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「卒業式の『旅立ちの日に』の伴奏者は……東堂凛花さんにお願いします。」
大きな拍手が学年からわき起こる。
ちょっと恥ずかしいけど、やっぱり嬉しいな。心の声も、ほとんどの人達が肯定的だ。
当の朝田さんは、3学期に入ってから受験で登校していない。ピアノオーディションも、結局12月の時点で早々と辞退したのであった。
帰り道。
「まぁ、そうなるよね。おめでとう。」
「もっと素直に褒めてよぉ。これでも、緊張してたんだから。」
実力で言ったら、まあ私で間違いないんだけど、学校のピアノオーディションは、実力だけが見られるわけじゃない。
審査員の担任の先生達はピアノ初心者の人が多いし、生活態度に加え、今までの伴奏経験も加味される。多すぎてもだめだし、少なすぎてもだめ。
だから、結果が出るまでドキドキなんだ。
桜の葉はすっかり落ち、寂しく立ち尽くしているように見えるけど、枝の先には新たな芽吹き。開く頃には……
「もうすぐ卒業だね。」
「でも、その前に送る会、最後の授業参観もあるでしょ。」
まぁその通りなんだけどさ……この1年間、あっという間だったなって、なんだかね。
「「はぁ……」」
お互いのため息が重なる。でも、意味は違くて……
「卒業……したくないなぁ。」
もっとこの通学路を、月斗君と一緒に歩きたい。
「授業参観……」
……確かに、最後の授業参観は、彼にとってはなかなか苦しいものがあるかもしれない。両親への手紙、今まで育ててくれたことへの感謝の言葉……
「そもそも来ないんだから、準備する必要ないよね。」
うぅ、なんとも反応しづらいお言葉。
「複雑だと思うけど、言葉にするのは大事だし、参観日に渡せなくても、家で渡せるしね。」
「……そうだね。」
うん、全然「そうだね。」って思ってないよね。心読めなくても、その顔を見ればさすがにわかるよ。
その後、無田君との会話の中で、この話題に触れることはなかった。
そして、最後の授業参観。
月斗君のご両親が、学校に現れることはなかった。




