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あっという間の一泊二日。

最終日は日光東照宮近辺の自由行動。東照宮以外の場所に行ってもいいっていうだけで珍しいのに、なんとお小遣いの範囲内であればであれば買い物もしていいというおまけ付き。


「ねぇ、せっかく同じ班になれたんだし、みんなでお揃いのお守り買おうよ!」


「さつき、ナイスアイデア!凛花、月斗、日向はどう?」


私と日向ちゃんが同意すると、無田君も「いいよ。」と一言。こういう時はちゃんと流れに乗るんだなぁと新たな一面発見。


「じゃあさ、じゃあさ!」とさつきちゃんがリュックから1枚の紙を取り出す。


「叶鈴守?」


「このお守りね、奥宮にしか売ってないんだって。願い事が叶うお守りらしいし、何よりかわいいし、これにしない?」


かわいいという言葉に若干難色を示した男子2人だったけど、青色もあるということでオッケーが出た。


あっ、でも……


「ごめん、みんな……私、奧宮には行けないんだ。」


「あっ、足のけがかぁ……どうしよう……」


困った顔をするさつきちゃん達。

申し訳なさでうつむいていると……


「そしたらさ、俺と凛花はここで待ってるからさ。3人で行って買ってきてくれよ。お金はちゃんと払うからさ。」


「えっ、でも、将斗君も行きたいって言ってたでしょ?私は1人で待ってるから、大丈夫だよ!」


「それじゃあさみしいじゃん。俺は大丈夫だからさ。」


心の声も、私のことを心配してくれてる……絶対行きたいはずなのに。


「わかった。じゃあ、2人の分も買ってくるね。

2人ともはぐれたら大変だから、絶対にこの辺にいてね。」


そして、さつきちゃんが将斗君の耳元で何かをつぶやき、「いいから早く行けって!」と押し返される。


無田君は……チラリとこちらを見た後、「行ってくる。」とだけ一言。



3人が階段を登っていくのを、私と将斗君は見送った。





「立ってるのもあんまりよくないだろ。こっちで座って待ってようぜ。」


言われるがまま、たくさんの彫刻が飾られた壁の横に腰を下ろす。

昨日はちょっと寒かったけど、今日は太陽もでていて、空気も澄んでいてすごく気持ちがいい。


でも……


「ごめんね……私のせいでお留守番になっちゃって。」


やっぱり申し訳なくて、ちゃんと頭を下げる。対して将斗君は……笑ってる?


「ぷっ、凛花、お留守番って……うける。」


「何で笑うの!?ちゃんと謝ってるのに!!」


もう!結構気にしてるのに、将斗君ったら……でも、なんだか私まで笑えてきて、2人で爆笑する。

確かに、小6にもなってお留守番はないよね。


「本当に気にしなくていいよ。好きで残ったんだし。」


「好き」という言葉にドキリとする。

将斗君も気づいたみたいで、少し顔が赤い。



「ねぇ、凛花……聞いてほしいことがあるんだけど。」


「うん。」



ザザーっと風が吹き、緑の香りがいっぱいに広がる。心の声は……周りに人がいすぎてよく聞こえない。



ううん、本当は聞こうと思えば聞けた。

でも、あえてそうしなかった。



将斗君の言葉に集中したかった。



「もしかしたらもう気づいてるかもしれないけど……俺、ずっと前から凛花のことが好きだった。


だから……付き合ってほしい。」



ぶわっと私の中で感情が溢れ出す。心の声では、何度も色んな人から『好き』って言われた。


それが正直苦しかった。

その先にある感情も伝わってきてしまうから。

ただかわいいからっていう気持ちから。周りに自慢できるかもっていう気持ちから。友達が付き合ってるから自分もっていう気持ちから。中にはちょっとエッチな気持ちから……



でも、言葉は違う。


赤くなりながら、心臓の鼓動を必死に抑えながら、私だけを見て、私だけを思って、真剣に言ってくれた「好き」は純粋に嬉しかった。


だから……



「ありがとう……好きって言ってくれて。」



感謝の言葉を伝えずにはいられなかった。


そして、きちんと伝えなければいけないと思った。



「でも……ごめんなさい。


将斗君とは、付き合うことはできません。」



それが、勇気を振り絞ってくれた彼への礼儀。



長い沈黙。本当は10秒くらいだと思うけど、それがすごく長く感じた。

その間、私は将斗君から目をそらさなかった。



「そっかー、そうだよな。

いや、わかってたけどさ、『もしかしたら』って気持ちもあったし。」


「えっ、どういうこと?」


「だってさ、凛花、月斗のこと好きでしょ?」


えーっ!?バレてる!?なんで!?

否定の言葉が出ず、口をぱくぱくさせる私に、「図星か。」と笑う。


「わかるよ。俺、ずっと凛花のこと、見てたんだもん。」


「もしかして……バレバレ?」


「いや、そんなことはないと思うけど……俺は気づいた。」


うわー、恥ずかしすぎる……穴があったら入りたい。



「でも、ちゃんと振ってくれてよかったよ。これで前に進める。」


真っ赤な顔を隠しながらチラリと横を見ると、笑顔の将斗君。


「傷ついてない?」


「うーん……傷ついてないわけじゃないけど、あいまいなことを言われる方がきつかったと思う。

だから、ありがとな。凛花も月斗はなかなか強敵だと思うけど、頑張れよ。」


私も何か言わなきゃと立ち上がったけど、将斗君は「トイレ!」と一言、走って行ってしまった。そして……


「ただいまー!お守り買ってきたよー!」


さつきちゃんと無田君が帰ってきた……あれ?


「おかえり。将斗君はお手洗いに行ってるんだけど……日向ちゃんは?」



無田君は何も答えない。



さつきちゃんは……困った表情で「えーと……」とつぶやいた。








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