6 入学式の後
田中はすばらしい道具を作ります。
入学式は無事何事もなく終了した。
その後、入学生は教室に戻りロングホームルームを行い解散となるわけだ。
担任の事前連絡では明日は「自己紹介」「席替え」「学級委員決め」「学校案内」などがあるらしい。
よかった…。今日席替えがあったら席替えの細工を出来なかった本当によかった。
入学式も終わったので、さっさとずらかることにする。今日は主人公も何もしないで両親と真っ直ぐおうちに帰るはずだ。だからわたしもさっさと帰ることにした。
私は帰る途中にコンビニにより割り箸を買って来た。これからクラス全員36名分のクジを作るのだ。もちろん、細工をする。
今、私の机の上には、18膳の袋に入った割り箸とカッター、ボールペンそして、紙やすりが置いてある。
細工の仕方は、まず、割り箸を袋から出し、カッターを割り箸の間に挟み、割る。この時、微妙に左に寄ったり、右に寄ったりして割る。こうして、先の太い箸と細い箸に分かれることで、2種類の割り箸が出来る。さらにこの2種類の割り箸の内6本、計12本にヤスリをかける。これでクジの細工は終了である。怪しまれないにように、シンプル・イズ・ベストでいくのだ。
次に配置ついて考える。クラスには36名いる。縦6名横6名の配置になるわけだが、二種類の割り箸で、窓側と廊下側に分けることができる。そしてヤスリをかけた12本で3列目と4列目の区別をつけることができるようにするのだ。
基本的に被害が発生するのは、横、前後、ななめ横である。それ以外は”初めは”ほぼ大きな被害は受けない。つまり、主人公の隣に座らなければいいだけである。別に、主人公の隣の番号を見つけるような、そんな好きな女の子の隣に座るために努力をする男の子のようなことはしなくていいのだ。
この細工の重要な条件として、主人公が先にクジを引く必要がある。主人公は鎌将だから「カ」であり、私は谷口だから「タ」であるから、出席番号順であれば主人公が先に引くことになる。おそらく社会通念的にも、入学式の翌日という時期的にも、出席番号順にもなるだろうから大丈夫だろう。まあ私が学級委員長になれば鶴の一声でその通りにすれば確実だろう。
ところでこのクジには非常に大きな欠点がある。それは主人公が引いた後、私が引く順番が来るまでに主人公と反対側のクジを引き続けられた場合である。それと主人公が配置の真ん中を引いた場合だ。前者は確率的にもそれは少ないと思うが、後者はある確率が高い。両方同時に来たときその場合はマズいことになることは想定しておかなければならない。最悪、主人公の隣に座ることになるだろう。でもその時になったらその時と考えるしかない。
しかし近づかなかったら、その分主人公との接近が難しくなるから先生ルートが難しくなるかな?
…でもやつは今はボッチだし、こっちから積極的にアプローチをすればそんなこともないかな。
主人公との間合いを取りつつ良い席を選びたいが、さらに細工をするにしても、これ以上の細工は難しいし、なによりばれた時がマズい。かといってこれ以外の細工の仕方をシンプルに出来る方法を俺は知らないし、どっちにしろ鎌将が先に引く必要が出てくるから、鎌将のクジに細工をする方法もできないし…。
私は今までそんなことをしなければならないことに追い込まれたこともないし、行おうとも思わなかった。ある意味細工の仕方を知らないことは、自分が善良に生きてきた証拠でもあるが、こういうところで知恵が回らないのは非常に残念である。今更だが主人公と同じクラスになったことに、大きな不幸があることを感じつつ、そのことが今になって判ってきて、背中にはダラァと冷汗が出てきている。それに席替えは一年に一回だけではないのだ。数回あるのだ。どうしよう…。
…ま!なるようになるとしか言えないな!
あと前言撤回。もしかしたら、不登校になるかも…