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処刑され、転生して、召喚されたみたい

ペンネームを変えてみた。


シリアス寄りなストーリーです。よろしくお願いしまーす。


「恨みは無いがアンタを殺す!」


「はあぁ?」


 怒涛の一日が、見知らぬ男の殺害予告で終わった。




 □



 私の名前は立花莉奈たちばなりな。二十歳の大学生。長く癖の無い黒髪とやや吊り気味のパッチリな目、シュッと筋の通った鼻、プルルンな唇。健康的な肌と平均よりチョイ高めの身長にスタイル抜群なメリハリボディー。面と向かって言われた事は無いけれど周りからは美人だと囁かれている。

 そんな私なのに彼氏いない歴が年齢と同じと言う屈辱。それは何故か……私の勝ち気で暴力的な性格が災いしてではなく……我が家の家業に問題があると言える……と思われる。


 所謂、反社会的な仕事を生業としている家で私の父が組織の代表、立花組五代目の組長と言うわけ。私は立花家の三人兄弟の長女。下に生意気な弟が二人いる。母は数年前病気で亡くなり、私の周りは厳つい男ばかりで、そんな私に近寄ってくる男(勇者)は殆どいなかった。


 特に恋をしたいって思った事は無いけれど……せめて行き遅れにならない内に結婚したいなとは思っていた。



 そして今日、午前中で講義が終わり帰路についたのだが、校門から数メートル先の路上に怪しい黒い高級車が停まっていた。


「莉奈ちん待ってたよ~」

「うわ……」


 黒い高級車から出てきたのはウチの組と縄張り争いをしている加美乃かみの組の組長の長男のつかさだった。

 私と同じ二十歳で、思い込みが激しく話の通じない甘えん坊なお坊ちゃまだ。どうやら美人に成長した私を見初めたらしく数か月前から付き纏われて辟易していた。


「夜景の見えるレストランを貸し切りにしたから行こうよ。ね! ね!」

「行くわけ無いでしょう? 私たちは敵同士よ」

「くすん。悲しいよね? まるでロミジュリ」

「気持ち悪い事言わないで! じゃあね」

「あああん! 待ってよ~マイハニー」


 終始この調子。相手をすると肉体的にも精神的にも疲れまくるのだ。さっさと撒いて帰宅しようと踵を返した所で、司の手下が回り込んできて私を無理矢理車に押し込んだ。


「ちょっと! 下ろしなさいよ!」

「い~や~だ~ね。今日は帰さないよ」

「死にたいの? 親父に知れたら抗争になるかもよ」

「大丈夫。さっき莉奈ちんの親父さんに僕と一緒にお泊りしますって連絡したから……滅茶苦茶怒ってたけど」

「えっ? バカなの?」


 ああ、コイツ馬鹿だったわ。真綿にくるんで蝶よ花よと育てられた極道の長男だったわ。世間知らずと言うか馬鹿正直と言うか。体型もポッチャリで癒し系のゆるキャラっぽいし、どこか憎めない奴なんだよね。ウザいけど。


「この日をずーーーーっと待っていたんだ」

「あっそ。でもきっと隼人と咲夜にボコボコにされると思うよ」

「アイツ等か~ボコボコにされるのは嫌だな。莉奈ちん僕を守ってね」

「何でよ」


 藤宮隼人ふじみやはやとは立花組の若頭の息子で私と同じ二十歳。キレやすくて喧嘩が強い私の幼馴染。

 城山咲夜しろやまさくやは隼人の舎弟で十九歳。女にだらしの無いチャラ男。数年前私をナンパしてきて隼人にボコられそのまま弟分に。

 二人は私のボディーガードのようなもの。親父に連絡しているのなら私のスマホのGPSを辿って数分でこの車に追いつくだろう。特にあの二人は私の事となると容赦ないから。


「ほら来た」

「ブフォ! 早いね~」


 二人乗りしたバイクがバックミラーに映った。後ろに乗った咲夜が大きなカバンを背負っている。


「あれ、マシンガンか日本刀背負っているかも」

「物騒だね~莉奈ちんの下僕」

「そうよ~ウチのはキレると怖いんだから」

「追い付かれるからスピードあげて」

「諦めて停まりなさいよ」


 車は交通量の多い道路から郊外へと続く細い道へと逸れ走り続けた。商店街を通り抜け、住宅街を横切り、畑や田んぼがチラホラ見える田舎道を突っ走り、目の前に大河に架かる橋が見えてきていた。そしてキキキキーーと耳障りなブレーキ音をたてた車が橋の真ん中で停まった。



 ◇◇◇


<<対象が目標地点に到着しました>>

<<彼の世界と時空を繋げます>>

<<接続完了。一分後に亜空間が開きます>>

<<了解>>


 ◇◇◇



「追い付かれちゃったね~」

「だから言ってたでしょう? 諦めなさいって」

「大きな橋だね~ちょっと下を覗いてみない?」

「なに余裕こいてんの。そのまま二人に突き落とされるわよ?」


 ガンッと橋の手すりにぶつかって停まったバイクから隼人と咲夜が下り立った。


「懲りねぇヤツだな! 締め上げて橋に吊るすぞ!」

「お嬢、大丈夫っすか? そのブタやっちゃいます?」


 二人共怒り心頭だ。隼人は拳をバシバシと鳴らし、咲夜はジャックナイフをクルクルと回していた。


「こら~! 誰かに見られたら通報されるから~!」

「あ~ん。莉奈ちん行っちゃヤダ~」


 運が良いことに人も車も通っていない。急いで車から降り二人を落ち着かせることにした。しかし、司が私に纏わり付いてきて余計に二人をキレさせた。


「おま、クソブタ! お嬢から離れろ! 殺すぞ!」

「ダメーー! これから莉奈ちんとランデブーなの~」

「コラ、ブタ、コラ! 蜂の巣になりたいんすか?」

「もう! 子供の喧嘩? いい加減にして……」


 隼人が司の胸倉を掴んだ瞬間……眩しい光で目の前が真っ白になった。


「何なの!?」

「クソブタ! 何した?」

「僕じゃないよ~」

「閃光弾っすか?」


 そして突然の浮遊感。


「ええっ!?」

「爆弾仕掛けてたのか!?」

「僕じゃ無いって~」

「落ちるっす!」


 真っ暗な穴の中を数十秒間落下した後ふわりと着地した。床には青白く光る模様が描かれていた。円の中心から放射線状に伸びる真っ直ぐな線、外側の二重の円の中には幾何学模様が描かれ、まるで……


「……魔法陣?」



 ◇◇◇


<<転移完了。異常無し>>

<<レーナ・ロッサムの記憶の凝縮開始……>>

<<……前世の記憶、準備出来ました>>


 ◇◇◇



 眩しい光がおさまると「おおお!!」と言う声が室内に響いた。


「なんと! 聖女様が四人!?」

「いえいえ、女性はおひとりです」

「長い黒髪の美しい少女です」


 声のする方を見れば、真っ白な広い部屋の隅に銀色のローブを纏った老人たちが私たちを見上げていた。


「ここは何処だ? お前、橋の下にこんなものを造っていたのか?」

「だから僕は何もしてないって言ってるのに~」

「違うっすよ、隼人さん! 宇宙人に攫われたっす!」

「なにぃ!?」

「莉奈ちん、怖いよ~」

「ブタ、コラ、ブタ! お嬢に抱きつくんじゃないっす!」



 ◇◇◇


<<前世の記憶を転送します……>>

<<……完了しました>>

<<記憶の解凍を開始します。完了まで一時間>>


 ◇◇◇



 横で騒いでいる三人を置き去りにキョロキョロと建物を観察した。磨き上げられた大理石の床、白亜の壁に描かれた絵画、白い支柱がどこかの国の遺跡を思わせる創りに既視感を覚える。


 私は、この場所を知っている?


「あなた達誰? ここは何処なの?」


 私の言葉に長い白髭の老人が一歩近付いて来た。


「驚かれることとは思われますが……実はこの世界は、貴女様方が居た世界とは異なるのです」


「まっ、まさかの異世界転移っすか!?」

「状況だけ見るとそうみたいね」

「僕たちは選ばれし者って事だね」

「何だよ、それ」

「あ~隼人さんはそうゆうの疎いっすもんね」


 突然光に包まれた後の浮遊感。数十秒間も落下していたにもかかわらず傷ひとつなく着地して、光る魔法陣と言葉の通じる異国人……異世界あるあるだわ。


「お嬢、咲夜、詳しく説明しろ!」

「僕には訊かないの?」

「さっき聖女様って言っていたわね?」

「お嬢が聖女様……? 似合わねぇっす」

「ブッ飛ばすわよ!?」

「ガン無視かよ!?」


 取り敢えず……咲夜は後でボコると決めて異世界に来たと言う現実を受け止める事にした。


 何故かこの非現実的な出来事がすんなりと受け入れられたのだ。


「詳しい話は国王陛下がなさいます。先ずは王城の謁見の間までご案内いたしましょう」


 神殿のような建物から出て遠くに見える城へと向った。初めて乗る馬車の乗り心地の悪さに酔いそうになりながら数十分で到着した城は大きく美しい外観をしていた。


 どこかで見たようなお城だな。


 ここでもまた既視感を覚えた。


 長い廊下を進み大きな分厚い扉を開けると赤い絨毯が玉座に向かって続いていた。それを見た瞬間、胸がムカムカとして気分が悪くなった。


「うっ!」


『陛下! わたくしは無実で御座います!』


 ズキンと頭に痛みが走り、女性の叫び声が聞こえた……気がした。


「お嬢、どうしたっすか?」

「顔色が悪いぞ?」

「うん……馬車に酔ったみたい。気分が悪いわ」

「僕がお姫様抱っこしてあげるよ」

「余計に気分が悪くなるわよ」

「莉奈ちん、ひど~い」


「聖女様とお連れの方々。国王陛下がお見えになります、中央までお進みください」


 私たちは近衛兵に促され部屋の中央へと進んだ。得体の知れないものに圧し潰されそうな気分になった。吐き気を我慢していると兵士に跪くよう言われ膝をつく。


「頭をお下げください」


 言われるがまま頭を下げる。横の三人も周りの雰囲気に飲み込まれ同じように跪き頭を下げた。


「国王陛下のおなりです」


 壇上から微かに聞こえる衣擦れの音。ギシッと玉座に座る音が響いた。その後に数人の足音が聞こえ、静寂が訪れた。


「面を上げよ」


 少し甲高い声がした。国王の声だろう……何故か不快な声だった。私はゆっくりと頭を上げ玉座に座る男を見た。


 金色の髪に水色の瞳、四十歳前後と思われる整った顔の男だった。もう片方の椅子には黒髪の小柄な女性が座っていた。おそらく王妃と思われるその女性は地球のアジア系の顔をした四十歳位の女性だった。

 二人を挟む形で両端に立っているのは二十歳前後の国王に似た金髪の青年と王妃に似た茶髪の少女。


 私はこの人達を知っている……?



 ◇◇◇


<<解凍完了>>

<<了解。次は……>>


 ◇◇◇



 次の瞬間凄まじい勢いで、私……『立花莉奈』の知り得ない情報が頭に流れ込んできた。




『僕はこの国の第一王子。スチュアート・クロムノーツだ。今日から君の婚約者だ』

『わたくしはロッサム侯爵家が長女、リーナに御座います。不束者ですが宜しくお願い致します』



『美しい黒髪……まさに聖女に相応しい……』

『あなたは王子様なの?』



『殿下! 聖女とは言え未婚の女性です。二人きりでお過ごしになるのはお止めください』

『煩い! 聖女とは何も無い! 見苦しい嫉妬は止めろ!』



『うふふ。スッチーにこの指輪貰ったのよ? 似合う?』

『聖女様。殿下を変な愛称で呼ぶのはお止めください!』

『やだ怖い! 睨まないでよ! そんなんだからスッチーに嫌われるのよ?』



『嫉妬に狂い聖女を亡き者にしようと毒を盛った悪魔め! 地下牢の最奥に閉じ込めておけ!』

『違います殿下! わたくしでは御座いません!』




 私は、この男の……婚約者だった? 



 ――わたくしを処刑した婚約者!!



 そう思い出した瞬間、私の意識は暗闇に落ちていった。



読んで頂きありがとうございます。

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