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(9)結界石と収納石

※次回更新は、1/21の21時です。

「これが例のアイテム?」

「そうなるな」

 ハジメから渡された水晶を、パティはしばらくかざしてみたりしていた。

 当然鑑定を使っているので、そんなことをしなくてもそのアイテムが結界石であることは分かっている。

 かざしたりしていたのは、見た目のチェックをしていたのだ。

「うーん。やっぱり見た目だけだと分からんなあ」

「それはそうだろう」

 少し呆れた感じで、ハジメがそう言った。

「いややなあ。真面目に突っ込まんといてや」

 冗談のつもりだったのだろう。パティは、少し照れた感じになった。

 

「それはそれとして、これを戦闘組に渡してええんやな?」

「勿論だ。そのために作ったのだしな」

「効果のほどが分からんと、値段のつけようがないんやけどな」

 ある程度の値段は見積もることは出来ても、実際の効果と値段がかけ離れることはよくあることだ。

 その辺の事はハジメも分かっているので、特に注文を付けるつもりはない。

 香水の時のように、購買に同じような物があるのならそれを基準にして値段を付けられるのだが、結界石のような物はどこにもないのでそれも出来ないのだ。

「それはしょうがないだろう。まずは、ある程度の値段を付けて、使ってみてもらうのが一番じゃないか?」

 ハジメとしても自分で確認した効力以上の物は保証が出来ないので、強気に出るつもりはない。

「それしかないかなあ・・・・・・」

「何。本当に第三段階で使えるとなれば、自然と値段も上がっていくだろう?」

「そうやね。まあ、ハジメがそれでええんやったら、それで行くか」

 パティとしては、生産物の効力に見合った値段を出来るだけ付けたいと考えている。

 だが最初のうちは、適正価格よりも低くなってしまう場合もあるのだ。

 特に、今回ハジメが持ってきたような物だと、実際の使い勝手が分からないと、本当の意味での適正価格はつけづらいのだ。

 そのためにも、一度は誰かに使ってもらうしかない、という事になるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 翌日。

 ハジメとパティが商談をしている所に、虎獣人のアルノーがやって来た。

「失礼する。・・・・・・遅かったか?」

「いやいや。予定より早いくらいや。うちらは、その前に打ち合わせをしていたからな」

「そうか。もう少し暇つぶしをしてようか?」

「いや、構わない。もうほとんど雑談だったからな」

 直前まで売っているアイテムの事について話していたのだが、それもほとんど雑談に近くなっていた。

 アルノーが来たのはちょうどいいタイミングだったのだ。

 

「それで? そのアイテムというのは?」

 アルノーの問いかけに、ハジメが懐から結界石を取り出した。

 それを確認したアルノーは、意外そうにパティを見た。

 アルノーにしてみれば、パティが持っていると思ったのだろう。

「まだハジメが持っとる分しかないシロモノやからな。売りにも出とらんし。それやったら、本人がもっといた方が、いいやろ?」

「・・・・・・そうか」

 言いたいことは分からないでもないが、そこまでする必要があるのかと内心で首を傾げるアルノーだった。

 そんなアルノーに対して、ハジメが結界石を差し出しつつ前から決めていたことを告げた。

「パティからのメールでもあったと思うが、今の効果がはっきりしていないからその調査を頼みたい。やはり最前線での確認は必要だからな」

「承知した」

「アルノーの調査結果次第である程度の値段が決まるから、不正申告は止めてや」

 そのパティの言葉に、アルノーがいささかムッとした表情になった。

「そんなことはせん」

「すまんなあ。中にはそう言う輩もおるから、こういう場合は最初に全員に話しているんや」

「む。それは済まないな」

 戦闘組の中で、そういった不正(?)を働く者がいることは、アルノーも知っていた。

 アルノーに言わせれば、馬鹿なことを、という感じなのだが。

 そもそもそんなことをして、商人や生産者たちからアイテムを売ってくれなくなったらどうするのだと言いたくなる。

「いやいや。約束を守ってくれればいいだけで、別に謝ってもらう必要はないよ」

「それは勿論だ」

 アルノーにしてみれば、結界石は第三段階攻略の切り札になり兼ねないアイテムだ。

 そんな物を目先の儲けだけで失う事になり兼ねないことなど、するはずがない。

 

「確認してもらうのは、耐久性・持続性・使用回数などいろいろあるな。まあ、難しいことは考えなくていい。使ってみた実感を俺に話してもらえれば、それだけで十分だ」

「わかった」

「・・・・・・本当ならもう少し品質を上げてから確認したかったんだがな」

 渋い顔でそう言うハジメに、パティが笑った。

「それはさっきも言ったやん。別に、品質の高いものだけが売れるとは限らんて。そもそも効果によっては、今のプレイヤーが手に入れるには早すぎる可能性もあるし」

「それほどの物なのか・・・・・・?!」

 二人の会話に、アルノーは驚きの表情になった。

 アルノーにしてみれば、戦闘中のちょっとした回復時間が出来る程度だと考えていたのだ。

「生産職の、という条件が付くけど、第三エリアの第一段階で、半日以上中の物が無事だった程度・・とハジメは言ってけどな」

 ハジメが、というよりバネッサたちに頼んでやってもらった実験は、第三エリアの第一段階で、出てくるモンスターの餌を中に置いてその餌を中心に結界石を使ったものだった。

 結果としては、バネッサたちが攻略を終えて戻って来た時もまだ中の餌は無事というものだった。

 それを何度か繰り返して、問題ないことを確認したうえで、パティの所に持ってきたのだ。

 

「・・・・・・分かった。慎重に扱おう」

 パティの説明を聞いて、結界石を持つアルノーが神妙な表情になった。

 話を聞くだけで、戦闘職の攻略を進めるうえで、起爆剤になりそうなアイテムだと分かったのだ。

「いや。品質的にはそこまで良いものでもないはずだぞ?」

「わかっとるわ。だからこそ、こうして確かめてもらおうとしてるんやろ?」

「なるほどな。よくわかった。これの限界値を調べればいいのだな?」

 今回作った結界石は、品質に関しては最低ランクの物だ。

 それから考えれば、さほど良い結果を残すはずがないと考えていのだ。

「ああ。それの調査が終わるころには、ランクが上がって物も作れるはずだからな」

「ランクが上の物と比べられれば、値段も大体付けられるやろうしな」

 ハジメとパティがそれぞれの立場から意見を言った。

「よくわかった」

 アルノーも自分がやるべきことを理解したのか、大きく頷いた。

 死に戻りが可能とはいえ、戦闘職にとっては喉から手が出るほど望んでいたアイテムだ。

 慎重に慎重を期す必要があることは、十分に理解している。

 絶対に限界を見極めようと心に決めるアルノーであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 アルノーに結界石を渡してから数日が経った。

 その間、アルノーはしっかりと結界石の調査をしていたようだった。

 結果を報告しにパティのところを訪ねてきた。

 勿論、その場にはハジメも呼ばれている。

「これが調べた結果だ」

 アルノーはそう言って、一枚の紙を差し出した。

 そこには、結界石の仕様が事細かに書かれていた。

 それを見たパティが若干呆れた表情になった。

「よくまあ、この短期間でここまで調べたなあ」

「こっちも命がかかってるからな」

 実感のこもった言葉に、パティは頷くのであった。


 パティとアルノーの会話を余所に、ハジメはジッとそのメモを見ていた。

「? どうしたん? 何かあった?」

 そんなハジメの様子を不思議に思ったパティが、聞いてきた。

「いや。俺がチェックした新しい物と違っているかを確認してただけだ」

「・・・・・・新しい物?」

「いや、そんな顔をするな。品質が上がっているだけだ」

 アルノーに渡したのは、Eランクの物だったのだが、既にハジメはDランクの結界石を作ることに成功している。

 そのDランクの結界石でもバネッサたちに実験をしてもらっていたのだ。

 ちなみに、ランクが変わっても結界の中からモンスターを攻撃することはできなかった。

 結界の中からモンスターを攻撃するといった使い方はできないのだ。

 ただし、料理のような作業をすることはできる。

「はあ~。・・・・・・いや、もう突っ込まんよ。それで? 何か違ってた?」

「いや、さほど大きくは変わっていないようだ。変わってるとすれば、連続使用時間と使用回数くらいかな?」

 どちらも品質が上の方が数値が大きくなっている。

「どれくらい違う?」

 興味を持ったのか、アルノーが聞いてきた。

「倍以上は変わっているな」

 具体的には、Eランクの結界石は最大使用時間が八時間程度で使用回数は十回前後までで、Dランクの結界石は最大使用時間が24時間以上で使用回数は二十回前後になっている。

 Dランクの物は、単位が大きくなっているので、調べきれていない所もあるのだが。

「ふむ・・・・・・。こっちと併用すれば、色々使えそうだな」

 アルノーが顎を触りながら上を向いた。

 実際の攻略と合わせて、どう使えばいいのかを考えているのだ。

 

「値段はどれくらいになりそうだ?」

「そうやねえ・・・・・・。こんなもんでどうや?」

 既にパティとハジメで話し合った値段が提示された。

 パティが提示した値段を見て、アルノーが若干驚いた表情になった。

「そんなものなのか?」

 思ったよりも安かったので驚いたのだ。

「確かに効果は高いけどなあ。使い捨てってところがネックになっとるのや」

 限りなく使えるのであれば、まだ値段は上がっただろう。

 だが、残念ながら回数制限があるために、使い捨てになってしまっているところが値段を抑える原因になっていた。

「そうか・・・・・・。だが、これなら確実に売れるだろうな」

 アルノーは実感を持って、そう言った。

 調査している時からその便利さは、身に染みて実感しているのだ。

 何より彼自身が、真っ先に購入することになるだろう。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 アルノーの協力を得て十分な調査が出来たので、結界石が無事に売りに出されることになった。

 協力してもらったアルノーには、いくつかの結界石を渡した。

 その際、もらう分が多すぎると恐縮していたので、使い勝手を宣伝してもらうように頼んでおいた。

 その効果があったのか、商品を置き始めた初日から飛ぶように売れていた。

 アルノーの反応から前もって余裕を持って作っておいたので、売り切れるという事は無かった。

 値段もそこそこの値段を付けていたのだが、その効果の高さも相まって金に糸目を付けずに戦闘組が買っていた。

 

 そんなある日の事。

 ついに第一エリアの第三段階が攻略されたという噂が流れた。

 一番最初に攻略したのは、アルノーということだった。

 律儀にもアルノーは、結界石が出来たおかげで攻略が出来たと掲示板で宣伝してくれた。

 そのおかげで益々結界石の人気が出たのだが、その頃には別のプレイヤーが同じ結界石を作って別の店で売り出していたので、パティの店が混乱することは無かった。

 もっとも、元祖、という事で相変わらず人気は高かったのだが。

 

 さらに、同時期に作成できた収納石もしっかりと調査を進めた。

 むしろパティ的には、こちらの方が気になっていたらしい。

 収納石の最大の特徴は、動物も入れることが出来ることだからだ。

 つまりは、今まで扉を通ることが出来なかった家畜なども収納石を使ってやり取りが出来るようになるからだ。

 こちらも同じようにしっかりと調査が行われた上で、販売が行われた。

 職業スキルが牧畜系のプレイヤーは、数が少ないとはいえ全くいないわけではない。

 特に馬の需要は潜在的に高いと思われているので、交流の街で馬の販売が始まるのも時間の問題だろう。

 さらに、収納石について言えば、調査の段階で別の活用方法も見いだされた。

 収納石に物を入れた状態で、収納スキルを使うことが出来たのだ。

 残念ながら、収納石の中に生物を入れた状態の収納石を入れることはできなかったが。

 それでも収納スキルのレベル以上の物を入れることが出来るようになるのは、遠征をする戦闘職にとってはさらに便利さが増したといえる。

 結界石と合わせて、収納石も戦闘職にとっての必需品となったのは言うまでもないのであった。

 名前:ハジメ

 種族:ヒューマン(人間)

 職業:上級作成師ハイクリエイターLV6(5up)

 体力 :2505(+250)

 魔力 :4002(+400)

 力  :150(+40)

 素早さ:192(+50)

 器用 :393(+100)

 知力 :243(+65)

 精神力:287(+75)

 運  :9

 スキル:調合LV12、魔力付与LV12(1up)、鑑定LV10(1up)、俊敏LV6、短剣術LV5、風魔法LV5、収納LV10(1up)、宝石加工LV9(1up)、装飾作成LV7、光魔法LV4(1up)、闇魔法LV4(1up)、空き×3(1up)

 職業スキル:短縮作成

 

 名前:ルフ

 種族:フェンリル

 職業:狼LV26(1up)

 体力 :5042(+100)

 魔力 :1593(+50)

 力  :341(+20)

 素早さ:208(+10)

 器用 :98(+5)

 知力 :117(+5)

 精神力:120(+7)

 運  :10

 スキル:牙撃LV3(1up)、威圧LV10(1up)、俊敏LV9、気配察知LV9、収納LV8(1up)、火魔法LV7、魔力操作LV9、報酬LV7、体当たりLV3(1up)、水魔法LV2(1up)、空き×1

 職業スキル:遠吠え

 固有スキル:鋭敏な鼻

 

 名前:イリス

 種族:牛獣人

 職業:農婦ファーマー(一人前)LV25(1up)

 体力 :3664(+80)

 魔力 :1974(+50)

 力  :189(+10)

 素早さ:67(+5)

 器用 :183(+14)

 知力 :102(+7)

 精神力:128(+11)

 運  :10

 スキル:栽培LV12、料理LV7、棍棒術LV5、怪力LV9(1up)、採取LV11、成長促進LV10(1up)、水魔法LV8、採掘LV6、地魔法LV7、収納LV5(2up)、収穫LV4(1up)、空き×2(1up)

 職業スキル:種子作成

 固有スキル:緑の手

 

 名前:バネッサ

 種族:アマゾネス

 職業:戦士LV23(1up)

 体力 :2995(+100)

 魔力 :1446(+30)

 力  :161(+15)

 素早さ:95(+10)

 器用 :69(+8)

 知力 :87(+9)

 精神力:51(+5)

 運  :10

 スキル:剣術LV11(1up)、槍術LV5、弓術LV6、体術LV10(1up)、火魔法LV3(1up)、風魔法LV3(1up)、魔力操作LV4(2up)、収納LV4(2up)、空き×1

 

 名前:エイヤ

 種族:ダークエルフ

 職業:魔法使いLV6(4up)

 体力 :254(+84)

 魔力 :855(+325)

 力  :30(+21)

 素早さ:37(+25)

 器用 :51(+35)

 知力 :65(+45)

 精神力:44(+30)

 運  :10

 スキル:火魔法LV5(3up)、風魔法LV5(3up)、精霊術LV5(3up)、魔力操作LV5(3up)、空き×2(2up)

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