06
先生達の会議があるみたいで、今日は久々に放課後の部活動がお休み。
2週間ぶりの無田君との下校。
中休みのこともあって、どう話を切り出したらいいか分からなかったけど、勇気を振り絞って声をかける。
「リレーの選手、おめでとう!」
「うん、ありがとう。」
心の声は……やっぱり聞こえないから、どんな気持ちなのかは分からない。
表情もいつもと同じだし……
沈黙のまま、私達の足音だけが響く。もうすぐ無田君の家に着いちゃう。
「ねえ、みんなの心の声、聞こえてたでしょ?どうだった?」
不意に立ち止まり、自分に向けられた言葉に驚き、肩がびくりと震える。
私を見つめる彼の表情は、やっぱりいつもと変わらなくて……何て答えるのが正しいのか分からない。
嘘をつくべき?……でも、きっと見透かされる。
だって……無田君も気づいてるはずだから。
「旭君がかわいそうだって……無田君が譲った方がいいって言ってた。」
「そっか。」
そしてまた歩き出す。
いつもと同じペースで、桜並木の下を。
傷つけたかな……でも、心の声は聞こえない。
だから、分からない……
けれど、このままじゃダメだと私は思った。
私は小走りで彼を追いこし、前に立った。
「私は……無田君のこと、応援してる。みんながどう思おうと関係ない!
だって……無田君だって頑張ってたもん!」
バチリと目が合った。
そこで私は、自分の発した言葉に赤面する。
なんだか告白してるみたいで……
告白したことなんてないんだけど。
「東堂さんって……教室と下校中だと、全然違うよね。」
想定外の言葉に加え、図星を突かれたせいで更に顔が火照る。
恥ずかしい……
無田君はまた歩き出す。そして、私の横を通り過ぎた。
振り向けないよ……
ガチャリと門が開く音。私達が話していたのは、無田君の家の前。
「ありがとう、東堂さん。僕、頑張るよ。」
「えっ?」
私が振り向いたと同時に、門が閉まった。
彼の表情は見えない。
でも……今の言葉は、いつもの無機質な言葉とは違ったような気がしたんだ。
私はそのまま、彼の家の前で立ち尽くしていた。
陸上大会当日。
アンカーである彼の活躍もあり、リレーでは2位という好成績をおさめた。
あの日、柄にもなく大声で応援する私の姿を見て、みんなびっくりしてたっけ。
思い出すだけで顔から火が出そうなくらい恥ずかしいけど、応援せずにはいられなかったんだ。
心の声が聞こえる私は、いつの間にか、心がない彼に惹かれていたんだ。




