6.ダブルデート1
「ルカ、明日は4人で出掛けるよ」
「え!?」
ルイが僕の部屋に来てソファーに座ると、メイドのデイジーが紅茶とお菓子を出してくれた。
「ありがとう。良い香りだ」
「あれ? マカロン?」
前世の頃に好きだったお菓子だ。
「ルカ様、よくご存知ですね。最近王都で流行り出した『マカロン』と言う名のお菓子です」
僕が知っていることにデイジーが驚いている。
あ、僕がマカロンを知っているなんて不自然だったかな?
「僕達は王都の流行も素早く手に入れたいからね。情報は常にチェックしているんだよ」
ルイがフォローしてくれた!
「お菓子まで!流石でございます!このお菓子は王都の流行りを生み出すと言われているマクラナ伯爵家が手掛けていらっしゃるそうですね」
「マクラナ伯爵家……」
へぇ、そうなんだ。覚えておこう。
「色合いも形も可愛らしく、とても美味しいですよね。私や他の使用人達も大好きなのです」
サクリとした食感で甘いこのお菓子は僕も好きだ。
前世の頃も仕事の移動時間中とかに買いに行っていたなぁ。
お茶の用意をしてくれたデイジーは部屋を出た。
「ルイ、フォローしてくれてありがとう。ルイはマカロンが今王都で流行ってるって知ってた?」
「いや、新しいお菓子があると言う噂は聞いたことがあったけど、それがマカロンだったんだな。あと、やり手のマクラナ伯爵家の話も聞いたことがあるよ」
「そうなんだ。僕は知らなかったよ……」
「明日のダブルデートはこのマカロンのお店に行こうか?噂だと店内で食べれるみたいだし」
「ダブルデート!? いつそんな話になったの!?」
マカロンが喉に詰まりそうになって、ドンドンと胸を叩く!
「さっき明日は4人で出掛けるって言っただろ?」
「ふぅ。そうだけど!それがデート?」
「もちろん。僕はデートのつもりでシェイラ様を誘ったからね。まずは仲良く皆で行こう」
「そ、そっか。ルイの行動力本当にすごいね。もうデートに誘うなんて」
本当に僕と双子なの?
「シェイラ様は綺麗だからね。この先心配だし。まぁ、逃がすつもりもないけどね」
ルイはクスリと笑いながら紅茶のカップを手に取った。
翌日はルイとお揃いのスーツでビシリと決めた。
僕達のネイビーブルーの髪色に合う紺色のスーツ。
襟元にはドット柄のリボンタイでカジュアルに。
髪型もサイドに流している。
「おや、ふたりともお洒落だね」
お父様が誉めてくれた!
「本当ですか!?」
スラリと背が高くて美しく、大人の男性ならではの色気がある格好いいお父様に誉められた!
嬉しくて笑顔で聞き返す。
「ああ。自慢の息子達だよ」
「シェイラ様とクレア様をお誘いして王都の街に行ってきます」
ルイがお父様とお母様に伝える。
「デートかい? ルイ、ルカしっかりとエスコートするんだよ」
「はい。もちろんです」
クスリと微笑み合うルイとお父様。
そんなやり取りを見てお母様は「まぁ」と少し驚いた顔をしていた。
そろそろ時間だ。
「ルカ、行こう」
「うん」
僕とルイはアリストロ伯爵家へと向かった。
「ルイは性格まであなたに似てきたわね」
手を頬に添えてため息をつきながら夫のラークを見る妻のサフィア。
「私のそういうところも好きだよね」
愛しのサフィアを抱きしめ微笑むラーク。
「…シェイラ様が心配だわ」
サフィアは頬をほんのりと赤く染めながらポツリと呟いた。
「ルカは君にそっくりで本当に可愛いよね。さ、私達は美味しいお茶を飲もうか」
ラークはクスクスと笑いサフィアの頬にキスをしてから、腰に手を添えて歩き出した。