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運動が苦手だった剣術師範の高校生、真剣勝負で成り上がる  作者:


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弱者が強くなるために

 教壇に、一人の女子高生が立つ。平均よりも遥かに低い身長、頭の後ろで結ったポニーテールに切れ長の瞳。


「本日からこちらの学校に転校してきた、北辰葵です。よろしくお願いします」


 濃紺のブレザーにチェックのスカートの、汐音高校の制服を身にまとった葵さんが挨拶する。


 文字通りに校舎が揺れるほどの驚愕の叫びが轟いた。


 アレクシアからことのすべてを聞かされた葵さんは、すぐに実家に帰って父親や四菱工業の社員を問いただした。


 彼らが事実だと認めたことがショックで、彼女は家を飛び出したという。


 なぜ転校してきたかというクラスメイトの疑問に対し。


「柳生宗太さんに入門することになりましたので、剣の修行に専念したかったからです」


 北辰一刀流に疑いを持った彼女は、一度は剣を捨てることすら考えたという。


 でも剣ひと筋に生きてきた彼女が急に別の生き方をできるわけもなく。


「同年代で私を負かしたのは、あなたが初めてです」


 と、柳生流に入門したいと言い出したのだ。


 念のため父親の北辰七星朗さんにも事情を問いただしたが、「娘を負かした男だ、好きにしてくれ」とだけ言われた。


 学生の身だし内弟子入りに必要な生活費などは振りこんでくれるらしい。


 北辰一刀流や四菱工業に恨まれるかと思ったが、イワナガの件を口外しない、聖演武祭の結果に口を出さない。そのかわり柳生流にも手を出さない、ということで話が付いた。


 アレクシアや葵さんが相当骨を折ってくれたらしい。


 彼女たちには頭が上がらないと思ったけれど。


「ソウタ、これでビジネスの面でも北辰一刀流をくだせましタ」


「あなたに剣を学び、今度こそ勝ちます」


 アレクシアの方にもうまみがあったようで、しばらくはホクホク顔だった。葵さんも貸しなどとは微塵も考えてない様子だ。


 葵さんが入門したことで柳生流の道場は入門希望者が殺到した。めんどくさいと敬遠された形の稽古も、葵さんが一緒だと熱心にやってくれている。


「さすがですネ、ソウタ。優勝トロフィーでなく優勝者をもらってくるとハ」


 アレクシアにそう言われ、少し照れくさくなる。


 でも、大勢が入門すれば中にはガラの悪いタイプもいて、中島さんが怖がっているのを時々目にする。


 なので、彼女にはアレクシアと一緒に少人数の特別指導を行なうことにした。少数の弟子に一般とは違う指導をするのは、危険な技の多い古流ではありふれたことだ。


 それに運動が苦手なタイプは得意な人と一緒に練習するとコンプレックスで萎縮してしまう。


 かつての僕が、そうだったように。


 だから彼女を大事にしたい。武術は弱者が強くなれるためのものでありたい。

バキ。

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