてあげて。いつものあずちゃんでいれば大丈夫だから》



 間も無く高月の元へメッセージが届いた。高月も飲み込みは早い方だ。


(御琴君を信じれば良いんだよね)


 高月はうん、と頷く仕草を見せると、神栖の方へ目を向けた。



 彼はスマホを見つめている。



 そして次は神栖。



《とりあえず外に連れ出して。女の子は自分をリードしてくれる男性にキュンとするものなの》



 神栖の元にメッセージが届いた。



(流石先生だ。恋愛のイロハをわかってる)


 神栖は今更ながら、那須へ感心の念を抱く。逆に今までソレを何も感じていなかったのかとツッコミたくもなるが、ひとまずそこは置いておこう。



「あずきさん、外に出ませんか」



 神栖は白馬に跨った王子様の如く涼しげな笑みを向けて、高月の方へ手を差し伸べる。


 ちょっぴりイケボを意識しながら。



 決まった!



 今のカッコいい!!



 彼は勝利を確信した――――



 気を緩めれば思わずニヤけてしまいそうだ。



 ニア 僕の勝ちだ。



 そう宣言してしまいたい程に、彼の胸は高鳴っていた。



 しかし、そんな神栖の心は儚くも砕け散ることとなる。



「あの、…パフェ残ってる」



「―――――!?」


(そうだった!!!)



 気持ちの焦りからか、手元のパフェの事なんてすっかり忘れていた。しかもまだ手を付けていない状態。



 神栖はカーーッと顔が赤くなる感覚を覚えた。彼女へ差し出した手が硬直する。



 せっかくカッコつけたのに………



 きっと彼が幼稚園児くらいの年齢だったら泣き出してる。



「あ、あー!ちょっと失礼、スマホに連絡が……」



 連絡先を交換した相手なぞ、高月と那須を除けば諏訪、峯、本宮とそのついでにティーパーティの久留米ぐらいしか居やしないのに。


 彼は見え透いた嘘をついた。


 だが幸いだったのは、彼の交友関係があまりにも狭い事を高月は知らない。


 いや、知りたくもないだろうが。


 神栖は急いで那須に助け舟を求める。





《まだパフェ食べてなかったんですけど、どうすればいいですか》





 間も無く彼の元に助け舟が届く。





《早く食べろ》





「あ、あー!そうだパフェ、すっかり忘れてましたー。あずきさんとのデートが楽しみでつい…。残したらまた先生に怒られちゃうなー……なんて…」



 さて…どうだ……?



 不安げな表情を浮かべる高月だったが……



「もう、忘れん坊さんなんだから」



 困ったような笑みを見せた。



「あは、あははー。ついうっかりしてましたー…」



 セーフ!!!!!


 これはセーフと言って良いだろう。



 危ない所だったが何とかその場は凌いだ。



「せっかくですし、またあーん、しませんか…?」



 神栖が提案する。



「うん、良いよ。今度は御琴君からね」



 応じてくれた!



 彼はもう、嬉しさやら恥ずかしさでちょっぴり泣きそうになったが何とか堪える。


 彼女の控えめな笑みがもう天使のように思えてくる…そんな想いを抱いていた。



 2人は和やかなムードに包まれながら、パフェを食べ進める。



とそんなところで、


パシャリと、カメラの乾いたシャッター音が鳴り響いた。


「え……今撮りました?」


「撮った」



……………まあいいか。



――――――――――――――――



そしてその後、今に至る訳だが。



《外に出ました。どうすればいいですか》



(何してるんだよ先生〜〜〜!)



 神栖はしきりにスマホを確認する。



 何してるんだはコッチの台詞だ。これでは那須が危惧していたラジコン化そのものじゃないか。



 そう言いたくなる気持ちを今はグッと堪えよう。



 だが重ね重ねにはなるが、那須はお優しい人だ。そんな神栖の事を見離さずに助け舟を用意してくれる。



《すぐ近くにあるカップ麺博物館。軽めのランチも出来るから姫をそこへお連れしなさい》



「すぐ近くのカップ麺博物館、そこへ行きましょう」



 もう完全に那須の受け売りだ。これじゃ那須のラジコンじゃないか。だが彼はもう藁にもすがる思いだ。


 ラジコンだろうが何だろうと、女性をエスコートする事自体、彼にとっては初めての経験なのだ。どれだけ那須に助けを求めていても、自分の彼女をエスコートしようというその気概だけでも、どうか評価してやってほしい。


 よく言うだろう?聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だと。

 教えるは一時の優越感、教えないは一生の優越感とも言うらしいが。とにかく、人に聞く事そのものは決して悪い事ではない筈だ。


 そしてそんな神栖もやれば出来る子だ。なんだかんだで那須の言葉を信じ、行動に移せる所は彼の素直で良い所だと言える。


 神栖は高月の手を取り、2人はカップ麺博物館へ向かう。


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