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扉を創造することを存在意義にしているデリット神は、その昔気まぐれに人が住む異世界同士を繋ぐ扉を創った。
扉を管理する空間は、『デリット神の箱庭』と呼ばれ今はデリット神が創った使者によって管理されている。
数多あった扉は、利用する者が増え、混沌としたのをきっかけに、秩序を偏愛するデリット神は扉の整理をした。
現在は15しかない。もともと人の世界にさほど興味があったわけではないので、気まぐれに創った時も整理したあとも管理の全ては使者に任せっきりだった。
箱庭には使者の住まう神殿や、箱庭を維持するための森や、山などの自然が神殿をぐるりと囲んでいる。
使者は現在3名で、アリビオ、コラード、フレンで運営していた。3名ともデリット神の癖が詰め込まれているので無駄に美しい。
彼らは、神に模倣してあるので睡眠も食欲も性欲も保有している。
千代鶴紫央は3日前に扉のトラブルとやらで、このデリット神の箱庭にやってきた。
紫央の世界とここは、白い扉で繋がっているが、白い扉は、今までほとんど使われずにいたとアリビオから聞いた。
過去に白い扉の行き来がほとんどなかったのは、紫央が見つけたとき、かなり土で汚れていたので、地震や洪水で扉が埋まったままになっていたせいじゃないだろうか、と紫央は勝手に想像していた。
翌日、扉の創造神デリットに拝謁したが、紫央はデリット神の顔を見て腰を抜かすほど驚いた。
「私の口に果実を突っ込んだ男性が、扉の神だったんだよね」
家族の元に、帰りたいって言ったら、特例であちらの世界に私の分身を送られてしまった。
私自身が帰るには、扉のシステムエラーの原因を突き止めなきゃいけなくて、それまではあちらの世界では、私の分身が場繋ぎを務めるということらしいけど...
そんなことが、できるなら私を帰せそうなのにね。
ちなみにデリット神の加護を授かったことで、言語は扉の数だけ操ることができ、聞き取りの方も言葉が勝手に脳内変換されるらしい。
そして今日から、私も扉の管理の仕事をさせてもらえることになった。




