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【完結】ヴィヴィアーヌの声は今日も可愛い ~歌う聖女は、辺境で幸せを掴みます!  作者: ぷよ猫


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13/29

13 最後に聖歌を歌います

ちょっと文字数少なめです。

後書きに、呪文の訳を載せておきます。

興味ある方はご覧ください。

「ロジェ様のために、聖歌放送で歌わせてください。五曲、いえ三曲だけでも!」


「は……歌?」


 アルシェさんが面食らっている。伝説級の魔物が出現しているというのに、のほほんと「歌いたい」だなんて、馬鹿げたことだと思っているに違いない。

 わかってる。

 私は必死にアルシェさんの腕に縋りついた。着ていた服の袖口が、血で汚れても気にせずに。


「状況はわかっています。だけど、ロジェ様との約束だったんです。このままでは、死んでも死に切れません。お願いします。後生です」


「でも……」


 時間がないと言いたいのだろう。私の移動にも護衛がつく。歌い終わるのを悠長に待てるほど、彼らも暇ではない。ギリギリなのだ。

 無理強いしないのは、私が次期当主の婚約者だからだ。こんな切羽詰まった状況でも、彼は私を尊重してくれている。

 ごめんなさい、わかってる。

 自分がとんでもなく我が儘なことを主張しているんだってことを。


「いいじゃないですか、アルシェさん」


 取り成す声がした。振り返ればボランさんが、手には何枚も書類を持っていて、耳にペンを挟んでいた。


「今更、何処へ行こうと大差ありません。ロジェ様もわかっているから、奥様をここに残されたんでしょ。どうせなら好きなだけ歌っていただいた方が気晴らしになるでしょう。奥様の歌声は、本当に伝説の聖女と同じ声らしいですよ。私も聴いてみたいです」


 アルシェさんが黙ってしまった。

 ボランさんの言う通り、何処へ逃げても同じなのだ。忠実にロジェ様の命令に従うのか、無駄な行動は止めて臨機応変に振る舞うのか。きっと迷っている。

 私はもう一押しする。


「これは私の選択です。アルシェさんに責任はありません」

 

 アルシェさんは、一呼吸置いた後「わかりました」と根負けしたように頷いた。


「俺……いえ、私はロジェ様の加勢に戻ります。きっと奥様の歌声が、彼の励みになるでしょう」



 アルシェさんが去って行った後、私はマイクの前に背筋を伸ばして座った。けれど、どうも違うような気がして、すっくと立ち上がり足を少し開く。

 そうそう、この姿勢じゃないとお腹から声が出ないのだ。

 ブノワがレモネード……という名の砂糖水を手に戻って来たので、一口飲む。

 ちょっと緊張する。だけど、大丈夫。「歌は心」だ。


「ヴィヴィアーヌ様、女は度胸ですぞ! ()()()()()()()()()()()()()()()なさってくださいませ」


 ブノワの激励が「音痴は気にするな」と遠回しに言われているような気がする。けれど、今は細かいことは気にしないことにしよう。

 どうかこの歌が、ロジェ様の力になりますように――――私はそう願いながら、マイクのスイッチを入れた。



 ピンポンパンポォ~ン♪


 ロジェ様、ヴィヴィアーヌです。

 あの、これから約束の歌を歌います。

 どうかロジェ様に届きますように。


 そ、それでは、まずは定番の『聖なるオーロラ』から――――。


 エマッタリィー モォマ モォマ オゥ~ラレワ …………♪♪

  

 ……………………ルッナ コゥ ョキ テタ エマッタリィー ♪


  

 続いては、ロジェ様の思い出の曲『聖なる清めの一撃』です。


 クゥェ ナモタッカ トゥ~ナ ニグスェーマイ ……………………♪


 ………………イーサナエキュ ヨーノモッマ クゥェ ナモタッカ ♪



 お次は『静かなる心』をお聴きください。


 ティッチオォ~ イサナ リィマ ズゥシ ……………………♪


 ……………………イサナ リィマ ズゥシ ティッチオォ~ ♪♪



 四曲目は『百目の子守歌』です。


 スェディノ ルゥーエカ へチゥオ ラタメ ザッメ ………………♪


 …………リムネー トゥーリ クッユ イサ~ナ リムネー アサァァ ♪



 ラストは『聖なる癒し』です。


 オゥ~ラレワ シィーオズィ キ エマッタシェー ヤイ ヤイ キ ♪


 ……………………………………キ エマッタシェー ヤイ ヤイィ ♪


 

 ……て……ありがとう……ございまし……た…………ガタンッ!!……

 

 …………ガタッ………………………………………………………………


 ………………………………………………………………………………


 ……ヴィヴィアーヌ様! しっかりなさってくださいっ……誰か! ……


 …………ガタッ……ガタッ……大丈夫ですかっ…………早くっ…………


 ……………………ザァー……ザァー……ザァー………………ブチッ。


 

 私の意識は、ゆっくりと沈んでいった。

 最後の曲を歌い終わった途端に力が尽きてしまったのだ。

 心を込めて歌うと、とても疲れる。初めての経験だ。

 そう、ちゃんと歌えたはずだ。いつも通りに。

 集中するために目を瞑った。曲はすべて頭に入っている。問題ない。

 途中で「ワァー」とか「ウォォー」という賞嘆と、パチパチと盛大な拍手の音がしてきたので、つい調子に乗った。恥ずかしいからと三曲だけのつもりが、結局、五曲も歌ってしまったのだ。

 やっぱり、歌は人をハイテンションにするのだと思う。

 ロジェ様は…………喜んでくれただろうか?

呪文・ネタバレ


呪文を後ろから読むと、こんな感じです。


『聖なるオーロラ』 「エマッタリィー モォマ モォマ オゥ~ラレワ ルッナ コゥ ョキ テタ」 → まもりたまえ われらを きょうこなる たて まもりたまえ


『聖なる清めの一撃』 「クゥェ ナモタッカ トゥ~ナ ニグスェーマイ イーサナエキュ ヨーノモッマ」 → まものよ きえなさい いますぐに あとかたもなく


『静かなる心』 「ティッチオォ~ イサナ リィマ ズゥシ イサナ リィマ ズゥシ ティッチオォ~」 → まものよ しずまりなさい しずまりなさい おちついて


『百目の子守歌』「スェディノ ルゥーエカ へチゥオ ラタメ ザッメ リムネー トゥーリ クッユ イサ~ナ リムネー アサァァ」 → さあ ねむりなさい ゆっくりと ねむり めざめたら おうちへ かえるのです


『聖なる癒し』 「オゥ~ラレワ シィーオズィ キ エマッタシェー ヤイ」→ いやしたまえ きずおいし われらを


ご覧いただき、ありがとうございました!

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