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異能が現実のものとなったこの街の片隅で。  作者: 松葉天佑


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楽しんだもん勝ち

 それから時は流れ、数日後のこと。本宮と峯、そして神栖はとある病院に足を運んでいた。


「結局、音原田の犯行動機は過度なアンチ行為によるもの、なんてことで片付いちまった訳だけど。アンタはこれで良かったのか?」


 今回の一件の結末に対し、不服なご様子である本宮の視線の先には、


「アイドルをやっている以上、アンチはつきものですからね。こればっかりは仕方がないです」


 困ったような笑みを浮かべる、モノホンの燕碧の姿が。いや困ったどころではない。困り果てているのはその通りなのだが。


「俺の怪我も、思った程酷くはないらしくてね。まあ頭にもらったのはなかなかキツかったんだけど。どの部位もヒビが入った程度の怪我だったからリハビリ頑張ればじきに歩けるようになるって」


「それなんだけどよ。この一件について、燕さんには謝らなきゃならないと思ってな。本当にすまなかった、アンタを守りきれなくて」


「よしてくださいよ。これは俺の落ち度でもあるんです。まさか“家にまで押し掛けて来ることは無い”、なんてね。そう考えた俺が甘かったんです」


「だがよ。アンタを守ることが出来ていれば、会場での一連の騒動も未然に防げていたんだ」


「それは俺達皆の落ち度ってことにしましょう。本宮さんだけが気に病む必要なんてありません。未然に防げたというのは俺も同じです」


 燕は窓に映る青に目を向けながら続ける。


「今回の一件、犯人が俺に成り替わっていたのはしっかりとニュースでも報じられましたし、ここからは俺の踏ん張りどころです。

 この騒動を引き起こしたってことでまた誹謗中傷が届くかもしれない。でもそんなことは関係無いんです。今は治療に専念して、リハビリも頑張って。そしてまた歩けるようになったらアイドルとして復帰する。これが今の俺のやるべきことなんです。だから後ろなんて振り返ってられない、前だけ見ていないといけないんです。前だけ向いて、人生を楽しまないとです。

 それに、ここの病院食もなかなか美味しくてね。まあちょっと物足りなく感じることもあるけど。今は3食の病院食が、俺の人生の新しい楽しみになってるかな。あと今までの俺はアルコール依存気味だったから、今のうちにしっかり断っておかないと」


「確かにな。ギルドに来た時は一杯だけとは言えすげー呑みっぷりだったし、程々にな」


 本宮の隣で、峯はリンゴを器用に切り分けながらこんなことを口にする。


「でも碧君って強いんですね。私だったらきっとどこかで折れちゃってる気がするなー」


 彼女の言葉に燕は微笑みで返す。


「強くなんてないですよ。俺だって折れたことも腐ることも何度もあった。でも、これは練習生時代からの教訓って言うのかな。とにかく、人生は楽しむ。楽しんでさえいればどんなに辛く厳しい練習も続けられたし、希望を持てた。そしてその結果来日することが出来たし、今こうして何でも屋さんともお話できてる。“人生楽しんだもん勝ち”っていうのは本当に名言だなって思う」


「“楽しんだもん勝ち”か。なんか俺も燕さんの言葉を聞いて勇気を貰えた気がする。何でも屋も楽しまなきゃな」


「あー、今のバンちゃんに必要なのは現実を見ることですー。さ!りんご出来ましたよー!可愛いうさぎさんカットです」


「ったく現実だけ見てたってしょうがねーだろーが。1個もーらい」


「あー!碧君に食べてもらおうと思ってたのに!」


「じゃあ皆で食べましょうか。あまり食べ過ぎると看護師さんに怒られちゃうんで」


「何事も程々が1番ですね。僕も1個貰います」


「神栖君もどうぞー。じゃあさ、碧君が退院したらギルドでお祝いパーティしない?」


「良いなそれ!退院後の酒は旨いぞ〜〜?」


「おっこれはまた、退院後の楽しみが増えましたね。リハビリ頑張らないとです」


 程なくして、燕碧の今日の面会時間は終了した。また会える日を、退院する時を、そして燕碧という男が表舞台に返り咲く日を楽しみにして、本宮ら3人はバーギルドへ向かうのだった。

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