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異能が現実のものとなったこの街の片隅で。  作者: 松葉天佑


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予期せぬ知らせ

 翌日の土曜日。アイドル、燕碧が参加するイベント当日である。会場は多くの人々で賑わいを見せている一方で、本宮一番と峯桜は警備に当たっている。…………のだが。


「なあ峯ちゃん。お前さっきから食ってばっかりじゃねーか」


「良いんですよー。腹が減っては戦はできぬ、ということで腹ごしらえです。それにせっかくのイベントなんだから楽しまなきゃ損でしょー」


 ソフトドリンクに綿菓子、唐揚げ棒と焼きそば。目に付く限りの出店を巡ってまわり、峯桜の両手にはもう空きなど無い状態。そんな彼女に呆れ果てる本宮は、


「ったく、普段の健康志向はどこ行った」


 とまあ愚痴を溢している訳だが、そんな彼も唐揚げ棒には勝てなかった様子。だって旨いんだもの、しょうがないじゃないか。唐揚げ棒3本を器用に片手で持ちながら峯の一歩後ろを歩く本宮。なんだかんだでイベントを楽しむ2人だったが、彼らの元に思いがけぬ知らせが飛び込んできた。


「………ん?」


 バイブレーションがポケット越しに伝わってくるのを感じた本宮は、自身のスマホを取り出した。


 画面には“神栖御琴”という表示。

 神栖とは前日に打ち合わせをし、本宮らとは別行動をするということで話が纏まっていたのだが、本宮が電話を取ると、彼の口から告げられたその内容に衝撃を受けることとなる。





「燕さんが緊急搬送された…?」





――――――――――――――――



 時は遡り前日の17時20分。ホストクラブロストボーイにて、長門大河の口から到底信じられない言葉が発せられた。


「あなた方にお願いしたいのは、アイドル燕碧の粛清です」


「…………は?粛清?つまり殺すってことですか」


「いえ、殺す必要はありません。ただ、暫く足腰立たぬ程度に痛めつけてもらえれば結構です」


「痛めつけるって………はあ。で、アイドルってのはどういうことなんです」


「それも厳密に言えば“自称”です。本名は音原田雄大とか言いましたかね、他者に成り替わる異能を持っています。その異能で今はアイドル、燕碧の姿形に扮している訳です。元々彼はティーパーティのメンバーだったのですが、離反しましてね。去る者追わずという方針で我々は固めていますが、何やら最近では随分と良からぬ動きが目につくようになりまして」


「だからって僕に頼む必要あります?ましてや汚れ仕事なんて。ティーパーティ様ともなれば、痛めつけるにしても手段はいくらでもあるでしょ」


「音原田は面倒なことに、少々鼻が利くようでしてね。ティーパーティとしても彼の行方を追っているのですが、芳しい結果は得られず。そこで神栖君の力をお借りしたいのです。あなたの千里眼をね。探し出すのは燕碧、または彼に成り替わった音原田どちらでも構いません。前者なら身柄の確保、後者であれば先にお話した通り、奴の粛清を。そうですね、そこの久留米を連れて行ってもらって構いません。彼女と共に、彼らを探し出してほしい」


「私の拒否権は無しですかそうですか」


「もとより音原田が燕碧に成り替わっていると突き止めたのは久留米、あなたでしょう。そして燕碧が明日開催されるイベントに参加予定であることも含めて。音原田はこのタイミングにあわせて必ず動きます。ですので何としても奴を阻止してほしいのです」



 これがティーパーティ長門大河からの依頼。

 その後、神栖はバーギルドに足を運び本宮らに、ことの顛末を報告。神栖は燕碧及びその偽者、音原田の行方を追うこととなったのだが……



――――――――――――――――



「おい!それってどういうことだよ!?ちゃんと説明しろ!!」


『今朝、僕達が燕さんの自宅に行ったら、血塗れで意識不明の状態で倒れてたんです。とにかく、本宮さん達は今イベント会場に居るんですよね!?そっちに燕碧が現れたら100%ソイツが黒です!!偽者です!!今僕も向かってるところなんで、なんとか奴を足止めしてください!!』


「わかった!とりあえずこっちの場所はわかってるんだな!?お前も早く来てくれ!!」


 突然のバッドニュースに、本宮の頭はパンクしそうだった。しかしクソッタレにも拭いきれぬ、たったひとつの揺るがぬ真実。


 それは、燕碧が襲撃されたということ。


「ちくしょう……クソ……!」


 そしてその時、キイイイインという、マイクの甲高い音が会場全体に響き渡る。


『あー、あー。マイクテストマイクテスト』


 マイク越しに喋り掛けるその声の主とは――――――


「皆様、本日はご来場いただき誠にありがとうございます。私は司会進行を務めさせていただきます、燕碧と申します。どうぞよろしく」

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