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その16
その16
『ぼうごふく』は、フラッコに言いました。
ねえ、私が死んだら、食べてくれるかい?
空へと、運んでくれるかい?
娘のいるところに、いきたいんだが。
フラッコは、チョコレートをくれた、この気のいい『ぼうごふく』のことを嫌えません。
わかったよ、まずそうだけど、食ってやる。
『ぼうごふく』は、ありがとう!と言って、にこやかに笑いました。彼は、ずっと前から娘のところに行きたくて仕方がなかったようでした。
フラッコは……へそ曲がりなので、よろこばれると、腹が立つことがあります!
今もそうなのです。
あんたさあ、そんなに死んでしまいたいのかよ?
ああ、私には、もう、未練はないからね。
『ぼうごふく』はそう断言しました。
でも。
フラッコはカラスなので、いつものように首をかしげて、訊くのです。
……ほんとうに?
無言がかえってきました。『ぼうごふく』には、未練があるようですよ。