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8.気になる人

運命の出逢いから半年の月日が流れた。


僕達はクレアとシェイラに何度も会いに行き、幼馴染みとして一番近くにいる位置をキープしていて、お互いに名前で呼び合うほどの距離に近づけた。

ほとんどルイのおかげなんだけど……。


『元アイドルとしての経験を活かせよ』なんてルイに言われるんだけど、クレアの前だと照れてしまう。

意識してしまうとルイの様にスマートにできない時がある。


でも少しずつ、クレアのことを知るたびに嬉しくなる。


たまにケンカをしちゃうけど、シェイラととても仲が良い姉妹だということ。

好きなものは甘いお菓子、可愛いレースやぬいぐるみ、薔薇の花、色は青い色。

趣味は読書と絵画観賞。

本を読み終わったあとはしばらくボーッとしていて、特に可愛い。

そしてダンスが苦手。


あと、僕をあの大きな瞳でじっと見て話をするのでいつもドキドキしてしまう。

そして、ちょっと意地っ張りなところもあるクレア。


もっともっと君のことが知りたい。

……でも、最近どうしても気になることがある。



「クレア様、お手紙が届いていますよ」


今日はアリストロ伯爵家に来ていた。

クレアは綺麗な緑色の手紙を受け取り、とても嬉しそうに読み始めた。


クレアが前に住んでいたところにいる友達からの手紙がよく届いている。

いつも同じ緑色の封筒だ。

クレアは満面の笑顔で手紙を読む。

最初の頃は仲がいい友達なんだなと思っていたけど、頬を赤くして読んでいるのが気になった。


もしかしてクレアの好きな人?

僕はさりげなく聞いてみたら『とても大好きな友達なの』と手紙を手に少し恥ずかしそうに言っていた。

恥じらいながら大好きって…。

まだ恋人じゃないけど、好きな人ってこと?


そして今日も頬を染めて手紙を読んでいる。


君にそんなに可愛い顔をさせる人ってどんな人?

僕はそんな君を見るたびにこの恋に勝ち目はないと思ってしまう。

君が大事に手に持っている手紙の送り主に嫉妬する。


チラリとルイの方を見る。

ルイはシェイラとソファーに並んで座り、楽しそうに話をしている。

たまにシェイラの手を握り、見つめている。

ルイの恋愛スキルが凄すぎる。

本当に僕と同じ8歳なの!?

前世でも琉生は撮影の仕事とか上手だったもんね。

照れずにできちゃうんだろうな…。

双子なのにどうしてこうも違うのか。


僕はそっとため息をつき、紅茶を飲んだ。

するとクレアの手から僕の足元の方へと手紙が一枚落ちてきた。


「クレア、手紙が……」


「あぁっ!」


僕が手紙を拾うとクレアが慌ててサッと手に取った!

クレアは大事そうに手紙を両手で持ちホッとした表情をした。

そんなクレアの行動に僕は胸が痛くなった。


「そ、そんなに大事な手紙なら自分の部屋で読めばいいのに!」


「あ……」


手紙の送り主への嫉妬が止まらない。

こんなこと言いたくないのに!


「ルカ…拾ってくれたのにごめんね」


「…いや、僕の方こそごめん」


悲しそうな顔をしたクレア。

その『大好きな友達』と違って僕は悲しませてしまうのか。


どうしてルイのように、うまくいかないのかな。

また僕はため息をつき、楽しそうなルイとシェイラを見た。



クスフォード侯爵家に戻り、僕はピアノを弾いていた。

指を止めて、窓の外を見る。

何曲弾いていたのか。

夜の暗闇に月が輝いている。


「ルカ、大丈夫?」


ピアノの前に座り落ち込んでいる僕の隣にルイが座る。


「ルイはシェイラと仲がいいね」


チラリとルイの方を見て羨ましい気持ちを溢す。


「ルカは不器用だもんね」


ポンと僕の頭に手を置いてから撫でてくれた。


「クレアに嫌なことを言っちゃった」


「うん」


「知らない相手に嫉妬しちゃった」


「うん」


「明日謝る」


「うん。頑張れ。まだまだこれからだよ」


ルイが僕の好きな曲を弾いてくれる。


「……ありがとう」


ねぇ、ルイ。

クレアにはもしかしたら好きな人がいるのかもしれないんだ。

僕の初恋は実らないかもしれない。

どうしたらいいかな……。


僕は目を閉じてルイのピアノの優しい音を聴いていた。


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