5.運命の出逢い2
今日もアリストロ伯爵一家がクスフォード家に遊びに来ていた。
お父様達は久しぶりの再会が嬉しいようで、両家で食事をしたり、お母様同士はお茶会を、お父様同士はお酒を楽しむ時間が増えている。
必然的に子供達もお互いの屋敷に行くことが多くなり、子供達だけで会う機会も増えた。
「シェイラ様、今日も素敵ですね。庭園の花が綺麗に咲いているのですが、よろしければご一緒にいかがですか?」
「は、はい…」
スッとシェイラ様をエスコートしてルイは庭園に向かう。
嘘!? ルイ、めちゃくちゃ格好いい!!
貴族令息っぽい!!
シェイラ様の頬がポッと赤くなった。
「おやおや」
「まぁ!」
そんなルイとシェイラ様を見ていた大人達がクスクス笑っている。
対して僕はというと……。
クレア様の大きな瞳と目が合った途端、顔を赤くして動けなくなってしまった。
どうして!?
そんな僕を見て大人達はまたクスクス笑う。
「おやおや、双子でも少し違うようだね」
「フフフ。そのようだね」
固まっている場合じゃない!
僕はどうすればいい?
焦って考えがまとまらない!
右手の指を顎に添えて考えていたら、お父様が僕の背中をポンと押して助けてくれた。
「ルカもクレア様と庭園のお花を見ておいで。いいかな?クレア様」
僕はハッとした!
ルイと違う事じゃなくていいんだ!
僕もお花を見ようと誘えばいいんだ!
優しく微笑みながら僕を見ているお父様に頷き返す。
僕はドキドキを抑えるようにフゥと息を整えてから、スッとクレア様に手を差し出す。
落ち着けー!
「クレア様、僕達も行きましょう」
「は、はいっ!」
僕だってルイと双子なんだ。
ニコリと微笑んでクレア様をエスコートしながら庭園に向かった。
「おや?やっぱり双子なんだね」
「あら!本当ね。ルカもエスコートできているわ!」
また大人達が何か言っているけど、クレア様の照れている横顔を見て可愛いな、なんて思いながら歩いていた。
少し先にあるお花のアーチのところでルイとシェイラ様が話をしている。
邪魔をしないように僕は違う道へと進む。
「少し段になっているから気をつけてくださいね」
クレア様と目が合い、また少し照れて庭園を歩いた。
ふとクレア様の足が止まった。
「わぁ、なんて綺麗な薔薇……」
薔薇が植えられている一画に、虹色に咲いている薔薇がある。
同じ種類の薔薇なのに、いろんな色を見せてくれるお花だ。
「あぁ、それは隣国に咲いているという八重咲きの薔薇です。花びらの色が多彩で不思議ですよね」
ふたり並んで薔薇の花を見ていると、庭師が近くにいた。
「クレア様、少しお待ちください」
庭師のトーマスのところまで行って話をして、薔薇の花を手に持ち戻ってきた。
「こちらを向いて」
「あ……」
クレア様の綺麗に編み込んでセットしているオレンジブラウンの髪にピンクと紫が混ざったような色の八重咲きの薔薇を飾る。
「とてもお似合いですよ」
僕はニコリと笑ってクレア様に伝える。
「……ありがとうございます」
……恥ずかしそうに俯くクレア様が可愛い。
少し見惚れてしまって、手が止まってしまった。
反対側の耳の上の髪にまた花を飾ろうとしたら、クレア様がそっと手を伸ばしてきて、その青い色の薔薇を手に取った。
「この色はルカ様にお似合いです」
僕の上着の胸ポケットに花を飾ってくれた!
僕達はお互いに顔を見合わせて微笑み、またゆっくりと歩き庭園の散歩を続けた。
ルイのようにはスマートにできない僕だけど、クレア様はどう思ったかな?
庭師のトーマスはそんなふたりの姿を微笑んで見ていた。