表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】隣の悪魔と徹底的で破滅的な復讐をする事になった件  作者: そらちあき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/42

40:徹底的で破滅的な復讐

 甘楽と我間がこの学校にやって来た後、()()に手を染めたあの時に全ての歯車は狂い始めた。


「終わりだ、甘楽」


 聖斗はそう呟くと、タブレットPCを操作し始める。


 スクリーンに映し出されるのは、まだ行われていないはずの『期末テスト』の答えを、甘楽がグループトークの参加者に共有するその様子だった。


「あ……ああ、ああああ………ああああああああああ!!!!!!」


 甘楽は崩れ落ちる、何もかもが崩れ落ちていく。今まで築き上げてきたものが壊れていく、自分の人生が終わっていく。


 彼女は声にならない声で泣き叫ぶ。


 だが、まだ終わらなかった。


 彼女の地獄はまだ続く。

 甘楽の心を砕こうと、真紅は更に言葉を続けた。


「甘楽さん達はまだ行われていないテストの内容やその答えを事前に入手する事で、勉強をせずとも好成績を収める事が出来ました。甘楽さんの学年トップの成績は紛い物、それに続く我間 風太、そして彼女の属するクラスメイト達や他の協力者達も同様です。甘楽さんや我間 風太はこのテストの情報を共有するその代わりに、グループトークに所属する生徒達を手足のように動かしていた。そして勉学に励む必要がないという余裕が生じた結果、彼らは学校内外で快楽に溺れました。その様子が先程の喫煙や飲酒、暴行、無免許運転などの犯罪行為であり、この映像が全てを物語っているのです。彼らは自分達の行いを自慢し、それを誇示する為にわざわざ動画まで作りグループトークで共有し合っていた。愚かですね、本当に」


 真紅の発言を聞いていた甘楽の協力者達は全てを諦めたかのように、その場で崩れるようにしゃがみ込む。甘楽達が終わったのと同時に自分達も破滅を迎えた事を理解していた。


「ですがここに一つの疑問が残ります。事の首謀者である甘楽さんは、どうやってテストの答えを入手していたか、です。本来なら決して外に漏れ出る事のないものが、ただの生徒である甘楽さんの手に渡っている異常事態。一体誰がそんな重要なものを流出させた、という点です」


 真紅は黒い笑みを浮かべながらステージの下へと視線を移す。そこは生徒達の集まるスペースではなく、教員達のいる体育館脇の――その先頭へと向けられていた。


「この学校ではその科目の先生達がそれぞれ作ったテストをとある一人の人物へと提出し、それを期日までに管理する立場の人間が存在します。そして甘楽さんが入手したテストの答えは全教科――1つの抜けもありませんでした。それはつまり」

 

 ゆっくりと真紅は指を差す。その先に立っていたのは、他でもない、この学校の運営責任者である校長の姿があった。


 彼は呆然と立ち尽くす。自分は何も知らない、そう言いたかったのだろう。


 しかし、もう遅かったのだ。真紅は既に見抜いていた。


「校長、あなたがやったのですね。甘楽さんにテストを流出させ、理事長からの調査をごまかし続けていた。外部からの調査すらも欺いた。それだけではなく甘楽さん達の異様な成績を疑問に思い、同時に授業態度を問題視していた教師達にも圧力をかけた。そうやってこの学園を自分の都合の良いように操っていたのではないですか?」


「そ、そんな事はしておらん! わしは……ただ、甘楽君やその周りが優秀な生徒だからと……!」

「ふふ、そうですか。ここまで来て愚かな人……今更何を言っても無駄ですよ。ねえ先生の皆さん」


 同意を求めるような真紅の言葉に、教師達も首を縦に降る。彼らは知っていたのだ。甘い蜜に溺れている生徒達がいる事を、そしてそれを見てみぬフリをしている間に、この学校の闇が大きくなっていた事に。


 甘楽達に良い点数を取らせる為だけに、校長は甘楽達が望んだものを与え続けた。その結果が今の堕落した生活なのだ。


 そして甘楽達のクラスの担任が声を上げる。


「黒曜さんの言うとおりだ。あのクラスの異常を声に上げようとした時……校長に止められた。口を挟めばどうなるかと脅された……教員としての人生を終わらせたくなければ……黙って見ていろ、と」


 担任の教師がそう声を上げた後だった。

 他の教師達も全く同じ事を口々に語り出す。


 校長はそれを止めようと必死に手を伸ばしていたが、理事長の一喝によってそれもむなしく散った。


「校長! お前の話は後で聞くとしよう! 我々が掲げた正しき理念を捻じ曲げるような悪行に加担したというのなら、どんな理由であれ責任を取ってもらうぞ!!」

「わ、わしはただ……甘楽君の将来を思って……」


「馬鹿者!! 高峰 甘楽を思うなら何故止めなかった!! 彼女がこれ以上堕ちていく前に止めるべきだった!! その結果がこれだ!!」

「ひぃ……っ!!」


 理事長は校長を捕らえるように指示を出す。他の教員達に囲まれて怯えるように肩を震わせるその姿には、生徒達の模範となるべき存在の面影など微塵もなかった。


 真紅と聖斗は連れて行かれる校長からゆっくりと甘楽達の方へと視線を戻す。


 そこには涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら泣きじゃくる甘楽と、顔を絶望に染めても諦める事無く警備員に取り押さえられながら暴れる我間の二人が居た。

 

「泣こうが喚こうが、あなた方がしてきた事は変わらない。あなた方は自分の欲望の為だけに多くの人を傷つけ利用し踏み台にしてきました。その結果がこれです、わたし達は決してあなたを許しはしない」

「そうだ、甘楽、我間。お前達はそれだけの事をした、学校のアイドルだって王子様だってちやほやされたい為だけに、たくさんの人の未来を奪った。その報いを受ける時が来たんだ」


 聖斗と真紅は泣きじゃくる甘楽と絶望する我間にすら容赦しない。いくら泣いてもいくら暴れても彼女達がやってきた事は許されるものではないのだ。


 しかし、甘楽は分かっていなかった。ここまで来て、まだ誰かが助けてくれると、自分は決して悪くないと、まるで自分が被害者かのように振る舞う。


「うあああああああああっ!!! いやぁあああああああ!!! ああああああ!!!」


 甘楽は叫びながらその場を逃げ出す。救いを求めるようにステージを降り、その場に集まる生徒達の前へと立って泣き叫んだ。


「わたしは悪くないいいいいいい!!! 騙されてるのおおおお!!! 助けてええええ!! 助けてよおおおおお!!! みんなああああおねがいいいいい!!! ねええええええたすけてえええええええええええ!」


 その断末魔を聞いても、彼女の協力者であったはずの生徒達も全員、もう彼女に手を差し伸べる事はなかった。


 そして向けられるのは敵意、悪意――それは彼女自身がこの学園で育ててきたもの。様々な悪行を積み重ねた事で多くの生徒達を巻き込んだ、その悪意に蝕まれた学園で肥大化し続けてきた心の闇が今度は自分自身に襲いかかる。


「まじかよ、全部ウソだったのかよ。テストの成績も、学校のアイドルっていう優しい性格とか、全部がよ!」

「緋根くんが強姦魔だって話もその前の人も……全部嘘だったのね」

「真紅さんが悪魔っていう話も嘘なんでしょ!! もうあなたの言う事なんて信じられないわ!」

「騙してたんだな、おれ達を。全部、全部がでたらめだったんだ!」

「許せねえ! 許せねえよ! このゴミクズが!!」

「死ね! クソ! クソビッチが! 消えちまえ!」

「お前なんて誰も必要としてねえんだよ!!」


 生徒達は甘楽に敵意と罵声を浴びせ続ける。

 甘楽はただひたすらに悲鳴を上げていた。


 甘楽は自分に味方がいない事を理解して、周囲の人々から逃げようとするも躓いて、そのまま床に転がった。起き上がる事も出来ないまま震えていた。そんな彼女にすら容赦なく、泣き喚く甘楽に向けて集まっていた生徒達は罵詈雑言をぶつけた。


 自分の育てた悪に最後は自分自身が餌食となる。その因果に飲み込まれていく。


 それが甘楽の迎えた学園生活での最後だった。


 聖斗と真紅の二人は壇上からその姿を見下ろす。

 互いの手を繋ぎながらその結末を見届けた。

 

 ――二人の徹底的で破滅的な復讐はこうして幕を下ろしたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 復讐完了お疲れ様でした。 [気になる点] ここまでやっている奴らなので管理エンコーとか校長の弱みを握る為にハニトラ籠絡あったんだろうけどその辺りはわざと濁しているのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ