31.元子猫ちゃんの波乱2
「クレアッ!!」
僕は慌てて立ち上がる!
でも、どう説明すればいいか…。
躊躇していると、ルイが僕の背中をバシッと叩いた!
「早く追いかけろ!」
ハッとして僕はクレアが走り去った方へと急いで走った!
どこにいる?
焦りながらキョロキョロと周りを見渡す。
鐘の音が鳴り、次の授業が始まった。
僕はそのまま人が少なくなった通路を走りクレアを探す。
校舎を抜けて、花の温室の近くを通ると扉が少し開いてキィと揺れていた。
植物の葉や花の隙間からクレアのオレンジブラウンの髪の色が見えた。
「ッ!!」
見つけた!
僕はそっと中に入った。
「ヒック……うぅ……」
ベンチに座っているクレアは俯いて泣いている…?
「クレア……」
僕に気づいたクレアがビクッと固まる。
「どうして泣くの?」
「……泣いていないわ」
俯いたまま首を横に振って否定する。
僕は膝をついてクレアの顔を覗く。
綺麗な長い髪を耳にかけ、そっとハンカチを頬に添える。
「泣かないで、クレア」
「…………」
クレアは黙ったままだ。
「……あの人と知り合いだったの?」
まだ泣き止まないクレアが俯いたまま僕に聞く。
「少し前に朝のランニング中に見かけたことはあったけど、知らない人だよ」
「嘘!!ルカのこと詳しそうだったわ!!」
やっと僕を見てくれたけど、涙で濡れた顔に胸が痛くなる。
僕はそんな顔をさせたくなくてクレア抱きしめた。
「クレア!」
「嫌っ!離して!」
クレアは僕の胸をドンッと拳で叩く。
「ルカのばかっ!私にはあんなこと言ってくれないのに!!」
またドンッと叩く。
僕はさらにギュッと強く抱きしめて小さなクレアを僕の胸に包み込んだ。
「本当に知らないんだ。きっと以前に僕とルイを見かけたんだと思う」
前世のことは今は話せない。
余計に混乱するはずだし、分からないことも多い。
でも必ず話をするから。
僕の全部を知って欲しいのは君だけだよ。
「だから泣き止んで。僕のクレア……」
クレアがピクッと僕の腕の中で動いた。
僕はそのままクレアを抱きしめてクレアの頭にキスをした。
クレアが僕の上着をギュッと握りしめたあと、また泣き出してしまった。
僕達は時間を忘れて花に囲まれた温室にいた。
クレアが泣き止んでもそのまま僕は抱きしめたまま。
またどこかに行ってしまわないように。
授業をサボって温室で花や植物を見ていて、何も言わなくてもクレアも側にいてくれた。
ここはきっと、玲お兄ちゃんがメリアーナ様と放課後にデートをしていたという温室だな。
お兄ちゃん達はどんな話をしていたのかな?
あのふたりのように僕とクレアもいつかは結婚することができるだろうか……。
ねぇ、クレア。『あんなこと言ってくれない』ってどの言葉のこと?
僕とフラン様のことで泣いていたクレアに期待してもいいのだろうか……?
そんな願いを込めて僕の隣で花を見ているクレアの小さな手を握った。