表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1話完結のSS集  作者: 月夜
66/77

入れて

ジャンル:ホラー

 雨が降り、雲で星も月も隠れてしまっている夜。

 傘を差し歩いていると、電柱の側で一人の女性が立っている。


 その前を通り過ぎようとしたとき「入れて」と声をかけられる。

 そこで歩みを止め声のする方を見ると、長い髪の隙間から覗いた女性の目と合う。

 傘も差さずに立ち尽くした女性は全身びしょ濡れ。

 でも傘を貸してしまっては自分が濡れてしまう。


 どうしたらいいのか考えていると「入れて」とまた声がする。

 このままでは女性が風邪を引いてしまうと思い「いいですよ」と答えると、女はニーっと不気味な笑みを浮かべ姿を消した。




「その女性の入れてっていうのは、傘の中じゃなくてその人の中に入れてって意味だったの」


「つまり女性はその人に憑依したってこと?」




 誰もいない教室で、女生徒二人は怖い話で盛り上がっていた。

 作り話だったり、都市伝説だったり。

 夏にはやっぱり怖い話だよねということで、下校前に二人で盛り上がっていると、突然教室の扉が開いて二人の肩がビクッと跳ね上がる。


 視線を向ければ先生がいて「まだ残ってたのか。遅くなる前に帰れよー」と言われた二人は時計を見て慌てて教室を出た。




「この天気だと時間もわかんないよね」


「雨で空にはどんよりとした雲。まるでさっきの怖い話みたいな天気だもんね」




 そんな会話をしていると、片方の女生徒が声のトーンを下げ言う。

 実はあの話だけは作り話じゃなくて、ここ最近この地域だけで噂されている話だと。




「ちょっとー、そうやって怖がらせないでよ」


「あはは! ごめんごめん。ただの噂だけど、火のないところに煙は立たぬとか言うからねー」


「またそうやって脅かすー」




 笑いながら二人別れると、片方の女生徒が一人帰路を歩く途中、先程まで怖い話をしてたせいか少し怖くなりはじめた。


 取り敢えず遅くならないうちに帰ろうと早足になると「入れて」と声が聞こえ立ち止まる。

 まるで先程友達から聞いた話のようで、恐る恐る振り返ると、女生徒の後には小さな女の子がいた。


 ほっと胸をなでおろし周りを見るが、他に人はいない。

 遅くまで遊んでこんな時間になったんだろうか。




「入れて」




 再び繰り返す女の子の言葉に「いいよ」と笑みを浮かべ答える。

 小さな子をこのままにはできず、家まで送るだけならと思い傘の中に入れると「ありがとう」と女の子は笑みを浮かべた。


 その時ようやく気づく。

 今日は一日ずっと雨だった。

 こんな小さな子が一人で、親の迎えもなしに遊んでいるだろうか。


 時間を忘れて遊ぶということは、小さな子にはよくある事。

 だが、一日中雨が降っているのに傘を持っていないのは不自然。

 それにこの女の子の服は、雨で濡れているはずなのに全く濡れた様子がない。




「入れてくれてありがとう」




 女の子の姿が消えると、女生徒はニーっと笑みを浮かべ呟いた。



《完》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ