革命軍のアジト訪問……寝込みを襲ったヤツに腹パンしてやる!
「いい歳した大人のギャン泣き初めて見た」
「俺も」
「俺もっす」
「僕はたまにギャン泣きする」
イーサンは私の足元に蹲りワンワン泣いている。マジでいい大人が恥ずかしくないんだろうか? 黒歴史になるぞ!
「りいなああぁぁぁ! ごめんなさいいぃぃぃ! ゆるしてええぇぇぇ! うわああぁぁぁん!」
「兄さま落ち着いて! 許すも何も兄さまは私を陥れた訳じゃないでしょう?」
「違う! 違う! アタクシが死なせたようなものだ! 知らなかった……投獄されたのも……処刑されたのも……研究所に籠っていなければ助けられたと言うのに!」
バンダナがズレ落ち素顔が晒された。イケオジになったイーサンの顏が涙と鼻水で残念な状態になっている。
「知ってしまったら……兄さまも殺されていたわよ」
「リーナを守る為ならアタクシの命など……」
「命を無駄にしてはいけないわ。二度と言わないで!」
「リーナ……うわああぁぁぁん! ごめんなさいいぃぃぃ!」
「だから兄さま……泣かないでってば」
「うわああぁぁぁん! うわああぁぁぁん!」
「…………」
いつまでも泣き止まないイーサンに段々イライラしてきてプチキレた。
「いい加減にしてイーサン! 張り倒すよ!!」
「ヒック……」
私の怒鳴り声に驚いたイーサンの目が大きく見開いている。
「いい歳こいたオッサンがグズグズグズグズ泣いてんじゃないわよ!」
「リーナが凶暴になってる……」
「ああ?」
「……」
「お嬢、容赦ねぇ」
「素が出てるっす」
「娘に怒られているお父さんみたいだね」
ピタリと泣き止んだイーサンが怒られた大型犬の如くしょんぼりとうなだれている姿に少し言い過ぎたかなと反省しコホンと咳払いをした。
「兄さま、いやイーサン。う~ん……中を取って兄さん。元妹からのお願いがあるんだけどきいてくれる?」
「アタクシに出来る事なら……」
イーサンから言質をとった私は真っ直ぐ緑色の瞳を見つめながらこう言った。
「私……いや、リーナの分も長生きして欲しい」
イーサンの肩がピクリと震えた。
「それは……」
「さっき言っていたじゃない、死ぬつもりだって。あの世に謝りたい人が居るって。それってリーナの事でしょう?」
「…………」
「私はこの通り生まれ変わって、あの世に居ないんだから行っても無駄になるだけよ?」
「…………違う」
「えっ?」
「アタクシが謝らなければならないのは……正確にはお仕置きを受けなければいけないのは母さまですよ!」
「お母さま?」
「リーナを守る事が出来なければお仕置きすると言い残して亡くなったのです」
「最期の言葉がそれ!? こっわ! トラウマになりそう」
「十分トラウマになりましたよ。リーナがお母さまを恋しがって泣く度その言葉を思い出して身体が震えていました」
ああ~そう言う事。睨んでいたんじゃなくて怖がっていたのね。
「どっちにしても莉奈ちんが生まれ変わっているんだから、それより先に亡くなったお母さんはずっと前に生まれ変わっているよね?」
「そうなのですか?」
「さあ? この際その話は置いといて、兄さんには長生きして貰いたいのよ」
「リーナ……」
「錬金術師の兄さんは便利そうだから」
「リーナ……?」
フフフと笑いマシンガンを兄さんに渡した。
「これと同じ物を、取り敢えず百挺作って」
「百挺? マジか?」
「戦争でも始めるっすか?」
「違うわよ! まあ最初はそうしようかと思ったけど」
「じゃあ、どうするの? 莉奈ちん」
「勿論、聖なる武器を作るのよ。手っ取り早いでしょ? 後、ドローンも作って欲しいの」
「ドローン?」
「構造は咲夜の方が詳しいから訊いて?」
「俺? まあ、仕組みは分かるけど何に使うっすか? 敵の偵察?」
「私の聖なる粒子の散布用よ。取り敢えず、隣国から撒いていこうと思うの」
色々悩みはしたけれど、この大陸を滅亡させたくはない。リーナを陥れた奴らはこの世界では一握り、ほとんどの人間は関係の無い話だ。
現国王と王妃その他諸々を断罪した後でスローライフな浄化の旅をする事もやぶさかではないが、関係の無い隣国は早めに対処したい。
「莉奈ちん、この国も助けるの?」
「何時かはね。リーナとリーナパパの名誉を挽回してアイツ等に制裁を下してからの話」
「お嬢がそれでいいなら止めはしねぇけど……」
「取り敢えず、兄さんの……革命軍のアジトに連れて行ってくれない?」
「革命軍の仲間になるっすか?」
「そこまでは考えてないけど……寝込みを襲った若僧に腹パン決めなきゃ気がおさまらない」
研究所の仮眠室だった場所にイーサンが開発したと言う転移装置が置いてあった。リーナが生きていた時は無かったものだ。ふと思い立って研究所に来てみたら、わいわい騒いでいる私たちと遭遇したらしい。「母上の声が空耳で聞こえたのです」と、わけの分からない事をイーサンが言っていたが。
イーサンがポチポチと装置のボタンを押せば、さっき使った瞬間移動のように一瞬で景色が変わった。そこは鬱蒼と生い茂る木々に囲まれた森の奥。瘴気が漂い魔物の鳴き声がこだましていた。
「瘴気と魔物の鳴き声は偽物ですから安心なさい」
「本物でも問題ないけど? 私、聖女だから」
そう言うと複雑そうな顔のイーサンが苦笑交じりに「そうでしたね」と呟いた。
「万が一に備えて革命軍のアジトをこの偽の瘴気の中に造ったのですよ。姑息な王家が研究所の転移装置に気付くかもしれませんから」
「もしかしてこの風景も偽造してる?」
「その通りです。魔道具でこの風景を投射しています。一番濃い瘴気の場所が入り口ですよ」
成る程。普通の感覚を持つ人間なら先ず近寄らない場所だ。本来の瘴気に飲みこまれれば大地は汚染され、動物は魔物と化し、人間は病に倒れやがて命を落とす。漂う瘴気を見たら一目散に逃げだすだろう。
イーサンに続いて濃い瘴気の一画を抜けると鬱蒼とした木々は消え開かれた場所に出た。そして数メートル先にログハウスのような建物が点在し集落を作っていた。
「誰も居ないの?」
「今の時間は皆広場で鍛錬を積んでいます。戦いに向かない人たちはアタクシの助手として研究所に居ると思います」
「仲間は今何人くらい居るの?」
「ここには百人ほどしか住んでいませんが、他国に居る仲間を合わせると千人位はいる筈です」
「千人……」
多いのか少ないのかは判断できないけれど、イーサンの錬金術と私たちの能力があれば王家を滅ぼす事も可能だろう。
「で? 私を襲った若僧は何処に居るの?」
「ああ……オーウェンなら今朝戻って来ましたから広場に居る筈です。呼んできましょう」
「オーウェン?」
何処かで聞いた事のある名前……。
「ああ! そう言えばオーウェンは子供の頃リーナを慕っていたようですよ? 覚えていませんか? オーウェン・サークナイト」
「「「アイツ、オーウェンだったの(か)!?」」」
「えっ?」
「「あっ……」」
何で隼人と咲夜が知っているの?




