4 入学式
入学式です!!
「聖………読めない…なんとか学園」
……知ってるか?この学校、私立じゃなくてこれでも公立校なんだぜ?文科省の指示にしたがっているわけだ。
私は満開の桜が咲く坂を上がった丘の上の学校の校門の前に立っている。家族連れが笑顔で校門の前で立って記念撮影をしていた。これからこの学校で起こることを全く予感させないほどの笑顔だ。
「まったく、こんなところに入学させなくったっていくらでも他に良い学校はあるだろうに、一高時代は終わったんだぞ…」
私は満面の笑顔をうかべる家族たちを見てそう悪態をつく。私はこんな物騒な学園に入りたくない。
だが、私がこの世界に来たのが、次の日が入学ということでもうどうしょうもなかった。世は高校全入時代だ。不登校になるのは世間体もそうだが、自分の「決めたこと」が許さなかった。でも一年後何処かの学校に編入を考えてみたい。幸い公立校だし、ここの学校は丘の上にあるだけのことはあって少し頭は良いので意外と上手くいくだろう。
「ほう…6クラスもある。…俺は2組か」
生徒玄関近くに貼られているクラスと座席番号を見て事前に渡された番号と見比べる。
4階らしい。クラスは二つの階に分けられていて1から3組が4階4から6組が3階となっている。今まで見てきた高校では、学年別に階が分かれているのにここはそうではなかった。
それなりに大きな高校だ。少子化のせいで学生が少なくなってきているのに6組もあるとは珍しい。
「さて、ここか。」
私がこの一年過ごすことになる教室まで来た。
一学年に6クラス。単純に6分の一の確率で主人公のいるクラスを引くわけだが…
…さて、吉と出るか凶と出るか…私は静かにドアを開ける。
まだ生徒は疎らだった。40人くらいが詰め込まれるこの教室に今いるのはざっと見て15人くらいか…。
後から入ったので後ろの髪型からしか判断できないが、今の時点では主人公と思しき髪型をしている学生は見当たらない。
私は主人公が見えないことにホッとしたが、主人公がクラスメートにならないことは、ホームルームが始まる8時45分まではまだわからない。もっと言うと先生が出席をとるまでわからないことなので、まだまだ、予断を許さない状態だ。
…そのホームルームまでまだ30分近くあるので、私は教室を離れこの校舎内を探検することにした。教室の中で主人公が来るか来ないか気揉んでもしょうがないし、そういった緊張に私は弱い。
ということで、隣のクラスの1組・3組と続く4階を主人公を探しながら見て回り、さらに一階下がって見てみることにした。
さてこの校舎を見て回る私だが、少し気になることがあった。さっきも考えた通り、普通の高等学校の場合、一学年をできるだけ一つにまとめるのが普通なのだ。そうした方が学年関係者が学生を管理しやすいとかの管理メリットからなのだが、この学校は、空き教室が学年を納める数があるのに何故か1階と2階にわけている。しかも空き教室はなぜか真新しい。なぜだろう…。エロゲーだからだろうか?
そんな探検をしているともうすぐホームルームの五分前だ。
時間はすぐにおとずれる。私は、教室に戻り自分の番号が張られた席に座った。学生の人数はさっきよりも増えているが、主人公の姿は無いようだ。
ホームルームの時間、このクラスの担任であろう人が前の入口から現れる。彼はこれから入学式が始まることと自分の自己紹介し、入学試験の時に撮影した学生の証明写真と座っている学生と名前を照らし合わせつつ、「何々君だね?」と確認する。教師は担任となったとき、クラスの学生の全ての名前と顔を一致させておかなければならないのだ。
私ももちろん担任に呼ばれる。「はい、そうです。」とは言いつつも心の中では否定をしつつ、本物の子だったら、どれほどの緊張と期待という体験ができただろうかとふと思う。だが一方で、ふとこれから一年間お世話になる机をみると、何ともいえない感情を覚える。
机についた浅い傷
机を支える白く加工された冷たい鉄
そして、学ランを着て眺めるクラスの様子
…全てが懐かしい。今も昔もあまり変わらんな。
机には造花で飾られ「入学祝い」と書かれたリボン記章が置いてある。式典で誰を祝うのか識別するため、入学生は全てこれを付けられて会場に行く。わたしも、知らない誰かに付けられた。
担任の指示のもと教師を出て廊下で並び、ほどなく式場へ歩き出した。
これから、入学式が行われる