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お世話になったラクスとユラの二人と別れたあと、狐族の領主に会いに行くことになった。


西の森を出て一本道を進んでいくと、だんだんと活気のある街並みに変わっていく。


道沿いには店が並ぶ。


「ここらへんは賑わっているんだ、あ、かわいい」


ガラス窓越しに店内の様子が見える。縫いぐるみなどの雑貨やお皿などが陳列してある。


「中に入るか?お嬢さん」

先を歩いていたリストが振り返って聞いてきた。


「あ、いいえ。大丈夫です」


耳がいいのね。


アリビオとリストは紫央より2メートルほど先を歩いている。


それよりも紫央は足が痛くなってきていた。


もう2時間位歩いている気がする...


「紫央、やはり背負いましょうか?」

今度はアリビオが振り返る。隣にいるリストが、目を丸める。


「いいえ、大丈夫です」


このやりとりもこれで5回くらいしてる...


アリビオが気遣って何度か声を掛けてくれているが、ここは西の森と違って通りに獣人がいる。


狐族の集落というだけあって、他の種族は極稀にしか見かけない。


アリビオの申し出はかなりありがたいけど、衆人環視(しゅうじんかんし)に晒されながらおんぶって恥ずかしいでしょ。


しかも、ここに来て思ったけど使者って美形レベルが神の領域だもんだから、通りすがりに二人に視線をやる狐族女子の多いこと!


特にアリビオに視線が集まる集まる。


そんな中おんぶなんて絶対にイヤ!


アリビオが声を掛けてくれることで、逆にしっかり歩かなければと紫央を鼓舞することになっている。


二人がまた前を向いて歩き出したので、紫央も遅れてそれに続く。



「おまえ、珍しいな。そんな構ってんの?」

リストがアリビオを見て含み笑いをする。


「普通だと思いますが...」


「普通って....寄ってくるのを追い払うところは、見たことはなかったが、お前が自分から構うって図式は、俺は初めて見たけど」


「今回のクランだって、前回のことがあるんだし始末したほうが楽だろ、なに生殖機能の剥奪って。後々面倒だろ」


「.......」


「まあ、クランは可愛いからな、俺もそのうちなんとかしようと思っていたから、今回は渡りに船ってやつだったけどな。今後のことがあるから、こっちに残ってちょっと調べるつもりだ。ルバ神は俺のこの向上心を愛でられるからな」



「ルバ神も、こちらの世界に干渉なさる数少ない神の一人ですよね」


「じゃなきゃ、俺を使者になんてしないだろうからな」


「あとは、人の可愛いのを(さら)って妾にしているあの神さまくらいか...わざわざ箱庭に囲って、依代に入って愛でられるらしいからな」


「ああ...いらっしゃいましたね」


紫央の足がとうとう限界を迎えた。

見事に膝から崩れ落ちる。


うわあ...限界を迎えるとこうなるんだ。


アリビオが振り返って、紫央の傍に駆け寄る。

「紫央、観念してください」


とうとう、おんぶかぁ...


紫央が、下唇を噛んで(うつむ)く。

それを了承の合図だと受け取ったアリビオが紫央を縦抱きにした。

「背負うのが嫌なのでしょう?」


周りの目が一斉に集中した。


視界が高すぎて怖いし、余計に目立つ!

「おんぶで!おんぶでお願いします」


「了解です」



おんぶされて歩くこと数十分__紫央が聞いていたらすぐに下ろせというような、とんでもないことをアリビオが言い出す。


「おんぶは密着面の感触が伝わりますね、紫央の言うとおり女性は嫌かもしれませんね」


「お前、それを背負ったまま言う?下心は紳士的に隠せ。しかし、お前が女性と密着するのイグニス以来か」


何の反応もない紫央を不審に思い、リストが反対側に回って紫央の様子を見る。


紫央はアリビオの肩に頭を預けたまま、疲れて眠っていた。


「おい、寝てるぞ。お前よく落とさないな...」


「そうだと思いました。先程より体重が掛かってますから。バランスを取りながら背負ってます。初めて力を使ったので疲れたんでしょう」

「リストに預けた俺のリュックに、ロホの実が入ってるんで、それを(かじ)って紫央の唇に押し付けてください。果汁を含めば、疲れが取れるでしょうから」


リストが呆れた顔でアリビオを見る。

「俺は、元は人だからそれはちょっと遠慮しとくわ。お嬢ちゃんが可哀想だしな」


「寝てるので、本人は咀嚼できないでしょうから」


「じゃあ、指で潰して...唇に押し付けるか...それもやっぱナシの方向で、あの丘越えたら領主の屋敷だ。俺とお前なら10分もあれば着く、スピード上げるから屋敷に着いてから、ロホの実でも何でもお前が勝手に与えてくれ」


二人は駆け出した。




















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