01
『俺、2組が良かったわー、まじ誰だよこのクラス替え考えたの……』
「はい!」
『担任、初任の先生かよ……荒れそうだな。』
「はーい。」
『お腹空いたな、早く終わらないかな。』
「はい……」
『この1年間、私は受験に全てをかけるんだから。成績も大事だから、良い子してないとね!』
「はい!!」
私の頭の中に響く声は、みんなが聞いている返事とは少し違う。
大人の人達は、子供が純粋無垢であることを願う。
大なり小なりそれに気付いている私達は、心の声とは異なる声を発する。その方が大人も喜ぶし、円滑な人間関係を築けることに、11〜12歳にして気付いているから。
でもね……
「東堂凛花さん。」
「はい。」
『やったぜ、今年も東堂さんと一緒のクラスだ。告白したら付き合ってくれないかな?』
『まじ可愛いな。付き合えたら、あんなことやこんなことも……』
うっ……
『東堂さんと一緒のクラスかぁ……あの子がいると、私の可愛さがかすんじゃうんだよね。』
『どうせまた先生に気に入られるんだろうね。嫌だ嫌だ……本当に気分悪いわ。』
はぁ……
今の一瞬でこの情報量……本当に参っちゃう。
私、東堂凛花は、心の声を聞くことができる。
そのことを、もしかしたら羨ましいと思う人もいるかもしれない。
確かに役に立つ時もある。
心の声が聞こえるということは、その人が望むことや嫌なことが分かるから、中学年くらいまでは相手に気に入られることをたくさんして、たくさん言って、人気者になれた。
ううん、そう思ってた。
高学年になって待っていたのは、辛い日々……
「凛花ちゃんって可愛いよね!」
『この子に私の好きな◯◯君を盗られた。』
「東堂さん、めっちゃ成績いいじゃん!!」
『どうせ先生にとりいってるんでしょ。最低。』
良い子というのは、心の中では嫌われる。そんなことをまざまざと教えさせられた5年生の1年間だった。
友達だって思ってた子達も、心の中は真っ黒。
本当の友達なんて、1人もいない……
ううん、違うの。
口から出る言葉と、心の声が異なるのは当たり前。
そんなことみんな分かってる。
心の声が聞こえなければ、相手の気持ちなんて想像でしかないんだから、友達になれる。
好きな人だってできるかもしれない。
でも、私には聞こえてしまう。
耳を塞いでも、頭の中に入ってきてしまう。
だから私は静かに、できるだけ目立たず、何も思われないように慎重に、心を押し殺して生きる。
それが私が一番傷つかない生き方。自分を守るための生き方。
「オッケー。それじゃあ健康観察は終わりなんだが、一人紹介したい子がいる。
入ってきてくれ。」
「なになに?転入生?
そういえば凛花ちゃんの隣の席、空いてるもんね!」
通路をはさんで左隣の真美ちゃんが話しかけてくる。
なんで空いてるんだろうとは思ってたけど、そういうことか。
廊下から入ってきたのは……普通の男の子。
『ちょっと暗くない?あれはないわ。』
『6年生で転校してくるとか、かわいそー。』
みんな思い思いに心の中でつぶやいてる。
表面上では歓迎ムードを出してるけど……こういうのって、意外と本人に伝わってるものなんだよね。
私は無意識の内に彼の心の声に集中するんだけど……あれ?
「無田月斗です。よろしくお願いします。」
「これからよろしくー。」「なんかスポーツやってた?」
なんだかんだで興味はあるみたいで、みんなが質問を投げかける中、私は一人困惑する。
「それじゃあ、無田の出席番号は20番だから、19番の東堂の隣に座ってくれ。」
何も言わずに隣の席に座る彼。
そこで確信した……
この人、心の声が聞こえない……




