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異能が現実のものとなったこの街の片隅で。  作者: 松葉天佑


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那須のお願い

「――――は?先生んちに?」


「そう、先生んちに」


「唐突じゃないスか?」


「唐突じゃないよ」


 神栖の疑問に対して、彼の言葉をただ復唱する那須。


「あの―――もしかして、からかってます?」


 不満げな表情を浮かべる神栖を目にして、なんだか面白くなっちゃった那須は、両手を合わせてごめんなさいのポーズをとりながら、


「ごめんごめん、でも真剣な話でさ。これも聞いてくれない?」


「なんなんスか全く。てか先生の家に生徒が出入りして問題無いんスか?」


「大アリだよ?だから個人的なお願いなの」


 さも当然の如く返答する那須に明らかな呆れ顔を浮かべる神栖。


「はあ………それで、なんで先生んちに行かなきゃいけないんスか?」


「それなんだけど、ちょっとこのままじゃ遅くなっちゃうからさ。先に駅の改札前まで行って待っててくれない?

17時………そうだなあ、20分までには先生も向かうからさ」


 現在時刻は16時45分。

 学校から駅までおおよそ歩いて5〜10分程の距離と考えると、今から向かっておおよそ17時前あたりか。待って20分もかからない程度。


 神栖の頭の上には絶えずクエスチョンマークが浮かんでいる様子だが、那須はそんな彼の事もお構い無しに、


「教室も閉めちゃうからさ、ほら立って。椅子はちゃんと元に戻す!窓の鍵もかかってるか確認して!」


 那須に言われるがまま動く神栖。

一通り戸締りを確認した後二人は教室の外へ出る。


「じゃ、先生もすぐ向かうから、先に駅で待っててね!」


 そう言うと那須は神栖を置いて、職員室の方へ駆けていった。

 なんだかなあ、と内心神栖は思いながらも、ひとまず那須に言われた通り駅に向かう。


――――――――――――――――




 その後、学校の最寄り駅にて。


 17時15分――――この時間にもなると陽は暮れ始めて、日中のじんわりと汗ばむ暑さも和らぎ、比較的過ごしやすい気温となっていた。


 10分ほど前に駅に到着していた神栖だったが、駆け足でこちらへ寄ってくる那須を見つけると、軽く手を振って合図を送った。


「早かったっスね」


「時間に間に合ったでしょ?」


「確かに」


「これちょっとした裏技なんだけど、時間を相手に指定する時、

あらかじめ遅めに見積もっておけば、相手もすんなり受け入れてくれるものなんだよ。知ってて損しない話だよ」


 前持って遅れることを伝えておけば、相手もそれを理解した上で余った時間を有効活用できる、という訳である。

 鼻高々に語る那須と共に神栖は改札を通り、間もなく到着した電車に乗り込むのだった。


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