28
「卒業証書授与。6年1組、朝田美月!」
「はい!!私は……」
3月17日、卒業式。
私達は6年間通った学舎に別れを告げ、新たな場所へ飛び立つ。輝かしい未来を信じて。
「東堂凛花!」
「はい!!中学校でも……」
最後まで自分の言葉を言い切った私は、くるっと方向転換し、式台へ。もう何も考えなくても体が覚えてる。
あとは……頑張って!!
「無田月斗!」
「はい!特別じゃなくても、自分らしく進んでいきます!」
彼の言葉の意味をちゃんと理解できた人は、きっとほとんどいない。
でも、それでいいんだ。
わかる人に伝われば、それで……
卒業証書を受け取りながら、心の中で拍手を送った。
よく頑張ったね、月斗君。
「はい、撮るよー。こっち向いてー!はい、ポーズ!!」
いろんな方向からカメラを向けられ、なんだかモデルになった気分。
卒業式も無事終わり、恒例の写真撮影タイム。あまり仲が良くなくても、関わりが少なくても、この時だけは全部忘れて、笑顔でいられる。そんな幸せな時間。
あの朝田さんとすら、写真を撮ったんだから。この時ばかりは、心の声も明るいものしか聞こえてこなかった。
担任の先生とも撮り終え、はじの方で一息ついていると将斗君が声をかけてきた。
「なぁ凛花、月斗のやつ知らない?」
「ううん、見てないけど……」
「まじか……あいつ帰りやがったな。」
周りを見渡しても、彼の姿はない。
1年間、あんなに一緒に過ごしたのに、最後はあまりにもあっけなくて……
さみしい気持ちを押し殺して、笑顔を作った。でも、将斗君にはばればれで……
「凛花、今ならまだ追いつけるかもしれない。行ってこいよ。」
「いや、でもお父さんとお母さんも待ってるし……それに、月斗君とは中学校でも会えるから。」
永遠の別れじゃない。会おうと思えば、いつでも会えるし。
だから……だから………
「行ってきな。」
「……ありがとう、将斗君。」
私はいつの間にか走り出していた。走りながらお母さんに、『いつもと同じように帰りたい。一緒に帰れなくてごめん。』とメッセージを送る。整えられた制服がどんどん乱れていくけど、気にしない。
確かに中学生になればまた会える。帰り道だってきっと一緒だ。またきっと、この並木道を一緒に歩くことができる。
でも……でも!!
小学生として、この道を一緒に歩けるのは今日が最後だから。
だから……会いたい。お願い……神様!!
リーン。
風に吹かれ、鈴の音が響く。
花びらが舞い上がる中、その先にいたのは……
「はぁ、はぁ……月斗君……」
「東堂……さん?」
ちゃんと……会えた。
伝えたいこと、いっぱいあるんだ。
「一緒に帰ろ!!」
今度は2つの鈴の音が言葉を交わすように鳴った。
桜の花は、満開だ。




