那須桃葉の依頼
「自立更生?」
「そ。自立更生」
本宮の疑問に那須は復唱して答える。
「それっていうとつまりあれか?不良生徒を学校に引きずり出すみたいな、」
「そ。概ねそんなところだね」
「おお!なんだか何でも屋っぽいなそれ!でも学校内の問題だろ?それを外部の人間が介入して大丈夫なものなのか?」
「まあ不良生徒と言っても学校に通ってないからね。言わば不登校の状態。その子が住んでるマンションの管理人さん曰く、お昼頃の時間帯から出かけてる様子だから、私たち先生よりもあなた達の方が適任かなって」
「ちょいまち。あなた達って、私も何でも屋に入ってるの」
「そりゃそうでしょ。フリーターがここで働かずして何するの」
割って入った峯の疑問をあっさりと切り捨てる那須。そう、この人は見かけによらず人使いが荒いのだ。
だがこんな調子でも学校では“ももちゃん先生”と呼ばれ慕われているのだから、単に傲慢というわけでもないのだろう。
「まあ大体わかったよ。で、那須ちゃんの言ってた2人ってのは両方不登校児ってことで合ってるか?」
「あー違う、1人は不登校で合ってるんだけど、もう1人は峯ちゃんメインでお願いしようかなって」
「え、私?」
「うん。というのもそのもう1人っていうのは“あずちゃん”の事でね」
「あー、そういうことか」
「――――?あずちゃんって那須ちゃん家にいるっていう居候ちゃんの事か?」
「そそ。今は私んちの家事全般やってもらうってことで頑張ってくれてるんだけど、ゆくゆくは外の世界も知ってもらわないとだから」
「それなら確かに頼まれたよ。あずちゃんとはマブだし、問題ナッシング!」
そう言って峯は那須にグッドポーズ。あずちゃんも訳あって那須の家に居候しているのだが、それはまた後の話。
「じゃあそのあずちゃん?は峯ちゃんが担当するとして、俺は不登校児か」
「そうなるね。その子の住所とか名前とか、諸々本宮さんのスマホに送っとくね」
「りょ」
間も無くして元宮が手に持つスマホに通知音。
「えーと?神栖御琴?なんて読むんだコレ」
「“かみすみこと”君ね。まあ言っても高校生だし、出かける先ってせいぜいゲーセンとかチェーン店くらいじゃないかなーと思う」
「オッケー!でもまずは神栖君を見つけ出すところからだな。」
「それなら適任の子が1人いるよね?」
「そうだな」
「――――て、私のことですかそうですか。」
「そ。あなたの探知は精度が高いし、一発で見つけられるんじゃないかな」
探知。そう、彼らの住む東京のとある街、異能学区では峯に限らずさまざまな人物が固有の異能と呼ばれる超能力を持っている。最も、峯の本来の異能は読心。つまり相手の心を読む能力だ。だが読心の効果範囲を拡大することで、擬似的な探知が出来るようになるのだ。
「ということで、頼んだぞー峯ちゃん」
「へいへーい」
峯は不機嫌そうだがまあ良い。問題なのは、
「てか俺のやること無くない?」
そう、神栖御琴を見つけ出すだけなら、恐らく峯の異能だけで完結してしまうことにある。
「んー、そだね。何でも屋さんも峯ちゃんの方が適任かも」
「おいおい、冗談キツいぜ」
「まあまあ、もしかしたら見つけても逃げられるかもしれないし、その時は本宮さんの異能で足止めしてよ」
「はあ〜〜〜、雑だなあ全く」
「人の事言えたもんじゃないですよバンちゃん」
「とにかく、これで話はまとまったし後はよろしく頼んだよー!私はこれから帰ってあずちゃんの手料理を食べないといけないから!」
「全く良いご身分だな」
「羨ましいでしょ。帰ったらご飯を作って待ってる人がいる。こんな幸せなことは無いよ」
「あー!今度私も呼んでくださいよパイセーン」
「勿論!あずちゃん、峯ちゃんと今期のアニメの話したいって楽しそうにしてたからねー」
那須は駆け足でバー入り口の方へと向かうと、
「では!健闘を祈る!」
手の甲をおでこにくっつけた不恰好な敬礼をして。きっとこれが彼女らの中での流行りなのだろう。
峯もがそんなおバカな敬礼をして見せたのを確認すると、彼女は颯爽と帰っていった。
「あ、そういえば」
「なんですか」
「moneyについて聞くの忘れてた」
「ネイティブに言ってもいやらしさは消えてないですよ。そこら辺は多分大丈夫です。パイセンお金にルーズじゃないですし、パイセン自身もしっかりお金は出すつもりで依頼してきたんでしょうから」
「峯ちゃんがそう言うならいいか。とりあえずは明日だな〜。今日はもう開店時間だし」
「ですね。あそうそう、せっかく依頼貰ったんだし今日のバイト、時給アップしてくれません?」
「えー…まあいいやわかったよ50円だけな」
「よっしゃ」
そんなこんなで今日もバーギルドは開店、本宮と峯は各々仕事に励むのだった。




