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ミクシードワールド ~神の作業帳~  作者: 早秋
第一章 回復アイテム
9/74

(6)指定外アイテム

 香草の乾燥を始めてから三日後の事。

 ようやく納得のいくレベルまで乾燥することが出来た。

 湖から戻ってきて確認をすると、いい感じじゃないか、という状態になっていたのだ。

 早速室内に入って、作成を始めた。

 当然薬草の成分が入ったりしないように、乳鉢はしっかりと洗浄済みだ。

 乾燥した香草の一つを、ゴリゴリと乳鉢を使ってすりつぶし始める。

 既に回復薬作りで慣れた作業とは言え、乾燥している物をすりつぶすのは初めてなので、慎重に行う。

「・・・・・・・・・・・・こんなもんか?」

 ある程度すりつぶしたところで、拠点の水を投入した。

「お・・・・・・おお!?」

 乾燥させる前は全く溶ける気配が無かったが、今度はきちんと水に溶け込んでいるようだった。

 香草の粉末が完全に溶けた状態になるのに、薬草と比べて多めの水が必要だったが、それでも見た目上は完全に溶けたように見える。

 出来た物を早速鑑定してみた。

 

 名称:ハーブ薬

 品質:E

 効果:精神安定剤。精神を落ち着ける作用がある。

    中毒性はないので、おすすめ。

    香料としても使える。

    原液を薄めて使おう。

    

「よっしゃー!」

 思わずガッツポーズをしてしまった。

 やはり自分で製法を見つけて、きちんと完成させると喜びも大きい。

 

 念の為、<神の作業帳>を確認してみたが、やはりと言うべきかハーブ薬は無かった。

 ただし、今までなかったページが、後ろの方に追加されていた。

「指定外アイテム?」

 今まであったページ以外に<指定外アイテム>というのが加わっていた。

 その項目の一番最初に、今回作ったハーブ薬のページが追加されていたのだ。

「指定されている物以外は、こっち側に表示されるってことか。・・・・・・って、ルフ。あまり近づけると鼻に付くぞ?」

 ハジメが<神の作業帳>を確認していると、ルフがハーブ薬を作った道具の匂いを、しきりに嗅いでいた。

 匂いが気になるのだろう。

 ハジメとしても、元の世界にいた時から、実は香水の香りと言うのはあまり好きとは言えなかった。

 あまり強い香りをさせているのを嗅いだ時は、胸焼けするような感じになった。

 そのハジメが、この世界に来てハーブ薬と言う名の香水を作ったのだから、人生何が起こるのか分からないものである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「さて、作ったはいいが、こいつらどうすべきか」

 乾燥できた香草は数種類あったため、その全てを調合した。

 結果その種類分の香水が出来たわけだが、作ったものをどうするかが悩みどころだった。

 ちなみに、作った分の香水(の原液)は、全て<神の作業帳>に記載されている。

 作った物は、全てクエストで消化できるようになればいいのだが、そうそう都合よくはいかないらしい。

 クエストを確認してみたが、ハーブ薬をはじめとして他の物もクエストとしては出ていなかった。

 かといってせっかく作ったものを捨ててしまうのも勿体ない。

 一応メニューを確認してみたが、<購買>では買うことは出来ても売る機能は無かった。

 しょうがないので、いずれ出来るであろう他のプレイヤーとの交流の時に売れるのを期待することにして、保存しておくことにした。

「と、なると保存方法が問題になるわけだが・・・・・・」

 一部屋しかないので、悩みようがないとも言える。

 結局、ケースのような物を購入して、その中に入れて保存しておくことにした。

 当然、直射日光が当たるようなことにはならないようにする。

 元々窓がない部屋なので、直射日光が当たることは無いのだが。

 

 いずれは販売できることを期待して、明日以降も移動中に気が付けば、香草類は採取しておくことにした。

 乾燥に時間がかかるので、さほど量は作れない。

 というか、作ったと事で売れるかどうかが分からないので、趣味の範囲にとどめておくことにした。

 次の日に分かったことなのだが、同じアイテムを作り続けているよりも、新しいアイテムを作ったほうが経験値の効率がいいことが分かった。

 ただし、あれもこれもと手を出すと訳が分からなくなる上に、管理するのも手間がかかるので、当初の予定通り当分の間は回復薬で稼ぐことにする。

 ・・・・・・つもりだったのだが、改めて<神の作業帳>を見ていて、報酬の面で気になるアイテムがあった。

 

 名称:魔力回復薬

 品質:E-~

 効果:その名の通り魔力を回復する薬。

    駆け出し魔法使い御用達アイテム。


 追加されたときに一度確認しているが、魔力を回復するアイテムだ。    

 今のところ調合するのに魔力を使うことは無いのだが、魔力付与がある以上、間違いなく魔力は使うことになる。

 というか、ステータスの魔力の伸びがすごいので使わないと無駄になってしまう。

 作るのに必要な材料は、普通の回復薬に魔力草を加えるらしい。

 割合は丁度半々で、魔力草1に対して、薬草1となっている。

 魔力回復薬の作成も次の目標としておいた。

 魔力回復薬は、クエストを見ると普通に出ていた上に、回復薬よりも報酬が良かったので、メインを魔力回復薬に移してもいいかもしれない。

 問題があるとすれば、魔力草が見つかるかどうかだろう。

 これに関しては、明日探すところから始まるので、何とも言えない。

 ちなみに、香草類を探していた時は、魔力草は無かったと思う。

 魔力草と言う分かり易い名前なので、見つけていれば採取していただろう。

 それが無かったという事は、魔力草が生えている場所は、薬草や香草とは別の所にあるのかもしれない。

 結論は保留にしておいて、あれば作成する方向で考えておいた。

 何より、まずは風呂を設置するのが第一目標なのだから。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 それから何日間かは、拠点と湖の間を往復する毎日だった。

 通り道で香草を見つければ採取しておいて、後ほど乾燥をさせる。

 湖に向かう道中のルフが、当然のように大活躍していた。

 湖までの道は、わざと一本道を使わずに、遠回りをしたりその日その日で違う場所を通るようにしている。

 香草もそうだが、魔力草が見つかればと思っての事だったのだが、残念ながら一度も魔力草を見つけることはできなかった。

 鑑定で色々見ていた感じでは、少なくとも湖周辺では魔力草は無いような感じだった。

 そうなると、湖周辺以外の場所で探してみるしかないのだろう。

 そんなことをやっているうちに、目標を達成することが出来た。

 

「よし、やったぜ!!」


 そう。

 遂に拠点に、念願の風呂を設置することが出来たのだ。

 石鹸とシャンプーは既に購入してある。

 一日の作業を終えて入る風呂は最高だった。

 久しぶりに入れたというのもあるのかもしれない。

 こうなってくると、今度は風呂上がりの一杯と言うのも楽しみたくなってくるが、流石にそれは贅沢が過ぎるだろう。

 とにかく目標の風呂が設置出来たので、次の目標を立てることにした。

 人間何か目標があれば、単調な作業も頑張れるのだ。

 まあ、もともとハジメ自身がそう言う単調作業が苦にならないというのも大きいのだろう。


「さて、どうしようかな?」

 次の目標を探してた時のこと。

 何気なく掲示板を見ていたのだが、ある情報が目に入ってきた。


 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

【職業】職業について語ろうぜ レベル3【レベル】


---------------------------(中略)---------------------------


224.名無しのヒューマン

>215

ということは、それぞれの種族でも出てくる職業が違うという事で・・・。

把握をするのはほぼ不可能ってこと?


225.名無しのヒューマン

その話、何度目だ?w

そもそも管理人が引っ張ってきた種族を元に、

バラバラに職業を与えているってのがもうほぼ確定事項だ。

それこそゲームのように、決められた職業から決めてるならともかく、

個人個人の資質で職業を出されたらまとめるなんて不可能だろうさ。


226.名無しのエルフ

エルフとヒューマンで、同じ弓使いに就いたとしても、

ステータスの伸びも全く違っているようだしな。


227.名無しのドワーフ

レベルアップだけではなく普段の行動でステータスが伸びてる。

職業だけにこだわるのは得策ではあるまい?

勿論、職業が重要であることは、間違いないが。


228.名無しのヒューマン

報告。

今朝、職業レベルが十になった。

そしたら、二人目のサポートキャラが解放されて、

交流の街というエリアも解放された。

交流の街は誰もいなかったがw


229.名無しのヴァンパイア

報告ありがとう。

どっちも重要な情報だね。


230.名無しの犬獣人

交流の街かー。

そこで、皆と会えるのかな?


231.名無しのヒューマン

だろうね。

俺としては、サポートキャラが気になるが。

今のままだと先の場所の攻略がつらい。


232.名無しのセイレーン

レベル十かあ。

まだ先の話だわ。


233.名無しのヒューマン

ぜひ頑張ってください!

そして交流の街で会いましょう!


 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「交流の街か」

 サポートキャラも重要な情報だが、今のハジメにとっては交流の街の情報の方が重要だった。

 何しろ、貯まる一方の香水が捌ける可能性があるのだ。

 どうせだったら女性に使ってもらいたいと思うのは、勘弁してほしい。

 ハジメは男なのだ。

 今はまだレベル十に達している者が少なくて、ほとんど街には人がいないようだが、ハジメがレベル十になるころには人数も増えているだろう。

 最速プレイを目指しているわけでもないので、やりたいようにやっているのだが、今回はそれがいい方向に向いたようだ。

 香水を持って行って興味を持ってくれる人がいればいいのだが、こればかりは実際に交渉してみないことには何とも言えない。

「・・・・・・あれ? そう言えば、購買に香水ってあったか?」

 購買にあるとすれば、色々予定が台無しになる。

 贅沢品の類だろうと探してみたが、そこに見たくはない物を見てしまった。

「・・・・・・・・・・・・あるのか」

 こんなところにまで行き届いてなくてもいいのにと、しばらくへこむハジメであった。

 

「ま、まあいいさ。購買のは、品質がさほど良いというわけでもないから、何とかなる!」

 取りえず、無理やり納得することにして、先の事を考え始めた。

 二人目のサポートキャラが仲間になるのも非常に魅力的なので、まずは職業レベル十を目指すことは決定している。

 問題はどうやってレベルを上げるかという事になる。

 ひたすら回復薬を作っていくだけでもレベルは上がるだろうが、最近はその伸びが悪いことも気づいていた。

 品質が高いものを作れれば、それも多少は改善するのだろうが、どうしてもCランクの壁は超えられないでいた。

 単に材料の品質が良くないので駄目なのか、それとも別の要素が必要なのかが全く分からない。

 品質を上げるのが駄目ならば、あとは新しい物を作っていくと言うことも考えてみた。

 <神の作業帳>には、既に新しいアイテムがいくつか記載されている。

 指定外アイテムではなく、正規|(?)の物だ。

 だがその全てが今まで見たことがない材料を必要としている。

 以前確認した付与魔法エンチャントを必要とする物もあるし、そもそも調合以外の技術を使っている物もある。

 元々いずれは作るつもりだから手を出すのは構わないのだが、問題はどこから手を付けるべきか、ということだ。

 どれを選択するにしろ、今開いているスキル枠が埋まってしまうことになる。

「うーん・・・・・・。取りあえず、明日は毒草辺りでも探してみるか」

 ここにきてハジメの優柔不断が発揮された。

 スキル枠を埋めるのではなく、新しいアイテムを探すことに決めたのだ。

 幸いにして、念願の風呂を手に入れたので、資金には余裕が出ている。

 一日程度稼げない日があったとしても問題ないのだ。

「折角だから、今まで行ってない方角のエリアで探してみるか」

 他にも今まで見たことのないアイテムを発見できるかもしれない。

 行き当たりばったりで予定を決めている気もしなくもないが、これはこれで必要なことと考えることにした。

 結局明日以降は、新しいエリアを探索することに決めて、この日は就寝するのであった。

明日は、9時と21時に二話上げます。

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