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4 お隣さんは真逆な二人?

「えっと、じゃあ二人は姉妹で一緒に暮らしてると……」


「うん、そーだよ」



「でも、昨日はその妹さんはいなかったですよね?」


「妹さんとかやめて、気持ち悪い」


と桑鶴さん(妹)からまたバッシングを受けた…。


じゃあなんて呼べば良いんだよ。ややこしいな。

と思ったが、怖いので声に出すのはやめておこう…。


「ちょっと、茜音ちゃん気持ち悪いは失礼だよ」


そう言って反論してくれた桑鶴さん(姉)はなんだか天使に見えてきた。



「じゃあ、私の事は結衣で、茜音ちゃんは茜音で良いんじゃない?」

「それで良いよね?茜音ちゃん?」


ええっ、いきなり名前呼び?と思わず心の声が漏れ出してしまいそうだった。


「……良いけど…学校では絶対にやめてね、反吐がでるから」


と茜音は冷たい目つきで言う。


何でこう茜音はいちいち怖い言い方をするのだろう……。


「そうそう、昨日はね茜音ちゃんは引っ越しの準備をしてたからまだ来てなかったの」


「あー、そう言う事ですか、ほんと驚きましたよ」


「じゃあ、お姉ちゃん私もう戻るから」


そう言って茜音は家に入っていった。



「大宮くんの事も栄斗くんって呼んで良い?」

「なんだか不公平だし」


「あ、はい。もちろん良いですよ」


名前呼びとかもはやご褒美じゃないか。やばい、ニヤニヤが止まらない。



「じゃあ、私もそろそろご飯の準備があるから帰るね」


結衣さんはそう言うと、ふと思い出したかのように僕に近付いて来た。


「茜音ちゃんの事なんだけど、あの子可愛いから色んな人が寄って来るだよね、でもああいうキツイ言い方するからすぐにみんな離れていくと思うの」


まぁ、あの様子だとそんな感じはするな。


「でもね、茜音ちゃん、根は優しい子なの。だからもし良かったら栄斗くんにあの子のフォローを頼みたいの…」


茜音が本当は優しいという事は信じ難いが、結衣さんの真剣な眼差しを見ると、何か事情がある事は伝わってくる。


まぁ、結衣さんからの頼みなので最初から答えは決まっていたが。


「はい。僕は全然良いですよ」

「高校生活ずっと一人っていうのは寂しいですからね」


「え、本当に?ありがとう栄斗くん」


「いえいえ、僕も友達は少ないので、茜音とも友達になれたらなと思うので」


「また、このお礼はいつかするね」


そう言って結衣さんは僕の隣の家に入っていった。



家に入ると、ニヤケが止まらない事に気付いた。まぁ、仕方ないよな。お礼とか言われたらなぁ…。お礼って何だろ。この日はそんなことでずっと頭がいっぱいだった。




今、僕は二人で登校している。ましてや、一真や一輝でもない。そう、茜音だ。


どうして、こんな事になったのかというと、時間は数分程前にさかのぼる。



朝起きて、準備をすまして外に出ると、同時に隣には茜音がいた。


ここまではまぁ、別に良かったのだが、ここで結衣さんが扉から顔を出した。


「あらあら、二人ったらいつの間に仲良くなったの?」


「お姉ちゃん、違う。偶々同時だっただけ」


「そうですよ、結衣さん」と言おうとしたのだが、昨日の事を思い出し、何も言えずなり行きで一緒に登校する事になったのだ。そのせいで茜音の目つきには冷たさが一段と増した気がするのは多分気のせいだろう…。


だから仕方なく、茜音の後ろを辿っている。


しかし、茜音も静かにしていれば結衣さん並みに顔立ちは良い。


そんなことを考えて後ろ姿をじっと見つめていると、



「ねぇ、ストーカー?通報して良い?」


茜音はスマホを右手に持ちながら言った。


「仕方ないだろ、方向が同じなんだから」


ありきたりな正論を言うと、茜音は後ろを見て、


「じゃあ、もっと離れて歩いて、気持ち悪い」


茜音は『気持ち悪い』が癖なのか?結衣さんにはトゲのない言い方をするのに…。あ、もしかして、茜音はシスコンなのか…。なんて言ったら、もう口も聞いてくれなさそうだな。


こうして、少し距離をとって学校に到着した。




午前の授業が終わり、昼休みになると予想通り茜音の周りには人が群がっていた。


まぁ、茜音も顔だけは良い方だしな。当然だろう。


「栄斗、お前桑鶴さん好きなのか?」


そう言って、声をかけて来たのは一真だ。


「いやいや、別に興味はないよ」


すぐさま否定する。


「じゃあ、何でじっと見つめてたんだよ」


そんなに見てたのか。自分でも気付かなかった。


「ボーッとしてただけだよ」



その頃、茜音の周りでは、


「桑鶴さん、一緒にご飯食べよ」

「あっ、絢香ずるいー」

「私も混ぜてー」


「あの、ごめん…。私ちょっとトイレ行くから…」


「そう、じゃまた今度ね」


「………」


そう言って茜音はその場を立ち去った。



「なんかさ桑鶴さんって何かに怯えてるっていうか…人を避けてる感じがあるよね」


そう言って僕と一真の所へ近づいてきたのは一輝だ。


一輝は人をよく見る事が出来ていると思う。何故なら、僕もなんだかそんな感じはしていたからだ。


「じゃあ、昼飯にするか」



昼ご飯を食べ終わっても、結局茜音は戻って来なかった。なんか気になるから探しに行くか。


そうして、席を立つと、


「栄斗、どっか行くのか?」


と一真が聞いてきた。


「ああ、ちょっとな」


「トイレか?」


「まぁ、そんなとこだ」


一輝と一瞬目が合った。


この様子だと一輝は察してるみたいだな。



校内を探しても見つからなかったので、外に出て探していると、桜木の陰に人影が見えた。


近づいてみると、そこには茜音がいた。


足音で誰かが来た事に気付くと、


「何ですか?まだ、ストーカーしていたのですか?」


と問いかけてきた。


「中々帰って来なかったから、探してただけだ。それと僕はストーカーじゃない」


「そうですか、では何故あなたは私を探しに来たのですか?」


「隣人だから」一瞬そう答えようかと思ったが、本音を言う事にした。


「それは…あか…桑鶴さんが女子に囲まれてた時、何かに怯えていた様に見えたから」

「もちろん根拠なんか無いし僕の勘違いかもしれない。でもなんだかほっとけなかった…」


って僕は何を言ってるんだ。こんな事言ったら、また、あの軽蔑した様な目で罵倒されるだけじゃ無いか…。




「…そう、………がと」




え?今『ありがと』って言った?


まさかね、そんなはずはないだろう。何かの聞き間違えだろう。


茜音は早足で教室に帰っていった。



僕はしばらく桜を眺めてから、その場を立ち去った。

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