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「賞状。東堂凛花殿。右は……」
修学旅行明けの月曜日、私は全校児童の前で表彰を受けていた。
全日本ピアノコンクール 銀賞受賞。
大きな拍手を送られる。でも、私の心はここにあらずだった。
表彰が終わり、後から教室に戻るとざわめきがぴたりと止む。みんなの視線を感じながら、音を立てないように席に座った。
『日向ちゃん、かわいそう。』
『普通好きじゃなかったら、2人で一緒に帰ったり、放課後会ったりしないよね。なのに応援するって……』
『かわいいからって、何でもやっていいわけじゃないよね。』
苦しい……吐きそう。
私は、さっきもらった賞状の筒をぎゅっと握り締め、斜め後ろの空席をチラリと見た。
あの日、奥宮で日向ちゃんは無田君に告白し、振られた。
正直すごくホッとしている自分がいた。
友達の不幸を喜ぶのは良くないことだってことくらいわかってる。
でも、私だって月斗君のことが好きだから。
当然、この気持ちは誰にも知られるわけがない。だって、心の中で思ってるだけなんだから……
だけど……最悪のタイミングで私と無田君の今までの行動が明るみに出てしまった。
誰が言ったのかはわからない。けど、噂になるのはあっという間だった。
「ねぇ、東堂さん、ちょっといい?」
「うん……」
昼休み、私は朝田さんに声をかけられた。おとなしくついていくと、そこは女子トイレ。中には数人の朝田さんの友達。
「ねぇ、日向ちゃんショックで学校休んでるんだけど。」
「……うん。」
「応援するって言ったのに、日向ちゃんの好きな人と仲良くするとか最低でしょ。ありえないわ。」
「……。」
「黙ってないで何か言いなよ!」
ドン!!朝田さんに肩を押され、個室の扉にぶつかる。
痛かった……でも、その後の言葉の暴力の方が辛かった。暴言を吐かれ、人格を否定される。
文字通りのいじめ……こういうあからさまないじめは昔より減ってきてるって先生は言ってた。
そんなことはない。
ただみんな何も言わないだけ。言ったら大事になるのは目に見えてるし、報復が必ず待っている。
耐えれば……いつかは終わるから。
キーンコーンカーンコーン。救いのチャイム。
「もう昼休み終わり?
東堂さん、日向ちゃんが学校来れなくなったら、私、絶対にあなたのこと許さないから。」
そう言い捨てると、朝田さん達はトイレから出て行った。
朝田さんと日向ちゃんがそんな仲良しだなんて聞いたことがない。要は私をいじめるネタが欲しいだけなんだ。
何人かの子達がトイレに入ってきたけど、立ち尽くす私に声をかける子はいない。ここで声をかけたら、自分が標的になりかねないから。
「教室……戻らなきゃ。」




