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異能が現実のものとなったこの街の片隅で。  作者: 松葉天佑


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2人分のお弁当

 さて、時刻にして12時50分、ちょうど4時間目の授業が終わった頃合い。


「それじゃ神栖君。午後からは那須先生が自習に来てくれるから頑張ってね」


 と、初老の女性が彼に声を掛けて席を立ち上がる。


「はい。ありがとうございました」


「良いってことよ。応援してるね。あ、那須先生!神栖君、ちゃんと勉強頑張ってましたよ」


 女性が目を向けた先には教室の引き戸の前に立つ神栖の担任、那須桃葉。彼女もまた授業を終えて一目散に神栖の元へやって来たという訳だ。


「どうもありがとうございました高浜先生」


 深くお辞儀をしながら“高浜先生”を見送ると、那須はいそいそと神栖の対面の席に腰を掛ける。


「ねえ高浜先生、良い人だったでしょ」


「そうっスね。国語を受け持ってるんでしたっけ。色々教えてくれましたよ」


「そうそう、私と同じ国語。と言っても彼女は3年生の担当だけどね。私がお休みする時は高浜先生が代わりに来てくれたりもするから、もしかしたら通常登校になった後もまた会う機会あるかもね?」


「へー。というか今日来てくれた先生方、皆僕のこと知ってる風だったんスけど」


「そりゃそうだよ。神栖君てば良くも悪くも有名人だからね。先生方は皆ご存知のはずだよ」


 そう。神栖御琴は彼自身が持つ異能の特異性からという理由も勿論あるが、やはり1番は虐めっ子と揉めた件。そこにある。もとより相手が数々の問題行為で煙たがられていた分、神栖を英雄視する声も生徒の中からは上がっているほどである。最も彼自身は例の一件以降学校を休みがちとなっていたので、そんなことになっているとは知る由もないのだが。


「さてと、一般生徒は午前で下校だけど、神栖君は今まで散々やすんでくれたからね。午後もこの調子で頑張るよ」


「わかってますって」


「だけど腹が減っては戦はできぬ!ということで腹ごしらえだ!神栖君ご飯持ってきてる?」


「ああ、一応持ってきてるっスよ」


 そう言って神栖が机の脇に掛けたリュックから取り出したのはサンドイッチ2パック。それを目にした那須は目をキラキラと輝かせる。


「あー!ランチパック!神栖君も食べてるんだ。先生も学生時代お世話になったよー。てか2つだけで足りるの?」


「足りますよ。というか先生の学生時代にもランチパックってあったんスか。」


「にも、ってなんか失礼だなあ。私が学生やってたのってまだ数年前だよ?」


 フグのように頬を膨らませて不機嫌な表情を浮かべる彼女。まあこれもまた那須の愛嬌と言えるのではないだろうか。


「でも今日はそれ食べなくて大丈夫だよ。それは小腹が空いた時のおやつにしなさい。」


 彼女がおもむろにバッグから取り出したのは2段構造のお弁当箱。それも2つ。言ってしまえば小学生が使うようなキャラもののそれだが、ぱっと見だけでも随分とギッシリ具材が入っているのがわかる。


「あずちゃんが作ってくれたんだー!神栖君の分もあるから一緒に食べよ」


「え、あずきさんが…?いいんスか僕もいただいちゃって」


「いいんスよー。あずちゃんも張り切ってたから。頼れるところはしっかり頼って良いんだよ」


「……じゃあお言葉に甘えるっス」


「よいよい。それじゃ食べよっか!おててのしわを合わせて」


 いただきます。

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