03
「今日の体育の授業、びっくりしたよ。無田君、足速いんだね!」
「そうかな?自分じゃあんまり分からないけど。」
相変わらず心の声は聞こえないから、謙遜とかそういうのじゃなくて、本当に分かってないんだなと若干あきれる私だった。
桜の花はすっかり散ってしまい、緑の葉が生い茂る4月下旬。
始業式の下校で家が近いことを知った私達は、一緒に下校することが多くなった。
相変わらず沈黙の時間が大半を占めるけど、それでも前に比べたら話せるようになった……と私は思ってる。
「ねぇ、あんなに足が速いんだったら、陸上部に入ってみたらいいんじゃない?絶対選手になれるよ!」
私達の通う小学校には、部活動がある。
陸上部は5月中旬に大きな大会があり、市内の学校同士が競い合うのだ。
クラスのみんなを驚かせたあの足があれば、陸上部でも大活躍間違いなし!!と思ったんだけど……
「うーん……どうだろう。別に走るのが好きなわけじゃないし。」
相変わらずの意思なし無田君……
と思っていたら、珍しく私に質問が飛んでくる。
「東堂さんは陸上部、入らないの?
東堂さんも足、速いよね。文化系のイメージだったから、走れるんだって驚いた。」
最後の一言は余計だろ!と心の中でツッコミをいれる。
「いや、私は……運動は好きなんだけど、ピアノに影響するからダメだってお父さんとお母さんが……」
ピアノは小さい頃からやっていて、今では県のコンクールでも上位になるくらいの実力になった。
そんな私を心配してか、両親はピアノに悪影響が出そうなものは、やらせたくないみたい。
気持ちは分かるけど、ちょっと窮屈に思うこともある。口にはしないけどね。
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、しょうがないね。」
自分から聞いたくせに、そのなんとも言えないリアクション……もう慣れたけどさ。
「それで無田君こそどうなの?陸上部、絶対向いてるって。」
「……考えてみるよ。」




