パスワードが入力できない。
なろうラジオ大賞5参加作品。
僕はじいちゃんの家にきた。
じいちゃんとばあちゃんはだいぶ前に亡くなっていて、その住む人がいない家を、片付けにやってきている。
というのは建前で、母さんが勉強しろってうるさいから逃げてきている。
この家には、じいちゃんのじいちゃんあたりから受け継いだ金庫が、開かずの間にあるらしい。
小さい頃、じいちゃんが「開かずの間の鍵を見つけて、そこの金庫を開けられたら、中身を全部やる」と言ってくれた。
ゲームのクエストみたいでワクワクする。
クエスト達成を目指して、この間、掃除をしていたら、古びた金属の棒が出てきた。
それが開かずの間の鍵だと気づいた。
その日はもう夕方だったから、開けられなかったが、開かずの間クエストは達成だ!
鍵といえば、この家の扉のロックを解除するのも、金属の棒なんだよね。
こんなギザギザした物じゃなくて、棒に丸い凹みがあるやつだけど。
僕の家にある扉みたく指紋認証では開かない、多分古いタイプの扉だよなぁ。この家って。
こんな金属の棒で鍵が掛かるなんて、変なの。
ガチャリ
ロックが解除された。いざ、開かずの間改め、お宝の間!
部屋の中には、金属の箱に取手があって、そこにはロックアイコンを模した何かがついている。
多分これが金庫だ!
よし、じいちゃんから聞いたパスワードは、数字が4つ1176と左72、右58、右3だ!
「あれ? パスワード入力画面がないぞ?」
ディスプレイがない。
僕ん家の玄関扉は、指紋が認証されないときは、ドアノブからディスプレイを引き出して、パスコードを入力する物がある。だから、金庫のロック解除も、入力画面があるはずなのに……。
取手にはディスプレイが出てくる場所はないし、扉にもディスプレイがついていない。
それどころか、よくわからない時計みたいなのがついている。でも数字が多い……。
困ったな……。パスワード入力画面がないなんて、開けられないじゃないか! これ、金庫じゃなくて、ただの金属箱だよ……騙された……。
「あーあ、じいちゃんのイタズラに、まんまと騙されたぁ……」
落胆しながらも部屋を出て、金属の棒の鍵を使い扉をロックした。
「取手についていた、数字が並んだロックアイコンのオブジェも意味不明だし、数字の多い時計も訳わかんないや……」
ロックアイコンのオブジェが、ダイヤル南京錠と呼ばれる物。
数字の多い時計みたいなやつは、ダイヤル錠と呼ばれる物と知るのは、もう少し僕が大人になってからだった。




