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(11)地精ノーム

※次回更新は、1/27の21時です。

 人から見れば小さな穴からこちらを覗く小人たちに、例えハジメであっても可愛いと思った。

 となれば、当然可愛いもの好きの女子がこれを見逃すはずもなく。

「かっ・・・・・・もごっ!!!?」

 思わず叫ぼうとしたイリスの口を、丁度隣にいたバネッサが塞いだ。

 それを見たハジメは、ナイスと思った。

 その理由は、

「気持ちはわかるけど、大声は駄目よ。びっくりしていなくなってしまうわよ」

 口をふさいだバネッサが、イリスに小声で諭した。

 折角こちらの様子を見ている小人たちが、こちらの叫び声に驚いていなくなってしまう可能性がある。

 想像してみてほしい。

 標準的な人族を基準にした場合に、体長が五メートル以上ある人型の生物が大声を上げる様を。

 いきなりそんな攻撃(?)をくらえば、どんな生物だって逃げ出すだろう。

 少しの間もごもごしていたイリスだったが、次第に落ち着いてきて静かになった。

 それを感じたバネッサが口から手を離すと、若干落ち込んだように項垂れている。

 ハジメは、後からフォローしておこうと考えつつ、さてどうするかと三人を見た。

 見られた三人は、同時に首を振った。

 この状況で改善策など思い浮かぶはずもないのであった。

 

 しばらくそんなことをしていると、ルフが突然小人たちの方へと歩き出して行った。

 思わず呼び止めようとしたハジメだったが、すぐに考え直した。

 ルフも小人たちが敵対するような相手でないことは理解しているようなので、任せてもいいだろうと考えたのだ。

 そのルフはというと、小人たちから二メートルくらい離れた場所まではゆっくりと近づいていた。

 それを見ている小人たちも、多少怯える様子を見せているが、その場を離れる様子は無かった。

 ルフの大きさが穴のそれよりも大きいので、いつでも逃げ込めるとでも思っているのだろう。

 小人たちまで二メートル程に近づいたルフは、突然べたりと地面に伏せをした。

 そして今度は、その恰好のままずるずると小人たちに近づいて行く。

 流石に小人たちも驚いているのか、逃げ出すような様子は無かった。

「なるほど。うまい手ですね」

 ルフの様子を見ていたイリスが、感心したような表情を見せた。

 それを聞いたバネッサやエイヤも頷いている。

「効果はあるかな?」

「あるでしょうね。伏せて近づけば、敵意が無いように見えているはずです」

 勿論それは、ただの推測でしかない。

 伏せをしていた所で、攻撃をしようと思えば出来るし、突然飛びかかることもできる。

 ただし、小人相手にはきちんと効果があったようだ。

 ずるずると近寄ってくるルフに、むやみに近づこうとはしないが、逃げ出そうともしていないのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 一番先頭に出ている小人と、ルフの鼻先が三十センチまで近づいたところで、ルフは前進を止めた。

 その恰好のまま鼻でスンスンと鳴らし、匂いを嗅ぐ仕草を見せた。

 小人たちもルフの事は気になっているのか、しきりに会話のようなことを行っているような様子を見せていた。

 それでもすぐに近づいてくるようなことはしない。

 そんな状態が一分ほど続いたところで、突然ルフが舌をぺろりと出した。

 犬が暑い時によくやっているような仕草だ。

 それを見た小人の一人が、とうとう我慢できなくなったのかルフに近づいてきた。

 それでもルフは、すぐに動いたりしない。

 ずっと同じ動作を繰り返している。

 近づいてきた小人がとうとうルフの間近まで近づいてくると、その小人はルフの鼻先をチョンと触った。

 その瞬間、ルフはぺろりとその小人の全身を舐めた。

 思わず尻餅をついてしまったその小人は、驚いてはいるようだったが恐れてはいないようだった。

 ルフも懲りずに、その小人にさらに近づきスンスンと匂いをかぎ始めた。

 小人も完全になれたのか、怖がっている様子を見せず、ルフの鼻先を先ほどと同じように撫で始めた。

 

 そのやり取りを見て我慢できなくなったのか、ついに残りの小人たちもルフに近づいてきた。

 わらわらと近寄って来た小人たちに、ルフは身じろぎせずに迎え入れた。

 それに気を良くしたのか、小人の一人がルフの背によじ登り始める。

 それでもルフは動かない。

 それを見た残りの小人たちが、我も我もとルフ背中に乗った。

 ルフの背中で楽しそうにしていた小人たちだったが、突然ルフが背中を震わせた。

 その振動(?)で、小人たちが地面に落とされる。

 それがまた小人たちの何かに触れたのか、お互いに楽しそうに笑った後で、またルフの背中に登り始めた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 小人たちとルフの触れ合いを見ていたハジメたちは、そのまましばらく放っておくことにした。

 折角仲良くなってきているのだから、それに水を差す必要はないだろうと判断したのだ。

 小人たちは、すっかり警戒心が薄れてきているようだった。

 そんな様子を見ながら、ハジメたちは早めの食事をとることにした。

 ルフたちが中に入るように、しっかりと結界石を使って準備を進める。

 メインの料理を作るのは勿論イリスだが、他のメンバーは火をおこしたりそのほかの作業を行っている。

 そんなことをしている間に、料理が完成に近づき辺りに良い匂いが漂い始めた。

 流石にその匂いに耐えきれなくなったのだろう、ルフがトコトコと近づいてきた。

 小人たちを頭やら背中に乗せたまま。

 その小人たちも特に逃げ出す様子は見せなかった。

 それどころか、歩く振動で落とされないようにへばりついている。

 ルフがハジメのすぐそばまで近寄ってきても、その様子は変わらなかった。

 ハジメもちょっかいを掛けずに、そのままにしておいた。

 上手くいくかどうかは分からないが、一ついい事を思いついたのだ。

 

「バネッサ、もう一つ皿を出しておいて」

「え? ああ、なるほど」

 一瞬だけ疑問符を浮かべたバネッサだったが、ルフを見て納得したように頷いている。

「イリス」

「はい。大丈夫ですよ。スープは大目に作ってあります」

「そうか」

 名付けて餌付け作戦。

 こちらから出した食事を与えてみようという魂胆だ

 ルフと同じ食事を与えることは出来ないが、スープくらいなら食べる(飲む?)ことは出来るだろう。

 自分たちと同じものを食べることが出来るかどうかは分からないので、その辺は賭けになってしまうがそれは諦めることにする。

 食べて危険な物は、自分たちから口にはしないだろうという考えもある。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 結論から言えば、餌付け作戦は成功した。

 イリスが作ったスープを、小人たちが美味しそうに飲んでいる。

 皿から直接だと大きすぎたようで、スプーンによそった後に皿の上に乗せてあげると、わらわらと集まり飲みだした。

 といっても流石に最初は警戒していたようだったのだが、皿に入っているスープをルフが一口ぺろりと飲むと、一人の小人が恐る恐る口にした。

 あとはもう止まらなかった。

 他の者達もスプーンの周りに集まってスープを飲みだした。

 すぐにスプーンの中のスープは無くなり、ついでに催促までされてしまった。

 空になったスプーンを指さして、再度入れるように要求してきたのだ。

 それを数度繰り返し、ようやく全員が満足したところで餌付け作戦は終了となった。

 

 問題はその後だった。

 小人の一人が、トコトコとハジメの傍まで寄ってきて、小人にとっては一抱えもある球体を出して来た。

 勿論そんな物を持っていた形跡は無かったので、<収納>スキルかそれに類する物があるのだろう。

 それはともかくとして、その球体をはじめに渡した後、なぜかエイヤを指さした。

「・・・・・・これをエイヤに渡せばいいのか?」

「そうみたいですね」

「え? 私?」

 ハジメが指示されたとおりエイヤにその球体をエイヤに渡す。

 エイヤも首を傾げつつ、球体を受け取った。

 ちなみに、小人にとってはバスケットボール程度の大きさだったが、ハジメたちにとっては小さい飴玉程度の大きさだ。

 エイヤがその飴玉(?)を受け取るのを見た小人が、手のひらを広げて飲む仕草を見せた。

「・・・・・・仕草を見る限りでは、飲むように言っているみたいだけど・・・・・・どうする?」

 鑑定する限りでは毒物ではないようだが、名前が「???」表示になっているので、何のアイテムかまではよくわからない。

 後の判断は本人に任せるしかない。

「・・・・・・飲んでみる」

 エイヤは、多少迷ったようだったが、最終的にはそう言って飴玉(?)を飲み込んだ。

 

「・・・・・・!!??!!」

 その飴玉を口にしてからすぐに、エイヤに変化が現れた。

 最初は驚いたような表情になり、次に目を閉じて何かが終わるのを待つような表情になった。

「エイヤ・・・・・・?!」

「ちょ、ちょっと待って・・・・・・」

 問いかけたハジメにも、待つように言って来た。

 何が起こっているかは分からないが、エイヤの言う通り待つしかない。

 それから一~二分ほど待つと、エイヤがいつもの通りの表情になった。

「えーと。少し混乱しているんだけど・・・・・・。この子達の言葉がわかるようになったみたい」

「・・・・・・は?」

 突然の言葉に、一同唖然とした。

「ちょっと待ってね」

 そう言って、エイヤと小人たちが、会話をしだした。

 といってもハジメたちには、エイヤしかしゃべっているようにしか見えない。

 時々頷いているので、本当に話が通じているのだろう。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 エイヤが小人たちから聞き出した情報によると、先ほど渡した飴玉もどきは彼らの秘薬で、精霊と親和性が高い種族に飲ませると彼らと会話が出来るようになる物だったらしい。

 その彼らは、地精ノームで四大精霊の一角の精霊たちだった。

 何故この場所に来たかというと、ホームにしていた所にモンスターが出てきた為に、避難して来たようだった。

 勿論彼ら以外にもノームたちはいるのだが、同じような通路を使ってバラバラに避難したとのことだった。

 幸い襲って来たモンスターは、ノームたちが通ってきた通路を通れる大きさではなかったので、無事にここまでこれたらしい。

 というわけで、食事を終えたハジメたちは、ノームたちの集落に向かっていた。

 モンスターの討伐を依頼されたのだ。

 他のモンスターであればノームたちで対処は出来るのだが、現在集落にいるモンスターは、ノーム達の得意な土魔法に耐性を持っているために全く手が出なかったそうだ。

 そのために逃げるしか手が無かったのだが、逃げ込んだ先にはハジメたちがいて、前門の虎後門の狼という状態だったらしい。

 ルフのおかげで、その状態は改善したというわけだ。

 

 ノームの集落に着いて最初気づいたのは、体長三メートルを超える大きなモンスターだった。

 名前はビックモスケート。

 姿形は土竜そのものだった。

 ノームたちのように仲良くなれるわけではない・・・・・・というよりも、集落に踏み込んだハジメたちに気付いたビックモスケートが速攻で襲って来たため、さっさと討伐してしまった。

 ビックモスケート自体は今まで何度か倒しているので、さほど苦労はしなかったのだ。

 その後は、ノームたちがモンスターの討伐の喜んだあと、散って行った仲間たちを呼びに行ってしまった。

 その間ハジメたちは、倒したビックモスケートの処理を行ったりしていた。

 勝手に拠点をうろうろするわけにもいかなかったので、案内されたところで待機をしていた。

 そんなことをしているうちに、ノームたちが続々と集まってくる。

 ハジメたちが集落にいることは、ノームたちも知っていたのだろう。

 特に驚いた様子は見せなかった。

 というよりも、モンスターを討伐したためか非常に喜ばれた。

 全てのノームたちが揃ったのか、だいぶ時間がたったところで、一人のノームがハジメたちをある場所へと案内し始めた。

 そのノームは、ここの集落の長老ということだった。

 その長老が言うには、今回のモンスターの討伐の礼がしたいということで、その礼の品がある場所まで案内するという事だった。

 

「凄いな」

「うわあ」

「これは、すごいわ」

「綺麗ねえ」

 四者四様の言葉を発したが、その内容は全て一緒だった。

 案内された場所は、ある宝石の原石がむき出しで露出している場所だったのだ。

 ありとあらゆる場所にその宝石が出ているため、洞窟内にある光が反射して素晴らしい光景になっている。

 その宝石の名前は、氷炎水晶。

 氷と炎の相反する二つの性質を持った水晶だ。

 当然希少価値はかなり高い。

 長老が言うには、ノームたちはほとんど使う事がないのでいくらでも持って行っていいということだ。

 それよりもビックモスケートの素材の方がノームたちには必要だったようなので、喜んで譲ることにしたのであった。

「就寝なし」のためレベルアップはなし。

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