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3 お隣さんと入学式

ジリジリジリジリジリジリジリジリ



四月二日、栄斗はアラームの音で目を覚ました。


「はぁぁ〜、まだ寝足りないなぁ」


中学の頃は陸上部で朝練は行っていたのだが、三年の受験期にもなると部活は引退したのでこんなに早起きするのは久しぶりだ。


それに昨日は色々あって寝付けなかったからな…。


「そろそろ準備するか」


と独り言を口にして、二十分ほどで身支度を済ませた。




念の為、少し早めに家を出発した栄斗は昨日確認した通学路を歩いていった。




栄斗の通う学校は神川高校と言って兵庫ではかなり大きい方の高校である。その為、クラスは十クラスもあり、クラスもスポーツクラスと普通科クラスの二つがある。因みに栄斗は普通科クラスである。スポーツクラスは運動に特化したカリキュラムなので、神川高校からは毎年全国大会出場者が多数いるほどだ。



三十分程歩いて神川高校に到着すると、大きな桜並木があった。オープンキャンパスに来た時は葉も茂っていなかったので、とても綺麗に見えた。


門周辺にはもう沢山の生徒が来ていたお陰で迷うことなく、体育館に到着した。




一時間程で入学式は終わり、今日はこの後体育館前の掲示板に張り出された紙を見て自分の教室に行き、ホームルームがあるらしい。


「えーっと、…大宮、おおみ…あった!」


僕のクラスは一組かぁ。なんか、自分の名前を見つけた時って微妙に嬉しいんだよな。


普通なら此処で知り合いの名前を探したりするものだが、栄斗の場合は地元からかなり遠いので、おそらく知り合いはいないのでその必要は無い。



そうして、栄斗は群衆から抜け出して、一人クラスに向かった。



教室に着くと、そこにはもう先客がいた。凛とした表情で席に座っている一人の女子生徒がいた。風になびく彼女の黒く艶のある髪は見惚れてしまうほどに美しかった。


ーーーーーあれ?



そこで栄斗はある事に気付く。


そこ、僕の席だよね?間違えたのかな?



考え込んでいると、彼女はこちらを睨んで問いかけてきた。


「そこの君。何じっと見つめてるの?自分の席が分からないのによく高校に入学出来たわね」


えぇ……口悪っ…。


予想以上に罵倒されたので、栄斗は少し狼狽えた。


今更、席が違うだなんてとても言いづらいな…。



「あのー、その席僕の席なんですけど……」


と、栄斗は覚悟して言った。



彼女は自分の席を確認した。


すると、段々彼女の顔は赤く染まっていった。


「うぅ、先程はすみません。私の不注意でした」


と彼女は下を向いて言った。


「いえいえ、別に大丈夫ですよ」

「気にしてないですし」


栄斗がそう言うと、彼女は落ち着きを取り戻し、自分の席に座って本を読み始めた。



その後は二人だけの教室は沈黙に包まれた。というか、彼女の話しかけないでくださいアピールが凄かったからね。流石に僕はそこまで肝を据えかねてないよ。



五分くらいすると、次々に人数が増え、しんとしていた教室も次第に騒がしくなってきた。




「これでホームルームは終わります」

「起立、気をつけ、礼」



何枚か書類が配られて、担任の織田先生の話を聞いてその日のホームルームは終わった。


栄斗が書類をカバンに詰め込んで帰ろうとしていると声をかけられた。


「俺は後ろの席の池田一真。宜しくな」



あまりにも唐突だったので、一瞬戸惑ったが、「僕は大宮栄斗、宜しく」と返しておいた。


なんか騒がしそうな奴だなと思っていると、


「なになにー、一真もう友達出来たの?」


と一真に声をかけたのは藤宮一輝らしい。


「あ、大宮君?栄斗って呼んでいい?」

「僕は一真の友達の藤宮一輝、一輝でいいからね」


「分かったよ。一輝、宜しく」


「おいおい、一輝お前だけせこいぞ」

「じゃあ、栄斗、俺の事も一真でよろすく」


何だよ、よろすくってそんなの使う奴なんて実際いたんだな。


「うん。宜しく、一真」

「二人は中学からの知り合いなんだね」


なんかこの二人はとっつきやすそうだな。いきなり妙に距離感が近い感じだ。



「まぁ、アレだな腐れ縁ってやつよ」


と一真はへらへらと笑った。


この二人は本当に仲が良いんだなと思った。そんな感じが良く伝わってくる。


「ところでさ、二人はなんで僕に話しかけてきてくれたの?」


と疑問を口にした。



「んー、なんつーか一人でいたから?かな」


確かに栄斗の周りにはもうグールプが出来ていた。多分中学からの知り合いが多いのだろう。


「僕は京都から来たからな、同じ中学の人がいないんだよ」



「「あー、なるほど」」


本当に息ピッタリだな、この二人は。



「栄斗、この後カラオケ行くけど行くか?」



「ごめん、今日は遠慮しとくよ」


大した用事はないが荷物整理が若干残っているので、断っておくことにした。嫌な事は後回しにはしたくないしな。


「なんだ、栄斗もう彼女出来たのか」


一真は少しからかうように聞いてきた。


「そんな訳ないだろ。僕はどれだけ手が早いんだよ」


少し桑鶴さんが頭に浮かんできたが、口に出すのはよしておこう…。


「そうだよ、一真いきなり何言ってんだ」


と一輝は一真の背中をバシバシと叩いている。


「じゃあ、僕はそろそろ帰るとするよ」


「おう、じゃあな」


「うん。じゃあ、一輝も」


「じゃあね、また明日、栄斗」


こうして、教室から出ると栄斗は行きし来た道を辿り、家に着くとばったり桑鶴さんと会った。


「大宮くん、お帰り」


と桑鶴さんは笑顔で言う。


やっぱり桑鶴さんの笑顔は可愛いなぁ。朝のあの子とは大違いだな。



「ただいま、です」


なんだ、「ただいま、です」って……。緊張して変な口調になってしまった。


「あっ、茜音ちゃんもお帰りー」



「……ただいま」



後ろを見るとそこには朝のあの子がいた。




えっ?何でここに?

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