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3.小さなクスフォードツインズ

「フンフフ~」


あ、また鼻歌で『ツインズ』の曲歌っちゃってた。

前世を思い出してからよくやってしまう。

でも思い出す前も『ツインズ』のダンスを踊ってたみたい。

『不思議なダンスね』なんて言われてたし。

心と体が覚えてたってことかな?


そうだ!

曲や歌詞を忘れないように書き留めておこう!

大好きな『クスフォードツインズ』は大切な思い出だ!


僕はクスフォード家の音楽室に向かった。

そしてピアノを弾き、大好きな『ツインズ』の曲を歌う。

やっぱりいい曲だ!僕は楽譜に書き始めた。


「大事なデビュー曲は……」


「何を書いているの?」


音楽室に入ってきたルイが、僕が書いている楽譜を覗く。


「『ツインズ』の曲を書いているんだよ。前世の記憶を思い出したら歌いたくなっちゃってさ」


「あー、なるほど。琉翔は『ツインズ』大好きだったもんね」


「琉生もでしょ?」


僕達は歌うことが大好きだった!

もちろんダンスも!

僕達の歌やダンスで皆が笑顔になってくれる!

そんな『ツインズ』のお仕事が大好きだった。

もうできないと思うと寂しいけど。


「ね、ここの歌詞ってさ、こっちが先だったよね?」


「違うよ、これだよ。ルカ、ここよく間違えてたよね」


ルイにクスリと笑われて、ルイも楽譜に書いてくれる。

ふたりでたくさん書いた。

ピアノを弾いて歌いながら、ひとつひとつの曲を懐かしく想う。


この曲の時は、あの曲が入っているアルバムのレコーディングの時は……と、昔の大切な記憶が次々と甦る。


僕達の大切な曲をふたりで歌う。

そして、あの頃の大切な人達も思い出す。


ポタリと涙が落ちて、ピアノを弾く手が止まる。


「あれ?」


また涙が流れる。


気づくとルイも手が止まりうつむいている。

こんなつもりじゃなかったのに。

想い出がありすぎて……。


しばらく僕達は顔を上げることができなかった。


「……ね、ダンスもしたくなってきちゃった!ルイ!」


僕は明るい声を出してルイを誘う。


「そうだな……」


ルイはクスリと笑って僕を見た。


「ダンスは僕の方が上手だったよね!」


フフッと僕も笑いながらルイと手を繋ぐ。


「ドラマや雑誌撮影の仕事は僕の方が上手だったよな」


ルイもまた笑う。


ふたりでレッスン室に走った!

手を繋いで笑いながら走っている僕達を屋敷の人達も笑顔で見ている。

前世の頃とは違うこの風景の日常に、やっぱりもう戻れないと思い知る。


こんなに大きな洋館に住んでいる僕達。

フカフカの絨毯に、豪華な調度品の数々。

長い階段に、壁には大きな絵画。

窓の外にある広々とした庭園には、たくさんの木々や綺麗な花が、噴水が、大きな門がある。

立派な馬車に乗って出掛け、屋敷にはこの家の為に働いてくれる人々がいる。


前世では考えられないところで、毎日を過ごしている。

こんな世界に今、僕達はいる。


レッスン室の扉を開けて、息を整えて中央に立つ。

『ツインズ』のふたりのいつもの立ち位置で並んだ。

目の前には大きな鏡。

僕達は目を閉じて思い出す。


大きくて広い会場に、眩しいスポットライト!

会場を埋め尽くすたくさんの人々。

鳴り響く歓声!ファンの皆の大きな声援!

ペンライトやうちわを持って応援してくれている。

子猫ちゃん達のとっても楽しそうな笑顔!


目を開き、スッと僕達は左右対象でポーズをとる。

ルイは左手を胸に、僕は右手を胸の前に当てる。

もう片方の腕は斜め下に広げる。

いつも僕達が歌う前にするポーズだ!


僕達の頭の中に曲が流れる。

歌いながらステップを踏んでダンス!

そう、これが『クスフォードツインズ』!


心と体が喜んでいるのが分かる……!!


楽しい!

久しぶりに全力で歌って踊る!!


ルイと笑顔で踊る!

この感覚、懐かしい!

何曲分踊っただろう?

でも体が勝手に動くね、ルイ!


僕が足を怪我しちゃった時は、僕はピアノを弾くことになって、琉生がふたり分のダンスをカバーしてくれた。

歌はもちろんふたりで歌ったけど、ダンスパートが増えたから大変だったよね。

でもあの時の琉生めちゃくちゃ格好良かった!!


レッスン室に置いてあるピアノに僕は走り、ピアノを弾き始めた!

アレンジをしながらピアノを弾き、笑顔で歌う!

ルイもアレンジしながらダンスする!


本当に懐かしいね!


でもどうして?

胸が熱くなって…。

楽しいのにまた涙が流れる…。


そしてダンスは終わる……。


遠い、遠い異世界で、あの頃を想う。


そんな小さな『クスフォードツインズ』の復活だった。



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