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落とし前はキッチリつけさせて貰うわ!

「無事帰って来ると信じていました!」


 王城に戻ったらいきなりルシファー王子に抱き締められ、すかさず腹パンをきめた。

 そのまま昨日とは別の謁見の間に連行され怒りを顏に貼り付けた国王が既に玉座に座っていた。玉座の周りには王妃とキララ王女、お腹を押さえた王子、少し離れて宰相が立っている。部屋の周りには大臣たちと神官たちが並んでいた。


 私たちは部屋の中央に一列に並び、その後ろを取り囲むように近衛兵が固めている。


「何故、城を出た!? どうやって抜け出した!?」

「不可抗力よ? 昨日襲ってきた奴が落としていった魔道具を触っていたら市井に出たのよ」

「魔道具だと?」


 今はまだ三人の神力の事は秘密にしておきたいから適当な理由をでっち上げておいた。


「反逆者たちの中の魔力持ちが発明した、物質を移動させる魔道具かもしれませんね?」

「宰相、そんな道具が有るのか?」

「奴らは神出鬼没ですから、あるいは」

「その魔道具を見せてみろ」

「これよ。もう動かないけど」


 イーサンから貰った失敗作の魔道具を近くの近衛兵に渡した。魔鉱石を入れても動かないし、分解したらバラバラになる仕組みになっているらしい。

 おそるおそる動かない魔道具のボタンを押す国王と宰相をハラハラしながら王妃が見つめていた。


「それよりも……私たちを拉致したって事で捕縛された人たちが居るって聞いたんだけど……処刑ってどう言う事?」


 チッと言う舌打ちが後ろからか聞こえてきた。前方の神官たちはオロオロと右往左往し、大臣たちは大きな溜息を吐き、国王は苦虫を嚙み潰したような顔をしている。


「あの者たちは間諜の疑いが掛けられている」

「ちゃんと調べもしないで疑いだけで処刑されるの?」

「怪しい動きをしているとの目撃証言があるのだ!」

「目撃証言? 物的証拠は?」

「そんなものは必要ない! 信頼できる筋の証言だ!」

「その目撃者が嘘ついていたら?」

「身分の高い者の証言だ! 間違いない!」


 そんな訳あるかい!


「へぇ~! それだと罪を犯した身分の高い者は罪には問えないって事にならない? 『私がやっていないと証言しているのだから間違いはない!』ってね。そう……例えば国王夫妻とか?」


 私の言葉に国王夫妻が固まった。王妃に関しては顔面蒼白だ。


「聖女様でも不敬ですぞ! 口を慎みなされ!」

「なんで? 素朴な疑問を口にしただけでしょう?」

「国王陛下や王妃様は臣下からの信頼も厚く民にも慕われている素晴らしいお二人です! 罪を犯すこと自体あり得ません!」


 大臣二人が聖女の私に食って掛かって来た。おそらく王家の闇には関わらない人達なんだろう。実体を知って絶望しなければ良いけれど。


「そうなの? 私には処刑で全てを解決してしまう暴君にしか見えないんだけど」

「聖女! 不敬です!」


 挑発的な私と焦り出す宰相、国王は相変わらず苦虫を嚙み潰したような顔だ。


「だったら確固たる証拠も無しに投獄されている人を、牢から出してくれるわよね?」

「うむ……」

「陛下! あの者たちは反乱軍との繋がりがあるとかもしれないと……」


「かもしれないで殺されるなんて……怖い世界だね~莉奈ちん」


 司の言葉に場の空気が凍った。


「僕等の世界では疑わしい相手でも確固たる証拠が出るまでは罪に問えないのにね? 臣下からの信頼も厚く民に慕われている王妃様? 同じ世界に住んでいたのにこんな暴挙を許していたの?」


 何時に無く鋭い視線で王妃を睨み付ける司に違和感を覚える。何時もは極道の息子とは思えないほどのほほんとしたお坊ちゃまなのに今のこの司は何時もの司じゃない。

 さっきは否定したけど矢張り司も処刑され転生した誰かなのか?


「国王夫妻自らも罪を犯して揉み消しているんじゃないのか?」

「冤罪で処刑された者の恨みがはびこっていそうな国っすね」

「貴様ら! 不敬だと言っているだろう!」


 あらら。相当頭に血が上ってそうね。一旦、クールダウンさせようかしら? 余計上がるかもしれないけどね。


「そんな事より、市井で聞いたんだけど……」

「そんな事だと!?」


「神の天罰って、浄化して結界が張られたら百年の安寧がもたらされるらしいじゃない? 何故二十年しか持たなかったの?」


 ウッと言葉に詰まる国王たち。ざわつく兵士たちを視線で黙らせ私を睨みつけた。


「誰がその話をしたのだ!」

「市井の人が皆言っていたわよ」

「コホン。その事ですが……悪魔を召喚した罪人の所為で神が怒り種が芽吹いたのです」


 国王の代りに宰相が説明を始めた。当然ながら宰相は事の真相を知っているのだろう。


「それって憶測だよね? それとも神の声を聞いた人が居るのかしら?」


 私は腕を組みニヤリと笑いながら王妃を見据えた。


「ちゃんと浄化してなかったんじゃないの~先輩? 中途半端な仕事して後輩に尻拭いをさせるなんて、それでも元聖女と言えるんですか~?」

「違います! ちゃんと大地は光りました!」

「そうだ! 我が妃の所為ではない!」


 ふふふ。どこまで耐えられるかしら? 楽しみね。


「こんな事も言っていたわ」

「ど……どんな……?」


 王妃が震える声で訊き返して来た。動揺が身体全体に出て口調も乱れている。


「前の聖女様は浄化が終わる前に純潔を失ったから神力が弱まり完全に浄化出来なかったのかもって」

「嘘よ!!」

「誰がそんな出鱈目を! 今直ぐ不敬罪で投獄しろ!」

「あら、皆言っていることよ? 存在しているのかも分からない悪魔の所為なのだと言うより信憑性が高いもの」


 国王の顏が怒りで真っ赤に染まり、逆に王妃は青ざめ俯いている。もうちょっとかしら? そう思っていたらハッと何かを思い出したような仕草で王妃が顔を上げた。


「だいたい、聖女の純潔と神力は関係無いって言っていたわ!」

「誰が?」

「神官の……っ!」

「神官の?」

「神官の誰かよ! 神力は妊娠した時に徐々に無くなっていくものなの! 私がそうだったから間違いないわ!」


 語るに落ちたわね。


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