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「ただいまー。」


「おかえり。凛花、今日は早かったわね。」


「今日は1人で帰ってきたから。」


私はそのまま2階の自分の部屋へ向かい、ベッドにダイブした。


「はあぁぁ。」


無田君が欠席なんて……先生は体調不良だって言ってたけど、絶対に違うと思う。

昨日私が彼の欲しい言葉をかけてあげられていれば……こんなことにはならなかったかもしれないのに。


でも、今考えても、あの時言うべき言葉は見つからなくて……



「……んか……凛花!起きなさい!!」


「ふぁ……」


いつの間にか寝てた!?

顔を上げると、お母さんが……困ってる?


「凛花にお客さんなんだけど……無田君のお母さん。」


「えっ!?」


私は急いで服を整えると、慌てて玄関へ向かう。


月斗君って、お母さん似なんだ。

背が高く、スーツをビシッと着こなした美人なお母さん。お父さんと違って……優しい雰囲気。


「こんにちは。あなたが凛花さん?」


「はい。東堂凛花です。いつも無……月斗君には、良くしてもらってます。」


『イメージ通りの子。月斗が気にいるわけね。』


えっ?どういうこと??

嫌味ではなく、むしろちょっと嬉しそうな、そんな気持ちが伝わってくる。


「月斗の母です。こちらこそ、いつも息子がお世話になっております。」


深々としたお辞儀につられて、私も頭を下げる。


その後、こんな場所ではあれだからと、お母さんがリビングに案内する。歩き方から座る所作まで、子供の私が見ても美しさを感じる。秘書さんとは聞いていたけど、なんだか女として憧れちゃう。


「今日は急に押しかけてしまってごめんなさい。実は月斗のことなんだけど……いなくなっちゃったの。」


「「えっ!?」」


想定外の言葉に、私だけでなくお母さんまで驚きの声をあげる。


「あっ、大丈夫なのよ。GPS付けてるから、どこにいるのかはすぐにわかるし。」


それならよかった。てっきり行方不明なのかと……

でも、GPSって……さすが議員さんのお家だ。


「ただね、今会ってもあの子、きっと何も言ってくれないと思うの。だから、凛花ちゃんなら何か知ってるかなと思って。

月斗、あなたにはすごく心を開いてたみたいだから。」


心を開いてる?月斗君が??

うーん、そこは疑問だけど……


家政婦さんが学校のことを聞き取ってメモに残しているらしく、どうやらそこにいつも私の名前が出てくるらしい。残念ながら内容までは教えてもらえなかったけど。



今日休んだことについても、お母さんは教えてくれた。


昨日の夜、学校から電話があったらしく、たまたま家に帰ってきていたお父さんがとってしまった。


内容は卒業式の言葉について。


「目標一つ言えないのか!!」と月斗君を叱りつけたらしく、その後月斗君は自分の部屋に閉じこもってしまった。

朝になっても出てこなかったので、体調不良ということで欠席。お母さんが話を聞こうと仕事を休んだけど話はできず、いつの間にか家を抜け出してしまったらしい。


なんでよりにもよってお父さんに伝えちゃうのかなぁ。先生達、そういうところがわかってないよ。



「どうかな、凛花ちゃん。昔からお父さんは厳しかったけど、月斗がこんな風になったのは初めてなの。心当たり、ない?」


心当たりは……ある。でも、これは家庭の問題で、私が首を突っ込むことではないと思う。思う……けど……


「多分……月斗君、お父さん、お母さんにもっと見てほしいんじゃないかと思います……」


「えっ?でも、そんなことあの子は一言も……」


驚くお母さんの目をじっと見つめる。

そう、きっと月斗君は自分からは言えない。そして、ほとぼりが冷めたら今回のことも飲みこんで、ますます心を閉ざしてしまう。


そんなの、誰も救われないから。


「月斗君、運動会の表現、今までちゃんと練習してこなかったんです。見せたい人が……お父さんとお母さんが来ないから、意味ないって。」


自分の目が潤むのがわかる。

だって、いつもかわいそうで……辛そうで……


「最後の授業参観も、今回の卒業式も、『どうせ見に来ない。』って言うんです。でも、絶対に見にきて欲しいって、そう思ってる!」


大人の人相手なのに……

けれど、止められなかった。言葉も、涙も……



私をじっと見つめる瞳は、やっぱり月斗君そっくりで……そして、静かに、優しく微笑む。


「月斗のために、こんなに必死になってくれて、泣いてくれてありがとう。こんな子に出会えるなんて、あの子は幸せ者だわ。」


首を振り、「失礼な言い方をしてごめんなさい。」と伝える。


「ううん、謝らなきゃいけないのは私達よ。私達がもっとあの子のことを見てあげていれば、こんなことにはならなかったはず。ごめんなさいね。」


そして、スマホを差し出す。あれ、ここって……


「あの子はきっと私じゃなくてあなたを求めてる。お願いばかりで申し訳ないんだけど……行ってあげてくれる?」


「はいっ!!」


私は走り出す。お母さんは、「いってらっしゃい。あんまり遅くならないようにね。」と、笑顔で送り出してくれた。



月斗君……今行くよ!!





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