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第68話
私はカルシラスト様の胸に顔を僅少うずめてから言った。
「カルシラスト様の幸せってなんですか? 私は……私は……今……」
彼は横を土煙をあげながら通りすぎる馬車に目もくれずこう口にした。
「言えません……言ってしまうと羽が生えて飛んでいきそうで……でも、言いたい……」
私は「苦しまないでください……私なんかの質問で……」と返す。
カルシラスト様は顔をあげ青空を一瞥した後、心ここにあらずといった様子でこう話した。
「すべては幻かもしれない……たんなる夢かもしれない……本当のところはどうなのだろうかと……毎晩悩みます……」
私は首をかしげ弱々しく小鹿のように震えるカルシラスト様にこう口にした。
「幻でもないよりはよくはありませんか? きっとそんなことにも些少は意味があるのではないかと……愚答でしょうか?」
カルシラスト様は目をパチパチさせ「そんなことは……」とぼそぼそ言った。




