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暇時書短編集  作者: 案山子 劣四


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3/8

お寿司☆ハイパーFEVERたいむ!!!

ウルトラハッピー11年。


僕は、高校2年生の僕は、まだ覚め切っていない眼を擦りながら、いつもの様に1限目の授業を受けていた。


窓を眺めても、変わらない日常。そんな毎日に、僕は飽き飽きとしていた。




9時55分に、いつもの様に予鈴が鳴った。


外からけたたましい音のサイレンと共に、


「皆さん、まもなく『お寿司☆ハイパーFEVERたいむ!!!』です。一般車両で走行中の方は、路肩に停車し、緊急車両が通過可能な状態でバイブスを上げる準備をしてください。」


というアナウンスが流れる。


「もう『お寿司☆ハイパーFEVERたいむ!!!』かよォ〜。俺全然今日バイブス上がんねえわ。」


隣の席の吉田は、そう僕に話しかける。


「あーわかる。僕も。」と合わせるが、実はこの時間が嫌いじゃない。


「えーと、じゃあ今日のDJは、田中か。田中、前に来なさい。」


先生にそう呼ばれた田中は、「はい……。」と小さく返事をして、黒板の前の、DJブースに向かう。


「田中かよー。」「あんまり期待できねえな。」「私眠いんだけど。」


皆、口々に言うが、僕は知っている。


前回の日直で皆のバイブスを上げきれなかった田中は、陰で練習をしていたのを。先程の小さな返事とは裏腹に、彼の瞳には自信が伺える。


10時になり、音楽が流れる。それと同時に、田中くんは流れるようなプレイを見せた。


「おい、あれ本当に田中かよ!」「うそ、すごい!」「これこそFEVER TIMEじゃねえか!!」


「皆ぁぁぁぁああ!!ぶちかますぞおぉ!!!」



「「「フォウウウウウ!!!!」」」




『お寿司☆ハイパーFEVERたいむ!!!』が導入された経緯は、令和8年まで遡る。


ある日、その速報が日本を流れた。


「緊急速報です。昨今の景気の悪化、物価の高騰を受け、政府は元号を『令和』から『ウルトラハッピー』に変更し、それと同時に『お寿司☆ハイパーFEVERたいむ!!!』を導入する法案が、つい先程可決されました。」




『お寿司☆ハイパーFEVERたいむ!!!』導入に関する法案について。

(以降、『お寿司☆ハイパーFEVERたいむ』を(甲)とする。)


・本法案は、国民のバイブス向上を目的とした法案である。


・ミラーボールとDJブースが時間になると公共施設、会社内、自宅等の閉鎖空間、及び自動車、電車等の乗り物、道路に出現する。各自は流れるミュージックにソウルに従い、バイブスの向上を行う。なお、バイブスの向上は数値化せず、あくまで自己判断とする。


・最低30分間音楽が流れるが、バイブスの向上を実感できない場合、追加で最大2時間まで延長可能である。


・なお、2時間延長後もバイブスの増加を実感できない場合、各医療機関内に併設される、『スーパー♡DJ』(以降、DJ KOOとする。)によるバイブスの診断、及び『みらくるっ!!ハッピークラブ』による治療を行う。尚、自己負担額は3割負担とする。


・10時と20時に実施される。その内、どちらかに参加する事を国民の義務とする。尚、どちらにも参加しなかった場合、優しく注意される(厳重注意はバイブスの低下に繋がる為)。長きに渡り、参加しなかった場合、すごく心配される。(恐らくソウルが疲れている為。)


・喪中でも原則参加ではあるが、どうしても辛い時は参加しなくても良い。(強要はバイブス低下に繋がる為)。


・バイブスの向上が身体に著しく負荷がかかる場合、ソウルのユニゾンを感じる事で特別免除とする。




この法案は当初、『お寿司☆ハイパーFEVERたいむ!!!』反対派が多数だった。


反対派の意見としては、「そんな事より景気を何とかする方が先。」「国が公的に出していい法案じゃない。」「そもそもお寿司が関係ない。」


などの到底バイブスを理解出来ていないものばかりだったが、それでも反対派と賛成派の争いは熾烈を極め、国会内での激しいラップバトルやダンスバトルの末、バイブスの差で賛成派多数となり、反対派はロックの真髄を見た。




導入当初は色々問題があったらしいけど、今やどこでも当たり前に行われている。


葬儀中、スポーツの試合中、役員会議中でも、行われていて、10時と20時は、街が音楽に乗って揺れる。それが僕はたまらなく好きだ。





それにしても、今日の田中のプレイは尋常じゃない。


彼の一挙一投足に、僕たちを煽る声に、僕達は魅せられ、踊っている。次第にそれは、大きな渦となり、ひとつの塊となり、教室は狂乱に包まれた。


これは、伝説になる、間違いなく、皆がそう思っていた。



しかし、そこで無常にも、30分を知らせる鐘が鳴り、音楽が止まる。


「…………。」


僕も、田中も、教室のみんなも、先生でさえ、分かっていた。これじゃ終われないって。


「じゃあ、30分経ったから、田中DJブースを」「先生!!」


明らかにまだ熱が残っているのに、片付けようとした先生に、誰かがそう、静止をかけた。


吉田だ。あれだけ、バイブスが上がらないと言っていた吉田が、先生を止めた。


「先生!俺、もっと田中のプレイに魅せられてえよ!!」熱く、声を張り上げる。


「俺も!」「私も!」「僕だって!!」「まだバイブス上げられるよ!」皆、口々に延長を希望する。


「……そんなこと言われたって、もうみんなのバイブスは上がってるように見えるし、田中だって困るだろ?」


先生は、大人であろうとしている。だから、そうやって田中に訊ねた。


「僕、ずっと思ってたんだ!!!」


DJでは無い田中の、初めて聞く大きな声。


僕たちは、先程まで僕等を操っていたDJに、1人の、思春期の青年を見る。


「僕、ずっと思ってた。なんで、みんな……」


田中はそこで止める。皆田中の次の言葉を待つ。


「なんで本当はもっとアガれるのに、そんな中途半端な所で満足してるのかって!!」


教室は、再び熱気に包まれる。こうなっては先生も止まらない。この空間で、大人になれる人なんて1人もいない。


「2時間ギリギリ、ついてこいよお前らああぁああぁあ!!!!」


「「「「フォウうううううううううう!!!!!!」」」」


もう僕らは止まらない。僕らの伝説は、青春は、今なんだ。今、この瞬間を駆け巡る熱となり、渦となり、一つになる。


国がなんだ、法案がなんだ。僕達は、これだけ伝説になれるんだ。それが全てだ。


それでいいじゃないか。僕達の伝説は、今始まるんだ。







仕事しながら「お寿司☆スーパーFEVERたいむ……?」ってなってこの話を思い付きました。

最初はスーパーの予定だったのですが、ハイパーのがいいなってなってハイパーになりました。ハッピーとも迷いましたが、ウルトラハッピーと被るのでハイパーになりました。

ちなみに、クラブは行ったことないです。エアプの方が面白いなって思って何も調べずに書きました。なので、多分ノリとして間違ってると思います。フェスとかのノリですねコレ。

「今の健康保険の自己負担額っていくらだっけ?」というのだけ調べました。

楽しい話を書くの苦手なので、書けて良かったです。

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