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第163話
「いや、いけねえ! 王子様に金をもらったなんてバレたら俺が牢屋にぶちこまれちまう!」
カルシラスト様はにっこり微笑みこう口にした。
「そうならないよう役職のものに命じておきます。だからあの子のことは許してやってください」
「わ、わかりました。あなた様がそうおっしゃるなら……。なんとも奇特な方だ」
男は重そうな腹を引きずるようにしてじきょした。
私はカルシラスト様と手を繋いで歩きながらこう言う。
「お優しいんですね。感心しましたよ」
王子様は数学の難題でも解くかのような複雑な表情で石畳を蹴る。
私は慌てて「すみません。お気にさわりましたら謝罪します」と返す。
彼は目を閉じ「いえ……」と口ずさみこう続けた。