その12
その12
たいへんな話を聞いてしまいましたが、フラッコは気にしません。
ふーん、まあ、いつかみんな死ぬもんだよ。
長い話のあとに、なんだか落ち込んでいる『ぼうごふく』に、そう語りました。
『ぼうごふく』は、ちょっとおどろきました。
もっと、あわてるかと思った。きみは、自分の死が怖くないのかい??
怖くないことはありません。でも。
カラスはな、死んだやつをたべるんだ。死ぬってことを、誰よりもよくわかっている。オレたちほどに、死を味わっているものはいない。
だから、わかるんだ。
死ぬことが終わりじゃない。死体となって、オレやら、あの黄緑色にひかる毒のアリに食べられて、世界とひとつになるんだよ。
オレに食べられたら、空であそべる。
アリに食べられたら、大地でいつまでも寝てられるんだ。
地面のうえを、さみしそうにうろついている、ほんとうにくだらない命も、そうやって、素敵なところにいつか行く。そんなもんだ。
『ぼうごふく』はしばらく黙っていました。
そして、ゆっくりと言葉をつむぎます。
私の娘もね、けむりになって、空にとけたんだ。
そこは、素晴らしいところかな?
君たちの飛ぶ、この灰色の空は?
フラッコは笑いました。あまりにつまらない質問だったからです!
素晴らしくない空なんて、あるもんかよ!!