(3)採掘チーム
大晦日更新です。
狙ったわけではなく、偶然ですw
※次回更新は、1/3の21時です。
バネッサの提案で、坑道での採掘を別のプレイヤーを呼び込んで行うことになった。
当初の予定では、不特定多数を呼び込もうとしていたのだが、パティを話し合いをしているうちに、それは難しいという結論になった。
一番の理由は、収納スキルを持っている場合、あるいはそれに類するアイテム、例えば鞄形式のアイテムボックスなどを持っている場合に、何をどれくらい入っているか見分けるのが難しいと言うのがその理由だ。
誰を呼び込んでもその問題は発生するのだが、信用できる者だけを呼ぶことにして、運営上の手間を減らすことを優先した。
そもそもハジメもパティもこれだけで儲けを出そうという気はない。
だったら最初から仲間内だけで分けるだけで十分だという事になった。
誰にでも出来る商売なので、真似する者は出てくるだろうが、それはそれで問題はない。
採掘できる種類が増えれば増えるだけ、誰にとっても有難いことなのだから。
他のプレイヤーを呼び込むにあたって、拠点を少しだけ改装した。
エリアに向かうための待機部屋を作ったのだ。
そうすることによって、ハジメたちの生活スペースに他者を入れないようにすることが出来る。
一度に呼び込むパーティは数チームを予定しているので、かなり大きな部屋を用意した。
その部屋には、各エリアに向かうドアと生活スペースに向かうドアがある。
生活スペースに向かうドアは、当然登録した者しか出入りできないようになっている。
個人個人の魔力を読み取るタイプの鍵なので、登録者以外の者が生活スペースに入ってくることは無い。
それ以外にも採掘した鉱石を計量するための道具を設置したりしてそれなりのGPを使ったが、回復薬騒動の時の収入がかなりあったので、十分に賄えた。
イリスも必要経費だと分かっているので、渋らずにすんなりと許可してくれた。
勿論、必要ない物は必要ないとしっかりと口を出していたが。
全ての準備を整えて、いよいよ初めて拠点に別のパーティを呼び込むことになったのである。
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パティの露店の前に、十二人のメンバーが集まっていた。
一チームが四人ずつで計十二人。
本日の採掘チームだ。
初めて他のパーティを受け入れるこの日は、三チームを受け入れることにしていた。
採掘を受け入れるのは、毎日ではなく三日に一回か四日に一回という事になった。
それくらいがペース的にちょうどいいと言うのと、パティが他の生産者に話をしたところ、自分の所でも受け入れをしたい、と打診するところがあったのだ。
そのために順番が回ってくるのが、そのくらいのペースが丁度よかったのだ。
今のところハジメは、他のプレイヤーのエリアへの採掘は考えていないが、いずれはお世話になることも視野に入れている。
作成師がどんなものを作成できるようになるのか分からない以上、いろんな可能性を排除するのは得策ではないのだ。
「お前さんが、ハジメか?」
「ああ、そうだが?」
パティが紹介する前に、メンバーの一人に話しかけられた。
「おお、そうか。儂はベンノ。見た目通りドワーフの鍛冶師だ」
ベンノはそう言って、ハジメの二倍はありそうな腕で、ガハガハと笑いながらバシバシと叩いてきた。
ちなみに、背の高さは百二十センチ位だった。
「僕の名前はクレート。ホビットの細工師だよ」
更に続けて来たのは、ベンノと同じくらいの背の高さの男の子だった。
見た目だけで言えば、少年と言った方がいいのだが、ホビットなので見た目通りの年とは限らない。
最後に挨拶してきたのは、ヒューマンの女性だった。
「私は、リブシェ。ヒューマンの宝飾師よ」
ハジメがこの交流の街に来た時はそうでもなかったのだが、既に大量のプレイヤーがこの街に来るようになっていた。
それに合わせて様々な種族が来ているので、挨拶の時の名乗りで種族を付けるのは、最早定番となっているようだった。
「俺は、ヒューマンの作成師だ。今日はよろしく頼む」
さらりと職業を公表したのだが、これも特に反応は無かった。
レア職業に就いている者も既に珍しい存在ではなくなっているのだ。
もっとも、ハジメの場合は薬草騒動で名が売れてしまったという事もあるのだが、その時は職業名までは伝わっていなかった。
今回、敢えて名前を出したのは、信用できるかどうかを確認するためでもある。
名乗りの時に職種と職業を出すのは定番になっているが、その情報を簡単に流すようだと信用できないと考えたのだ。
「なんや。もう挨拶は終わったんか?」
そう言ながら店番のサポートキャラに指示を出していたパティが来た。
このメンバーを揃えたのは、パティ繋がりなのだ。
逆に言えば、この場にいる全員がパティに商品を卸していると言える。
この場に集まっているのは、パティの露店の多種多様な品を支えている生産職たちということになる。
「ああ。一通りな」
今挨拶したのは、プレイヤーだけでサポートキャラの紹介まではされていない。
こういった場所では、サポートキャラの挨拶は後回しになることが多い。
そもそも交流の街にサポートキャラ全員を連れてくるのは、露店を出している商人以外では珍しかったりする。
それこそ、今回のように他者のエリアの攻略に向かうときくらいだろう。
装備を整えるときも、全員まとめてという事の方が珍しい。
交流の街がもう少し発展してくれば、別の目的で利用されることもあるだろうが、今のところは攻略のための拠点といった感じが強い。
今のハジメもついてきているのはイリスだけで、ルフとバネッサは拠点で待っている。
「ほんなら、ここですることは他にあるか?」
「いや、無いな」
ハジメはそう言って、他の三人のプレイヤーたちを見た。
「俺もないぜ」
「僕もだよ」
「私もないな」
三人が頷くのを待ってから、ハジメの拠点へと移動を始めたのであった。
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一旦、待機場所に全員が集まった。
今回採掘を行う三チームの十二名の他には、パティとシエラも来ている。
一応誰が、エリアに向かったかを記録したりしているのだ。
一日の採掘を終えて戻ってきたときに、清算を行うための準備でもある。
「水晶鉱山は、第三エリアですから、第一段階の場所でもそこそこ戦闘は起こると思ってください」
「了解した」
「あと、第一段階までしか解放していませんからこれも注意してください。間違って第二段階の場所に行ったとしても強制的に戻されるようですが」
これは、各エリアのそれぞれの段階で開放できる場所を決めることが出来るのだ。
当然ながら(?)これは、掲示板をしらみつぶしに見ていて見つけた情報だ。
今回は、第三エリアの第一段階だけを解放してある。
あくまでも水晶をメインにほってくださいね、という意思表示でもある。
第二段階の場所は、現在何が掘れるかも調べきれていない。
もし開放するとすれば、きちんと調査が終わってからと考えていた。
「注意事項はそんなところか?」
パティに問われて、ハジメは頷いた。
「ほな最後に確認するけど、前にも話した通り当然マージンは取るからな。それが嫌なら戻ってかまへん。後から文句を言っても知らんからな?」
パティがそう言ったが、誰も戻る者はいなかった。
既にどのくらいのマージンを取るかは、決めてある。
それに納得した上で集まっているので、去る者がいなかったのは当然なのだった。
「それじゃあ、もう言う事は無いから後は好きに掘ってきてええで。集合時間だけは忘れずに」
最後にパティがそう声を掛けると、集まったメンバーは早速第三エリアへ向かうのであった。
「これで、後は帰ってくるのを待つだけか?」
「そうやな。あとは清算の時だけやけど、迎えには来てくれるんやろ?」
「ああ。どれくらいで戻ってくるかにもよるが、いつもの納品の時でもいいだろう?」
「そうやね」
入るときはともかく、戻ってきたときの清算が時間がかかるのだ。
パティにとっての勝負はその時だった。
ハジメは、それぞれのメンバーの採掘量から何割と決められた量をマージンとしてもらうことになっているが、パティ達はそのマージンの中から一定額を貰うことになっていた。
紹介料と言うわけではなく、今の手続きも含めた清算時の人件費の分だ。
別にお金(GP)に変えるわけではないが、こう行った時は直接やり取りせずに、商人を間に挟んだ方がいいと考えたのだ。
そんなことを考えていたハジメだったが、チラチラとこちらを窺って来るパティの様子に気づいた。
「・・・・・・何?」
「な、なんでもないんよ。そ、それじゃあ、また夕方ごろ」
「? ああ、商品持ってそっちに行くよ」
若干慌てた様子のパティに、ハジメは首を傾げたが、パティはそれについては特に何も言ってこなかった。
「もう皆も採掘に行ったから、そろそろ街に戻りたいんやけど?」
「あっと、すまんすまん」
今エリアに向かうドアは第三エリアになっている。
パティが交流の街に戻るためには、作業部屋に置いてある端末でエリアを切り替える作業をしないといけないのだ。
「ほな、また」
ハジメがその作業をするために、生活エリアに向かうとパティがそう声を掛けて来た。
そして、端末で切り替え作業を行って待機場所に戻ってきたときには、パティの姿は既に無かったのであった。
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夕刻。
ハジメが作業部屋でアイテム作成の作業を行っていると、隣の待機場所からがやがやと声が聞こえて来た。
「もうそんな時間か」
作業に熱中していたために、採掘チームが戻ってくる時間になっているのに気付かなかったのだ。
丁度作業も区切りが良かったので、すぐに待機場所へと向かった。
「おう。中々いい質の物が採れたぞ」
待機場所に行くとそこにはベンノのチームがいた。
他のチームはまだ戻っていないらしい。
「そうか。それはよかった。水晶以外には取れたか?」
「魔石と魔晶石が少々といったところか」
「魔晶石が採れたのか?」
魔石はともかく、魔晶石は今まで取れたことが無かった。
「何だ、知らなかったのか? 中々見つけにくいとは思うが、探せば結構ありそうだったぞ? 今回は水晶を優先したから少なめだが」
「そうだったのか。それはありがたい情報だ」
もしかしたら、これだけでも第三エリアを他のプレイヤーに解放した価値があるかも知れない。
とにかく今のハジメは、エンチャントが必要不可欠になっているのだ。
もしかしたら、作成師はずっとエンチャントが付いて回るとさえ考えている。
だとすれば、魔晶石が採れるというのは非常にありがたい話だった。
「おっとすまんな。今、パティを呼んでくるから少し待っててくれ」
「ああ、分かった」
一度第三エリアの坑道まで出て他のチームが戻ってきてないことを確認してから交流の街へと切り替えて、パティを呼びに向かった。
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パティとシエラを拠点へと連れて戻って来た時には、まだ他の二チームは戻っていなかった。
ベンノの採掘した物を清算していると、クレートとリブシェのチームがほぼ同時に戻ってきた。
先にクレートの清算をしている間に、二つのチームで何が採掘できたかを確認する。
クレートが採れたものは、ベンノと同じ物だったのだが、リブシェは耐熱石を採掘していた。
「なんだ? 耐熱石が採れたのか? 儂はそっちの方がよかったな」
耐熱石が採れたと分かると、若干羨ましそうにベンノが見ていた。
耐熱石はその名の通り熱に耐性を持たせることが出来る鉱石だ。
武器はともかく、防具を作成するときに必要になるらしい。
「あら。だったら他の物と交換でもいいぞ?」
「ホントか? それじゃあ頼む!」
リブシェはそもそも耐熱石を加工するスキルが無いために、元々パティに売るつもりだったのだ。
「ちょっと待ってな。後から交換取引もするから、今はまず採れたものを計量させてや」
「おう!」
「わかった」
どうやら採掘チームにとっても今回の採掘はそれなりに得る物があったらしい。
そもそも彼らは、水晶をこれだけ大量には採ることが出来ないので、わざわざ採掘しに来てるのだ。
そんなこんなで、清算も無事に終えて今回の採掘は終わりとなった。
マージン分を貰ったハジメもかなり得することが出来た。
何しろ水晶だけでもハジメたちが採掘しに行く時よりももらうことが出来たのだ。
これだけ多くなったのは、サポートキャラが採掘メインになっているベンノのチームがいたためだ。
しかもその間、別の作業を行ってアイテム作成が出来ている。
今回の採掘は、どちらにとってもいい結果になって終わったのであった。
名前:ハジメ
種族:ヒューマン(人間)
職業:作成師LV25(4up)
体力 :1985(+255)
魔力 :3083(+413)
力 :68(+13)
素早さ:82(+15)
器用 :183(+35)
知力 :103(+17)
精神力:128(+28)
運 :9
スキル:調合LV10、魔力付与LV9(1up)、鑑定LV7、俊敏LV6(1up)、短剣術LV5(1up)、風魔法LV5(1up)、収納LV7、宝石加工LV5(2up)、装飾作成LV3(1up)、空き×2(1up)
職業スキル:短縮作成
名前:ルフ
種族:フェンリル
職業:狼LV20(4up)
体力 :4070(+623)
魔力 :1164(+282)
力 :236(+52)
素早さ:156(+25)
器用 :72(+21)
知力 :87(+22)
精神力:82(+35)
運 :10
スキル:噛みつきLV9(1up)、威圧LV8、俊敏LV9(1up)、気配察知LV7(1up)、収納LV6、火魔法LV6(1up)、魔力操作LV6、報酬LV5(2up)、空き×2(1up)
職業スキル:遠吠え
固有スキル:鋭敏な鼻
名前:イリス
種族:牛獣人
職業:農婦(一人前)LV17(3up)
体力 :2960(+402)
魔力 :1686(+245)
力 :140(+24)
素早さ:42(+10)
器用 :126(+32)
知力 :72(+16)
精神力:86(+16)
運 :10
スキル:栽培LV10(1up)、料理LV5、棍棒術LV5、怪力LV7、採取LV9(2up)、成長促進LV7(1up)、水魔法LV6、採掘LV4(2up)、地魔法LV3(1up)、空き×1
職業スキル:種子作成
固有スキル:緑の手
名前:バネッサ
種族:アマゾネス
職業:戦士LV14(5up)
体力 :1859(+662)
魔力 :960(+331)
力 :76(+32)
素早さ:51(+16)
器用 :35(+14)
知力 :48(+18)
精神力:37(+14)
運 :10
スキル:剣術LV7(2up)、槍術LV4、弓術LV4(1up)、体術LV6(1up)、空き×4(2up)




