表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミクシードワールド ~神の作業帳~  作者: 早秋
第三章 全体イベント
44/74

(6)後始末

 全体イベントの失敗。

 その結果は、プレイヤーたちに大きな影響を与えた。

 敗戦のペナルティとして与えられたのが、交流の街が一週間の閉鎖されるというものだったのだからそれも当然だ。

 <購買>で売られている品物では、戦闘組はまともな攻略が出来ない。

 何しろ売られている消耗品の全てが、最低ランクの物しかないのだ。

 プレイヤー同士の取引が出来るシステムがあれば、と嘆かれていたが、いくら嘆いても無い物は無い。

 戦闘組は、戦闘の腕が鈍らないように細々と攻略を進めるしかないようだった。

 全体イベント前に第三段階を突破したプレイヤーで、街の手前あたりに簡易拠点を作っていた者達は、これを機に町に入り浸りしていたようだった。

 <購買>よりもましな消耗品が売られている所もあるらしく、そこで何とかやりくりをして活動していた。

 

 一方の生産組は、自前のエリアだけで賄える物を作るのが厳しいという声が聞こえていた。

 ランクの高い製品ほど、自前のエリアで採取できる材料だけを用意するのが難しいのだ。

 結果として、高ランクアイテムが作れず、レベルアップの速度にも影響が出ていた。

 中には、銀だけで装備を作ってやったぜ、という報告も上がったりしていたが、あくまでネタでしかない。

 実際に銀だけで作られた装備など、使いづらくて売れないだろう。

 何しろさやから刀身、柄まですべて銀なのだから、芸術品としての価値は出たとしても実用にはならないのだ。

 

 そう言う意味では、畑で回復薬を自前出来るハジメは、まだ恵まれていた方だろう。

 ただし、回復薬はともかくとして、高回復薬には大体五日程度の使用期限がある。

 前もって大量に備蓄が出来ない弱点があるため、夜に生産を行い昼は攻略に出ることにした。

 とはいえ、回復に関しては、薬があるのでどうにかできるとしても、装備品の手入れなどは簡単には出来ない。

 頻繁に鍛冶師に出す必要はないとはいえ、定期的な点検は必要なのだ。

 まあ、一週間程度であれば、何とかなるだろうという事で、日帰りでの攻略を進めた。

 結界石と転移石を組み合わせれば、日帰りの攻略も不可能ではない。

 一晩置きっぱなしで放置できないという転移石の弱点は、結界石で解決できているのだ。

 

 日帰りで攻略を進めたのは、結界石での簡易拠点の設置だ。

 全体イベントのペナルティが解けた後、五人で第一エリアの第三段階の攻略を進めるつもりなのだ。

 折角、生産もままならない状況なので、空いた時間を使うことにした。

 結果として第三段階に入ったと思われる場所に、簡易拠点を作ることが出来た。

 途中に設置した簡易拠点は残していないので、本拠点から自由に転移することが出来る簡易拠点はノームの集落と合わせて二か所という事になるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 二つ目の簡易拠点を設置してから本拠点へと戻って来た。

 台所ではイリスとエイヤが食事の用意をしている。

 明日には交流の街が解放されるはずなので、ハジメはパティの店に持っていく回復薬を用意していた。

 その合間を縫って、バネッサが話しかけて来た。

「拠点の場所は、あそこでよかったの?」

「ああ。下手に奥まで行って、イベントが進むのも嫌だしな」

「慎重なのね。いっそのこと進めてしまっても良かったと思うけど?」

 こと戦闘となると、イケイケ状態になるバネッサに、ハジメは首を振った。

「いや。別に焦る必要はないからな」

「そう」

 バネッサとしても特に反対だったわけではないので、素直に頷いた。

 

「第三エリアを通過したとして、町はどんな様子なのかしらね?」

「さてな。個人個人で様子が違っているみたいだから、行ってみないと分からないだろう」

「そうね。早く見てみたいわ」

 既に第三エリアを超えているプレイヤーはそれなりの数になっているが、どれとして同じ町だったことはない。

 あくまで推測だが、世界自体が違っている可能性も考えられている。

 ハジメにしてみれば、むしろ同じ世界だと考える方が違和感があるのだが。

 もし同じ世界であるとすれば、わざわざプレイヤーの拠点を一つ一つ分ける必要が感じられない。

 最初から交流の街にプレイヤーの拠点を置いてしまえばいいだろう。

 そうしていないという事は、交流の街を除いたエリアが、それぞれ違った世界に繋がっているためだと考えているのである。

 

「バネッサは、早く町に行ってみたいのか?」

「あら? ハジメは違うの?」

「どうかな? 余計なトラブルに巻き込まれることも考えられるからな」

 現に掲示板ではそうした報告も上がっている。

 装備している武器防具が町に存在している物よりも強力であるため目を付けられた、などだ。

 今のところプレイヤーの方が強いために大事に至ったケースはないが、場合によってはそういう事もあり得るだろう。

 用心することに越したことは無い。

 ちなみに、事戦闘になるとイケイケになるバネッサであるが、普段はどちらかというと慎重と言って良い。

 スイッチの切り替えがはっきりしているのである。

「そうねえ。そう言う意味では、ハジメが作っている回復薬とかも下手に出さない方が良いかもしれないわね」

「そうだな。まあ、いずれにせよ、そうしたことはきちんと調査をした方が良い」

「そうね」

 いまだ発見すらしていない町の事なので、全てが推測でしかないのである。


 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ハジメがサポートキャラ達と攻略を進めている間に、掲示板でも大きな動きがあった。

 今回の全体イベントの結果を受けて、ギルド結成の動きが加速したのだ。

 今まで交流の街は、単に経済活動をする場だった。

 だが、全体イベントが発生したために、全体で守って行かなくてはならない場所になってしまった。

 今回はリーダーを選出して何とか連携を維持したが、それだけでは駄目だという結論になったのである。

 ギルド内で連携を高めた上で、守備隊長と連絡を取り合うようにした方がいいという話だ。

 守備隊長とは、今回リーダーを務めた者達のことだ。

 ちなみに、全体イベントは今回の一回だけではないかという意見も出たが、一蹴された。

 一回だけならわざわざ報酬を用意するはずがない、というのが根拠になっている。

 いささか根拠としては薄い気がするが、ハジメとしても一回だけで終わると思っていないので、今後の展開を待てばいいと思っている。

 

 戦闘組の動きに対して、生産組の動きはさほど活発とはいえない。

 これは、ギルド結成の動きが無いというわけではなく、もともと商人たちを中心に物流の流れというのが出来ていたためだ。

 既にあった流通のまとまりでギルドを作ろうという話になっているのである。

 今回の全体イベントで選出された四人の代表が、そのまま普段の生産組の力関係を示しているので、その関係がそのままギルドの結成という事になっている。

 勿論、出来るギルドが四つしかないというわけではないが。

 

「ハジメ様は、どうされるのですか?」

 他のメンバーと共に、掲示板を確認していたイリスが聞いてきた。

 掲示板では、既に名が知られているハジメがどのように動くのか注目されていたりもする。

 当然ハジメだけではなく、生産組のトッププレイヤーは同じように注目されているのだが。

 代表的なプレイヤーは、今回のイベントで生産組リーダーの一人に選ばれたヤーコブだろう。

「どうもしないさ。大半が予想している通り、パティのギルドに入るさ」

 既にハジメはパティからギルドに入らないかと打診を受けている。

 返事はまだしていないが、断るつもりもない。

 単に、エリア攻略に時間が取られたので、返事が出来なかっただけなのだ。

 

 ハジメの返事を聞いたバネッサが、肩をすくめて言って来た。

「もう。決めているんだったら、すぐに返事をした方が良いと思うわよ? 多分、返事が来なくて焦れているから」

 最後の言葉は小さくてハジメには聞こえなかった。

 だが、バネッサはイリスの肩口から覗き込むようにモニターを見ていたために、イリスにはしっかり聞こえたらしくコクコクと頷いていた。

「そうか? 交流の街の閉鎖が解かれてからでもいいと思ったんだが?」

 何気なくハジメがそう言うと、サポートキャラ三人の目が吊り上がった。

「「「駄目です(だよ)!」」」

 その迫力に押されて、結局ハジメはすぐにパティへの返事を書くことになった。

 ついでに、その返信では、エリア攻略をしていたために返事が遅れたことをしっかりとお詫びさせられることになるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そして交流の街解禁日。

 交流の街への開放が今か今かと待たれる中で、運営から更なる情報が投下された。

 それは、二回目の全体イベントの告知だった。

 次の全体イベントは、一か月プラス三週間だ。

 本来であれば、交流の街への閉鎖が無ければ、二か月ごとに全体イベントが行われていたのだろう。

 第二回の全体イベントの内容は、前回と同じ。

 第一回が失敗してしまったので、二回目に同じ物を用意するとお知らせされた。

 

 掲示板を覗くのはそこそこにして、ハジメはすぐに在庫を持って交流の街へと赴いた。

 事前に掲示板で、戦闘組は後になるように話し合われていたのだ。

 すぐに戦闘組が交流の街に行ったとしても、露店や店を持っている者達はすぐに在庫を用意できるわけではない。

 そのため、生産職が在庫を持って行き、準備をする時間を設けたのである。

 そんな取り決めを無視してさっさと買いに走る者は、生産組は今後の取引に応じないとまで厳しく取り決められた。

 消耗品が早く欲しいのは、誰でも同じなのだ。

 

「やっと来た! 早く商品出してな!」

 店に入るなり、パティの声が飛んできた。

 そのパティ本人は、一瞬だけハジメに視線を向けてあとは忙しそうに商品を整理している。

 一週間も店を空けてしまったために、このまま商品として出せる物とそうでなものを分けているのだ。

 さらに、店の中にはハジメ以外に店に商品を卸しに来た生産職の皆が待機していた。

 パティの様子がいつもよりせっぱつまった感じなのは、戦闘組が来るまでに時間が足りないためだろう。

 店の外は既に露店が並び始めているが、きちんとした店舗を持っていて面積が広いパティは商品の整理に時間がかかるのだ。

 

 パティの店では、ハジメだけではなく他の生産者も品物を卸している。

 彼らも参加して、店への陳列が続けられた。

 ハジメも作った消耗品を裏の在庫置場に自ら運んだりしていた。

 一緒に来ていたイリスは、農産物の在庫を一階の店に直接運んでいる。

 この一週間で駄目になってしまった食材もあるだろうから、その補充のためだ。

 

 そんなことをしていて、ようやく落ち着いたのか、自分の分の納品は終わって休んできたハジメの元に、パティが近づいてきた。

「何とか間に合うて、よかったわ」

「ああ。そうだな」

 店内を見渡すと、既に落ち着きを取り戻してお客を受け入れる態勢になっている。

「といっても、ここからが勝負だろうが」

「わかっとるわ」

 戦闘組はもうすぐやってくる。

 そうすれば、今まで切らしてた消耗品を求めて押し寄せてくることは間違いない。

「回復薬系を多めに作ってもらって助かったわ」

「それくらいは協力するさ」

 

 ハジメとしても、攻略を進めながら後半は回復薬の作成時間を大目に取って、いつもより多く作成していたのだ。

 間違いなく売れることがわかっている物を作らないのは、商機を逃すことになる。

 それに、消耗品が多く出ていくのは、最初のうちだけですぐにいつもの落ち着きを取り戻すだろう。

「それにしても・・・・・・。掲示板でも出ていたが、作り置きできる回復薬の作成は必須だな」

「できるん?!」

 ハジメの呟きに、パティが目を輝かせて聞いてきた。

 周囲を見ると、他のプレイヤーたちも期待して見ている。

「正直なところ、分からんというのが答えだな」

 ハジメは、首を左右に振った。

 その答えに、周囲にいた者達もため息を吐いた。

 

 長期間の作り置きが出来るようになれば、今回の全体イベントのように消耗品の在庫切れという事は起こらなかったはずだ。

 掲示板上では、回復薬が無くなっただけではなく、戦闘組の戦闘の仕方がまずかったという意見も出ているが、そこはそれ。

 生産者にしてみれば、求められる商品を開発するのが本筋だろう。

 出来ることなら、今のように4、5日で効果が薄まってしまう物ではなく、ひと月以上持ってほしいというのが望ましい。

 そうなれば、全体イベントに向けて備蓄することも容易になる。

 本格的に長期保存できる回復薬の作成に取り組み事を考え始めるハジメなのであった。

※今回でエイヤの職業がマスターになっていますが、転職は次の本編で行います。


--------------------------------------------------


 名前:ハジメ

 種族:ヒューマン(人間)

 職業:上級作成師ハイクリエイターLV30(2up)

 体力 :3727(+100)

 魔力 :6039(+160)

 力  :350(+16)

 素早さ:439(+21)

 器用 :894(+42)

 知力 :561(+26)

 精神力:727(+30)

 運  :20

 スキル:調合LV20(1up→master!)、魔力付与LV18、鑑定LV16、俊敏LV9(1up)、短剣術LV8(1up)、風魔法LV9(1up)、地魔法LV8、水魔法LV8(1up)、火魔法LV8、収納LV15(1up)、宝石加工LV11、装飾作成LV10(1up)、光魔法LV10(1up)、闇魔法LV9(1up)、錬金術LV9(1up)、空き×6(1up)

 職業スキル:短縮作成

 

 名前:ルフ

 種族:フェンリル

 職業:魔狼LV12(3up)

 体力 :7527(+390)

 魔力 :2892(+210)

 力  :779(+60)

 素早さ:443(+36)

 器用 :226(+19)

 知力 :234(+21)

 精神力:266(+22)

 運  :10

 スキル:牙撃LV13、激爪LV9(1up)、威圧LV15(1up)、俊敏LV15、気配察知LV15(1up)、収納LV13、火魔法LV13(1up)、魔力操作LV13(1up)、報酬LV14、体当たりLV12、水魔法LV12(1up)、空き×5(1up)

 職業スキル:遠吠え

 固有スキル:鋭敏な鼻

 

 名前:イリス

 種族:牛獣人

 職業:農婦ファーマー(一人前)LV39(1up)

 体力 :4806(+82)

 魔力 :2683(+50)

 力  :337(+10)

 素早さ:148(+6)

 器用 :393(+14)

 知力 :205(+8)

 精神力:287(+12)

 運  :10

 スキル:栽培LV20(master!)、料理LV15、棍棒術LV8(1up)、怪力LV15(1up)、採取LV18(1up)、成長促進LV16(1up)、水魔法LV14(1up)、採掘LV9(1up)、地魔法LV14(1up)、収納LV12、収穫LV12(1up)、空き×4

 職業スキル:種子作成

 固有スキル:緑の手

 

 名前:バネッサ

 種族:アマゾネス

 職業:戦乙女LV14(3up)

 体力 :5393(+361)

 魔力 :2869(+240)

 力  :486(+46)

 素早さ:354(+38)

 器用 :277(+30)

 知力 :332(+35)

 精神力:231(+30)

 運  :10

 スキル:剣術LV19(1up)、槍術LV14(1up)、弓術LV14(1up)、体術LV16(1up)、火魔法LV11(1up)、風魔法LV11(1up)、魔力操作LV14(1up)、収納LV12、解体LV10、鷹の眼LV11(1up)、空き×3

 

 名前:エイヤ

 種族:ダークエルフ

 職業:魔法使いLV30(2up→master!)

 体力 :751(+40)

 魔力 :2801(+162)

 力  :150(+10)

 素早さ:183(+13)

 器用 :251(+16)

 知力 :328(+22)

 精神力:219(+15)

 運  :10

 スキル:火魔法LV18(1up)、風魔法LV18(1up)、精霊術LV19(1up)、魔力操作LV19(1up)、料理LV10(1up)、精霊魔具作成LV5(1up)、空き×5(1up)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ