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アリビオは、紫央をベッドに下ろすとコップに水を注いでくれた。
「ありがとうございます」
「今夜から、俺の部屋の真向かいに移ってきませんか?」
「え...?」
急に何??
「俺の部屋の真向かいはゲストルームになってるんです。部屋に冷蔵庫もお手洗いもあります。俺らの部屋にないキッチンもありますよ」
紫央の目が輝く。
「冷蔵庫??そっちに移ります!」
キッチンはどうでもいいけど、りんごを冷蔵庫に入れたい。
アリビオが笑顔になった。
「ゲストルームは、10部屋ありますが、俺の部屋の真向かいが一番設備が充実していると思います」
「移りたいです!」
「少し落ち着いたら、移動しましょう。迎えにきます。これで今回みたいなことは起こらないですよ。部屋が向かいなら直接確認できますからね」
紫央は、手荷物をまとめてアビリオの部屋の真向かいに移った。
ゲストルームは、広くて綺麗に整えられている。
寝室とリビングルームが別になっているし、窓も大きい。
さっきまでいた部屋が使用人部屋に見える....
イメージとしては、ホテルのスイートルームのような雰囲気だと紫央は思った。_と言っても映像で見ただけで実際に泊まったことはないので、紫央の想像だが...
応接間とか無駄に広い....ここのソファ、足を伸ばして眠れそうだわ。
さきほど冷蔵庫って単語が出てきたことを思い出す。
どれかな。
ゲストルームにはキッチンも完備してあると聞いたので覗いてみる。
リビングルームの奥にキッチンがある。
ショールームみたい...
シンクなんて、ピカピカだし。コンロっぽいものもある。
え、新品なのかな?
使ってみたいけど料理苦手だし、そもそも食材りんごしかない。
ん〜せっかくだから、もう少し水を飲もうかな。
紫央はキッチンに設置してある棚からグラスを出す。
レバーを下げると冷たい水が出てくる。
あ....
「ここも、レバーが扉になっている」
冷たい浄水のある場所と繋いでいるようだった。
授かった加護のせいか、紫央にも扉を繋ぐ能力が備わっているので、触れるとどれが扉になっているかわかる。
紫央は、部屋から持ってきた齧りかけのりんごを冷蔵庫に入れることにした。
両開きの冷蔵庫はクローゼットのように大きい。
扉を開けると一気に冷気が流れてくる。
この冷蔵庫もどうやら空間を繋げて冷やしているようだった。
「この冷蔵庫に、りんごたった一個...」
アイスバケットを開けると、氷がたくさんできているのを見て、アイススコップで取り出し、水の入っているグラスに入れる。
冷たくて美味しい。
しっかり入浴した後は、この冷たい水が五臓六腑にしみわたって最高…
紫央は、ベッドに入った。
ゲスト用はベッドのサイズも大きい。
ブランケットを被って、ベッドサイドのランプのスイッチを切ったら、連動して部屋の全ての明かりが消えた。
ここはゲストルームだと言っていたけど、この部屋にゲストだけで泊まっても、水も冷蔵庫もトイレも使えないはず....扉を繋げるのは神力を持つ者だけだったよね。
使者が一緒に泊まってお世話するのかな?だからアリビオさんの部屋の前がゲストルームなのかな...
紫央は5分ほどいろいろ考えながら天井を見ていたが、気付かない間に眠っていた。




