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運動が苦手だった剣術師範の高校生、真剣勝負で成り上がる  作者:


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武術家が意外とモテないワケ。

「ほら、さっさと歩け!」


「くそっ、クソッ!」


「僕は何もしてない、知らない」


 清嗣のほうも警備員に連行されていくのを、中島さんは顔を歪ませて目に涙を浮かべながら見送っていた。


 中島さんが僕の方に振り返った時、その瞳には甘さなど一かけらもない。危ないところを助け出されて、惚れるなんて展開では決してなかった。


 嫌な記憶のもう一つが蘇ってくる。


 中学の時、似たようなことがあった。


 父母を亡くしてすぐの頃だったし、精神的に不安定な時期だった。


 学校の帰り、道端でクラスメイトの大人しそうな女子が大学生らしき男に絡まれていたのを見て、腕をねじり上げて追い払ったことがある。


 勝つのは気持ちが良かったし、追い払った後はラブコメ的な展開を期待していたりもした。


 そんな都合のいいことはあるわけがないのに。


 事実、僕に向けられたのはお礼の言葉でも熱い視線でもなく、恐怖だった。


 刃物相手に立ち回り、暴力で暴力をねじ伏せる。それを普通の人が見たらどう思うかなんて、考えもしなかった。


 僕がやったのは、あいつらカスと変わらない。ただの暴力だ。でも。


 必死に助けたのに、感謝の言葉一つもらえなかったことはショックだった。


 助けてもらったのに身勝手なことを言いたがる、それが人間だ。だから人間は嫌いだ。


 中島さんだって、同じ。


 きっと僕を怖がって、気持ち悪い視線を向けているはずだった。


「なんで、逃げなかったの、なんで、あんな危ないことをしたの、なんで」

 

 でもそんなことはなく。


 僕に向けていたのは、怒りだった。目に涙を浮かべ、胸をしゃくりあげながら拳を握りしめている。


「柳生くんのほうが大怪我してたかもしれないのに。マヨイガがないから、血だっていっぱい…… それなのに、なんで」


「なんでって、中島さんが……」


「私のことなんてどうだっていい! まず自分のことを考えたら、バカ! 柳生くんが怪我したら、ご両親だって心配するはずでしょ!」


 両親なんて、もういないよ。


 口から出かかった言葉をすんでのところで飲み込む。


 後で中島さんから聞いた話によると、はじめはあの清嗣とかいう男子が泣いて、迷子になったからと一緒に親御さんを探していたらしい。


 でも途中であの清志とかいうガラの悪い男が加わって、なれなれしく腕を掴んできた。


 これは変だ、と思って逃げようとしたら腕を強くつかまれてもう逃げられず、人目のつかないところに引きずり込まれそうになっていたらしい。


 すんでのところで僕が駆けつけた。あと少しで取り返しのつかない事態になっていただろう。


 清志という男はあと一勝で聖演武祭に出場できたけど、結局駄目だったらしい。道場の先輩についてきたところむしゃくしゃして、目に付いた中島さんに絡んできたということだ。


 本当は今日の夕方からアレクシアの指導に入る予定だったけれど、中島さんが心配ということでアレクシアは中島さんについて帰った。


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