(13)二つの重要な話
※次回更新は、2/2の21時です。
ハジメがノームと遭遇してから数日後。
アルノーに結界石を渡してから十日程たった交流の街は、ある噂でもちきりだった。
その噂とは、ついに第一エリアの第三段階がクリアされたという話だ。
ハジメも既に掲示板で情報を得ていたので、交流の街でその話を聞いても新たに驚くことは無かった。
掲示板を見た時は、驚いたが。
第三段階が攻略された後の第一エリアは、どういう世界になっているのか気になるが、その話が出てくるのはもう少し先の話だろう。
あわよくば、ベンノから直接話を聞ければと考えているが、上手く会えるかどうか分からない。
その話もそうだが、今日は先日ノームの集落から持ってきた<時の砂>を加工した<時の粉>がようやく売れるレベルになったので、持ってきている。
ハジメはイリスを伴って、噂で騒がしい道を通ってパティの店へと向かった。
パティの店に入ると、店主以外に二人の人物がハジメを待っていた。
一人はアルノーで、もう一人はたまに水晶を堀りに来ているベンノだった。
「なんだ? 二人揃って」
「いや。儂らが揃ったのは、偶然だ。偶々店の外で会ったらアルノーもハジメに用があると言うから一緒に来ただけだ」
「そうなのか?」
「ああ」
ハジメの確認に、アルノーも頷いた。
「そうか。それで? 用事というのはなんだ? っと、その前にこの店で話してていいのか?」
「構わへん。というより、アルノーの用事はともかく、ベンノはうちも噛んどるからな」
「そうなのか?」
「そうだな」
今度は、ハジメの確認にベンノが頷いた。
「・・・・・・で? どっちから話を聞いたらいいんだ?」
「俺からだろうな。そっちは話が長そうだ」
「ああ。儂もそれで構わんよ」
ハジメが来る前に少しだけ話をしていたのか、ハジメが何かを言う前にさっさと二人で決めてしまった。
何の話かさっぱり分からないハジメとしては、意見を言う立場にはない。
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「俺の話は、報告と感謝だな」
「感謝?」
唐突なアルノーの言葉に、ハジメは首を傾げた。
報告は、第三段階をクリアしたことだという事は予想が出来る。
「お前が作ってくれた結界石が無ければ、まず間違いなくクリアは出来なかった。レベルが上がっていれば別だったんだろうが、時間はかかっただろうな」
「ああ、なるほど」
「そう言う意味での報告と感謝ということだ」
「いや、まあ、俺としては、作った物が役に立ったのであれば、嬉しいな」
面と向かって言われるとどうしても照れが来てしまうハジメである。
こういう事がさらりと出来てしまう所が、アルノーの人気を押し上げているのかもしれない。
「メインの用事はこれだけで、後は雑談だな」
「雑談?」
「ああ。第三段階をクリアした後どうなるのか知りたくはないか?」
その言葉に、パティが反応した。
「知りたい! むっちゃ、知りたいでー」
「・・・・・・だ、そうだ。勿論、俺も知りたいな。だが、良いのか?」
パティの反応に苦笑したハジメだったが、勿論知りたい情報なのは間違いない。
傍で聞いていたベンノも当然のように興味を示していた。
本当の意味で最先端の情報だ。
軽々しく話していいのかという意味で、ハジメは聞いていた。
「ああ。元々掲示板に載せる予定だったからな。これに関しては、特に秘匿する予定はない」
アルノーとしては、結界石というアイテムが出てきた以上、いずれは他に第三段階をクリアする者も出てくるだろうと考えている。
だとすれば、情報を秘匿する意味などないのだ。
例え優位に立てるとしても数日程度だと予想している。
だとすれば、さっさと掲示板で情報を共有して差異を比べた方がいいのである。
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「エリアボスを倒した後に、今まで進めなかった先のエリアに行ってみたんだが、当然先には進めた」
「おおー! それで、それで!?」
「・・・・・・パティ。少しは落ち着け」
「落ち着けるわけないやん! 新しいエリアの話やで!」
興奮しているパティに、アルノーは苦笑しつつ話を続けた。
「それで、進んだ先だが・・・・・・・・・・・・町らしきものがあった」
アルノーがそう言うと、ちょっとした間が出来た。
つい先程まで興奮していたパティも息を飲んでいる。
「・・・・・・本当にその話、ここでしていいのか?」
予想外の重要な情報に、ハジメが改めて確認をとった。
「構わん。俺たちも街の中までは入らずに引き返して来たからな。本当ならすぐにでも情報を載せようと思ったんだが・・・・・・」
苦笑するアルノーに、ハジメたちも事情を察した。
第三段階をクリアしたと言うだけで、これだけ盛り上がっているのだ。
町が出て来たという話まで出ると、どんな騒動になるかわからない。
敢えて時間を置くつもりなのだろう。
同時に、情報を秘匿するつもりはないという意味もよくわかった。
「その町に住人がいるとして、問題はプレイヤーにとって敵対しているのか、そうでないのか、ということか」
ハジメの言葉に、アルノーも重々しく頷いた。
「そうだ。特に俺のような獣人は、迫害している世界もあると聞いた」
「・・・・・・そうやねえ」
パティが寂しそうに頷いたのが印象的だった。
「まあ、そういうわけで、迂闊には近づけなかったわけだが・・・・・・」
「どちらにせよ、近づくしかないわけか」
「そういうことだ」
結局のところ誰かが近づいて情報を仕入れないことにはどういう存在かも分からないのだ。
それに関しては、どのプレイヤーも同じく最初は賭けになってしまうだろう。
さらに言えば、あるプレイヤーが見つけた町が敵対的でなかったとしても、別のプレイヤーが同じであるとは限らない。
「なるほど。秘匿する意味がないと言うのもよくわかるな」
話を聞いていたベンノが、重々しく頷いていた。
「最初から暗い方向で考える必要もないだろう。要は、その可能性があると思っていればいいだけだ」
ハジメがそう言うと、一同が同意するように頷いた。
「俺の話としてはこれくらいだな。ああ、そうだ。エリアボスは一度倒すと二度と出てこないようだ。まだ検証は必要だが」
それはそれで重要な話なのだが、いかんせんその前の話が大きすぎて、いまいちインパクトに欠けるのはしょうがないだろう。
「パティ、素材を買い取ってもらえるか?」
「えっ!? ええのか?」
「構わん。ハジメと引き合わせてくれた礼だ」
「ふむ。儂もその素材には興味があるな。見ていいのか?」
何しろエリアボスは情報としては出ているが、今まで討伐出来た者はいなかったのだ。
その素材が注目されるのは当然の事だった。
「無論だ。もし出来るのであれば、その素材から何か作ってくれると助かるな」
「それは、こちらとしても願ってもないことだ」
素材を見てもいないのに、契約が成立してしまったらしい。
その様子を見て、ハジメとパティは顔を見合わせて苦笑した。
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エリアボスの素材は持ってきていないという事で、鑑定と交渉は後回しになったため、先にベンノの要件を済ませることになった。
「それで? ベンノは何の用だ?」
「ああ。・・・・・・まずは、これを見てくれないか?」
ベンノはそう言って一本の剣を取り出した。
「? ただの剣に見えるが? ・・・・・・ああ、基礎エンチャントはしっかりしているな。これから効果エンチャントをかけるのか?」
ハジメの答えに、ベンノがニヤリと笑った。
基礎エンチャントというのは、素材そのものにエンチャントを施すもので、これが無いと効果エンチャントを乗せることが出来ない。
効果エンチャントというのは、例えば重量十パーセント削減とか言った、実際の効果を乗せるエンチャントの事だ。
武器にしても防具にしても、エンチャントのついた物は、どちらも重要になってくるものだ。
「なんだ? 基礎エンチャントとか効果エンチャントというのは?」
興味を持ったのか、アルノーが口を挟んできた。
そのアルノーに、ベンノが説明をした。
ついでに、その説明を聞いたパティが納得したように頷いている。
「なるほどな。そういう事になっとるんや」
「なんだ。パティも知らなかったのか?」
「無茶言わんといて。うちは商人であって、技術者やないんやで?」
「それはそうだな」
今度は、パティの説明にアルノーが頷いた。
「それで? この剣がどうかしたのか?」
「うむ。お主だったらこの剣にどんな効果エンチャントを乗せる?」
突然の質問に、ハジメは目をぱちくりさせた後で、改めて剣を見なおした。
「そうだな・・・・・・」
そう言ってから剣に集中しだしたハジメだったが、しばらくしてから顔を上げた。
「細身の剣でわざわざ重量も軽く作っているようだから、重量削減か速度上昇あたりかな? あとは攻撃を補佐する意味で何かの属性のエンチャントをするくらいか」
ハジメが出した結論に、ベンノが満足したような表情になった。
「合格だ」
「? どういうことだ?」
ハジメはベンノの言葉に分からずに首を傾げたが、パティは分かったのかニンマリと笑っていた。
「ほらな。言った通りやん」
「そうだな」
不思議がるハジメを余所に、パティとベンノの二人で分かりあっていた。
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「・・・・・・で? どういう事なんだ?」
「何。これから儂が打つエンチャント武器には、全てハジメが効果エンチャントをしてみないか、という話だ」
「・・・・・・は?」
ベンノの言葉に、ハジメが面食らった表情になった。
基本的に武器の作成というのは、エンチャントも含めて全てを武器職人が行うことになる。
ハジメにしてもエンチャントを別の職人に任せるという話は聞いたことが無かった。
「武器職人が一から十全てを賄うというのを否定はしないが、儂はどうにも不器用なようでな。あれもこれもと手出しが出来ないんだよ」
要するにベンノとしては、武器や防具を作成する際に付与する基礎エンチャントだけに手を出して、効果エンチャントは別の者に任せたかったらしい。
「そうすれば、素材加工に集中が出来るからな。安心して腕を伸ばせる」
「なるほどな」
ベンノの説明を聞いて、ようやくハジメも話の流れがわかって来た。
要するに、効果エンチャントの部分はハジメに任せてしまって、その前の基礎部分を自分で手掛けたいという事なのだ。
「だが、いいのか?」
ハジメとしてはエンチャントの技能が上がるので願ったりなのだが、ベンノにとってはそうではない。
「うむ。さっきも言った通り、儂は今のところ基礎エンチャントと素材加工に集中したい」
「そういう事なら、有難く受けさせてもらおう」
ベンノの言葉に納得できる部分があったので、ハジメも最後は頷いた。
「それはいいのだが、どういう取引になるんだ?」
「ああ、それは・・・・・・」
「はいはーい。そこで、うちの出番となるわけや!」
ベンノが説明しようとしたところで、パティが割り込んできた。
「基本的にはうちが間に入るけど、手数料とかは取らへんで」
「いいのか? それだと儲けが無いことになるが?」
「かまわへん。代わりに優先的にうち用の装備を打ってくれることになっとるのよ」
「ああ、そういう事か」
ベンノが装備を卸している先は、パティのところだけではないのだ。
「後問題があるとすれば、失敗した時の事だが・・・・・・」
「ああ、それなら問題ない。装備に関しては、エンチャントを失敗してもあくまでエンチャントが出来なくなるだけだ。そのものが壊れたりとかはないぞ?」
「そうなのか?」
「ああ。何度かやってるからな。間違いない」
それはハジメとしては貴重な情報だった。
エンチャントが失敗したことによって装備そのものが失われてしまえば、負担がかなり大きくなる。
だが、失敗しても装備そのものが残るのであれば、そのままの状態で売ることも可能なのだ。
また、そうであるからこそ、ベンノも今回の取引を持ってきたのだろう。
「他には・・・・・・」
最終的にハジメは、今回の話を受けることにした。
はっきり言えば、メリットしかなかったからだ。
目に見えるデメリットとしては、作成する物が多くなりすぎて時間が足りなくなるくらいだろう。
ハジメとしても装備品に掛けるエンチャントは、出来ることなら成長させておきたかったのだ。
その他のエンチャントとステータスなどが分けられているわけではないが、エンチャントの技術を伸ばすには避けて通ることは出来ない分野だった。
基礎の部分を鍛冶師であるベンノが担当してくれるのであれば、その部分の手間が省くことができるのだ。
ハジメにとっては、今回の取引は非常にいい取引といえるのであった。
ちなみに、ノームの里で手に入れることができた時の砂と氷炎水晶に、鍛冶師であるベンノが興味を示したこともハジメにとっては収穫であった。
名前:ハジメ
種族:ヒューマン(人間)
職業:上級作成師LV14(2up)
体力 :2911(+103)
魔力 :4734(+241)
力 :216(+17)
素早さ:276(+20)
器用 :560(+43)
知力 :350(+27)
精神力:379(+46)
運 :19(+1)
スキル:調合LV14(1up)、魔力付与LV13(1up)、鑑定LV11、俊敏LV8、短剣術LV7、風魔法LV7、地魔法LV3(2up)、水魔法LV3(2up)、火魔法LV3(2up)、収納LV11、宝石加工LV9、装飾作成LV8(1up)、光魔法LV6、闇魔法LV6、空き×1
職業スキル:短縮作成
名前:ルフ
種族:フェンリル
職業:狼LV29(1up)
体力 :5353(+102)
魔力 :1746(+50)
力 :411(+24)
素早さ:244(+11)
器用 :116(+5)
知力 :124(+6)
精神力:143(+7)
運 :10
スキル:牙撃LV7(1up)、威圧LV11、俊敏LV10、気配察知LV10、収納LV9(1up)、火魔法LV8、魔力操作LV9、報酬LV8、体当たりLV7(1up)、水魔法LV6(1up)、空き×1
職業スキル:遠吠え
固有スキル:鋭敏な鼻
名前:イリス
種族:牛獣人
職業:農婦(一人前)LV28(1up)
体力 :3913(+82)
魔力 :2129(+52)
力 :221(+11)
素早さ:86(+6)
器用 :230(+16)
知力 :125(+7)
精神力:165(+11)
運 :10
スキル:栽培LV13(1up)、料理LV10(1up)、棍棒術LV7、怪力LV10、採取LV11、成長促進LV11(1up)、水魔法LV9(1up)、採掘LV8、地魔法LV8、収納LV8(1up)、収穫LV5、空き×2
職業スキル:種子作成
固有スキル:緑の手
名前:バネッサ
種族:アマゾネス
職業:戦士LV26(1up)
体力 :3301(+101)
魔力 :1644(+32)
力 :210(+16)
素早さ:129(+11)
器用 :100(+11)
知力 :120(+12)
精神力:74(+8)
運 :10
スキル:剣術LV12、槍術LV7(1up)、弓術LV7、体術LV11、火魔法LV7(1up)、風魔法LV6、魔力操作LV7、収納LV7(1up)、解体LV2(1up)、鷹の眼LV3(2up)、空き×1
名前:エイヤ
種族:ダークエルフ
職業:魔法使いLV13(1up)
体力 :403(+20)
魔力 :1426(+82)
力 :65(+5)
素早さ:85(+7)
器用 :109(+9)
知力 :146(+11)
精神力:96(+7)
運 :10
スキル:火魔法LV8、風魔法LV9(1up)、精霊術LV10(1up)、魔力操作LV9(1up)、料理LV2(1up)、精霊魔具作成LV1、空き×1




