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ミクシードワールド ~神の作業帳~  作者: 早秋
第一章 回復アイテム
20/74

(17)回復薬騒動(後編)

本日二話投稿の二話目です。

更新チェック中から来た方はご注意ください。


明日から二話分、掲示板回が続いて第一章は終わりになります。

 一旦拠点へと戻ってきたハジメは、イリスに薬草の生産数を確認した。

 わざわざ戻ってきたのは、現在の生産数がどれくらいあるのか、他人に知られないようにするためだ。

 ここまでする必要があるのか、人によっては、そういう事を言う者もいるが、ハジメにとっては必要なことだと考えている。

 特に、こういう事が起こった時に、対処できる場合もあるからだ。

 まさに、その状況が今、生きようとしている。

 パティの報告次第という事もあるのだが。


「薬草はどれくらい作れる?」

「2、3日待っていただければ、五百はいけますが、今は三百が精々です」

「畑を増やした場合は?」

 二つある畑から三つに増やした場合も考えておく。

「済みません。使える畑にするまでにある程度時間がかかりますから、あまり変わりません」

「いや、謝る必要はない。無茶を言って悪かった」

 若干落ち込んだ様子を見せたイリスに、ハジメが謝罪した。

 今のはどう考えてもハジメの無茶ぶりだった。

 イリスは安定してランクの高めの薬草を採取してくれている。

 だが、その状態にするために色々畑を調整していることもハジメは、イリスから聞いていて知っていたのだ。

 にもかかわらず、今のような質問をしたのは、どこかに焦っている気持があるからだ。

 

 ハジメが今考えているのは、短縮作成を使って回復薬の生産を賄えないかという事だ。

 要は、回復薬が今まで通りの値段で出し続けることが出来れば、相手の目的は抑えることが出来る。

 回復薬を買い占めることによって、回復薬が出回らなくなることを狙っているのだから、その邪魔をすればいい。

 問題を起こしている集団が、どれくらいの資金があるかは分からない。

 だが、その資金が尽きるまで回復薬を提供し続ければ、集団の目的は抑えることが出来るのだ。

 勿論、ハジメも全て自分だけで生産を賄えることが出来るとは思っていない。

 短縮作成が使えるのは、直前に作成した品質の一つ下のランクだけだ。

 それを考えると、量産できるのはCランクの物と、もう一つ下のDランクの物だけという事になる。

 Eランクの物は、商人たちがエリアの露店から仕入れることが出来るので、考えなくてもいいかもしれないが、忘れるわけにもいかない。

 交流の街に来れるようなレベルになっていると、Eランクの回復薬はほとんど使わなくなるが、需要が全くないわけではない。

 場合によっては、クエストで使ったりするのだから当然だろう。

 それに、回復薬を作れる職業についている全ての者が、集団側に付いているとも考えていない。

 そう言った者達の協力も得ることが出来れば、目論見が上手くいく確率は上がるだろう。

 中には様子見を決め込む者もいるだろうが、それはそれで構わない。

 強制してしまえば、それは回復薬の高騰を狙っている集団と変わりがないことになってしまう。

 あくまでも協力してくれる者達だけでやるからこそ、意味があるのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 交流の街に最初からある建物は、本来は購入してから使える建物だ。

 しかしながら、実は購入以外にも使用する方法がある。

 それがレンタルによる方法で、時間単位で料金を支払えば建物の部屋を使うことが出来る。

 勿論、建物全体を借りる方法もあるが、今のところ建物全体をレンタルした例はない。

 今まで一度も使われたことのないレンタルだったが、今初めてレンタルの使用者が出た。

 その使用者がパティで、今回の件を話し合うためにあえて、この場所を借りたのだ。

 当然、今回の騒動を仕掛けた集団への「見せしめ」の意味もある。

 実際は、まだ話もまとまってもいないのだが、それはそれ。

 集団への対応ももちろんあるのだが、今回の件に直接かかわっていない一般のプレイヤーへ周知させる意味もある。

 「今回の騒動を、ただ黙って見過ごすだけでは終わらせない」というメッセージだ。

 

 そこまでして借りた部屋には、パティが呼び掛けた商人たちが集まっていた。

 ここに集まっているのは、今回の騒ぎに対抗するために集められた商人たちである。

 勿論、商人だけではなく、何人かの調合スキル持ちのプレイヤーも来ている。

 フリーのプレイヤーもいるが、半分以上は商人と繋がりがあるプレイヤーになる。

 当然ハジメも、パティお抱えと言った意味で、その内の一人となるのだが。

 その中でCランクの回復薬が作れるのはハジメだけになる。

 そのことは、ハジメの了承を取った上で、パティを通して伝えられているため、今回の話はハジメが抜きでは意味をなさないことは、全員が認識している。

 

 現在この部屋では、話し合いが行われているのだが、その内容で最初からもめにもめていた。

 暫定とは言え、集団で行動することになるのだ。

 当然代表と言うべき者が必要になるのだが、それを決めるのに揉めているのだ。

 一応呼び掛けたのはパティなのだが、別にパティが代表となると決まっていたわけではない。

 そのために、まずは代表から決めようと言う話になったのだが、そこでいきなり揉め始めたのだ。

 ちなみに、パティはこの話には参加していない。

 別に自分が代表をやりたくて、参加者を募ったわけではないのだ。

 

 そろそろその不毛な言い争いを止めていいだろうと考えたハジメが、口を挟むことにした。

「俺の話も聞いてもらえるか?」

 流石にハジメが今回の作戦の要になることは分かっているのか、今まで騒いでいた者達が黙った。

「一応断っておくが、今回の話がどんな形になるにせよ、俺はパティ以外にに卸す気はないことだけは言っておく」

 その言葉に、場がざわめいた。

 隣にいるパティもなんてこと言ってくれるん、という顔になっていたが、ハジメにとってはこれだけは譲れない事だった。

 今回の事を機に、なし崩し的に他の商人に卸すことになるのは止めたかった。

「それは何か? そこにいるパティ以外に代表は認めないという事か?」

「誰がそんなことを言った? 俺が言ったのは、パティ以外には卸さないと言っただけだ。代表が誰かなど関係ない」

 ハジメの言葉に、今まで代表になりたがっていた者達は、苦虫を噛み潰したような表情になっていた。

 今回の話の中心がハジメである以上は、そのハジメが卸す商品を扱えるパティがそれなり以上の権限を持つことが出来るという事だ。


「そんな勝手が許されると思うのか?」

「勝手とは?」

 当然そういう事を言うと、ハジメの意見を真っ向から否定する者も出てくる。

「今後はどうあれ、今回は団体として動くことが決まっている。だったら、作った回復薬は団体に一度預けるのが筋だろう」

 もっともらしい事を言っているが、要は代表になって集まった回復薬を自由に扱いたいという事だ。

 それを聞いた何人かの商人たちも頷いていた。

 だが、そんなことはハジメにとっては、全く関係のないことだ。

「そうか。・・・・・・だったら俺は、今回の話は聞かなかったことにする。悪いが抜けさせてもらおう」

「なっ!? そんな勝手が許されると・・・・・・」

「勝手? 何がだ? 別に今回の話は強制ではないだろう? お前たちのやることは邪魔する気はないから好きにやってくれ。俺は俺で好きにやる」

 ここに集まっているプレイヤーもしくはサポートキャラで、ハジメ以外にCランクの回復薬を作れる者はいない。

 回復薬の高騰を狙っている団体を邪魔するには、どうしてもそれを大量に生産する必要があるのだ。

 早い話が、今回の作戦はハジメがいないと成り立たない話なのだ。

「・・・・・・わかったよ。パティを代表にすればいいんだろ?」

「別にそんなことは言っていないんだが?」

 シレッとした表情で言うハジメに、全員が「よく言う」と思ったのは言うまでもないのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 結局、代表はパティがやることに決まった。

 若干一名、ハジメの隣に座っていた商人パティが最後まで渋っていたのだが。

 パティがハジメに向かって、小声で「後で覚えておくように」と釘を刺してきたが、その場ではスルーをしたのは言うまでもない。

 代表さえ決まってしまえば、後は話が早かった。

 今回は目的がはっきりしているので、後は物を作って動かすだけだからだ。

 その動かす指示を決めるのが代表だったために揉めていたのだが、ハジメによって強引に決められてしまったのだ。

 今後もずっとギルドなりを作っていくことを決めるための話し合いであれば、こうもすんなりはいかなかっただろう。

 あくまでも今回は暫定的に集まっているだけだということもある。

 そうでなければ、遺恨が残っていただろう。

 一時的だからこそ許された手段だと、当然ハジメも理解してやったのだ。

 そうでもしなければ、いつまで経っても代表は決まらなかったと考えて、あえてあんな方法を取ったのだ。

 

 まずは掲示板を使って、今回の回復薬の買い占め騒動に対抗する団体が出来たことが周知された。

 同時に対抗する手段も発表された。

 それはごく単純な方法で、毎日一定数量以上の回復薬を今までと同じ値段で出すということだ。

 一定数と言うのは、大体買い占めが始まる前の数量を目安にしていることも発表されている。

 勿論これは、目くらましの意味もある。

 当然ながら馬鹿正直にその数だけを用意しているわけではなく、それ以上の数を用意することになっている。

 回復薬が買えなくなると言う考えが、高騰をさせる原因になるのだから、普通に買えるのだと思わせればいい。

 団体に所属している露店で回復薬が出されることになるが、一人が購入できる数には購入制限を設けられることも決められた。

 勿論買い占めを避けるためだという注意書きもされている。

 当然不満も出てくるだろうが、いずれは全く買えないよりましだという意見になるだろう。

 これで準備が整った。

 後は、買い占めを行っている団体とのチキンレースにある。

 買い占めをしている団体の資金が尽きればその団体の負け、そうでなければ回復薬が高騰していくという事になる。

 ハジメ以外の調合スキル持ちも当然ながら参加している。

 そうでなければ、DランクやEランクの回復薬まで手が回らない。

 実際はやろうと思えば何とかなるだろうが、他にも調合スキル持ちがいるのに、わざわざそこまでする必要はないのだ。

 

 作戦が開始されてから最初の数日は、ほとんど効果が無いように見えたが、それ以降は徐々に効果が出て来た。

 Cランクの回復薬はともかく、Dランクの回復薬で捌ききれない物が出て来たのだ。

 店で考えれば余剰在庫という事になるのだが、逆を言えば買い占めが出来なくなっていることを示している。

 Cランクの回復薬が売り切れているが、それは買い占めが始まる前からそうだった。

 だからと言ってすぐに以前の状態に戻すことはしない。

 まだ買い占めをしたときの在庫を抱えているはずなので、それが出回るまでは安心出来ないと判断されたのだ。

 その間、ハジメは回復薬を作り続けた。

 当然、以前からパティに卸していた分以上の数を作っている。

 Dランクの物はもう必要が無いので、既に他の者に任せている。

 そうこうしている間に、Cランクの回復薬が作れる者も増えてきているので、ハジメ一人で賄う必要もなくなるだろう。

 そんなことをしていたら、ついに買い占めの在庫分らしき回復薬が出回り始めた。

 それと同時に掲示板に、買い占めていた団体から敗北宣言が出された。

 最初は騙りだと思われていたのだが、最終的には本物だと認識された。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 既にパティたちの勝利が決まって、以前の落ち着きを取り戻しつつあったある日。

 いつものように商品を卸しに来ると、パティから客が来ていると告げられた。

「客? 俺にか?」

「他に誰がおるん? うちに回復薬卸してるのは、あんさんしかおらんよ? それにハジメの名前で指名されておるで?」

 パティの言葉に首を傾げた。

 誰とも約束をしていないはずなのだ。

「誰だ?」

「さあ? 今回の同盟のメンバーではないことだけは確かや。そろそろ卸しに来ると言っておいたからまた戻ってくるんやないか?」

 

 そんなことを話していたら、実際にその客がやって来た。

「やあ。やはりあなたでしたか」

 そう言って現れたのは、以前ハジメをスカウトしようとしていた男だった。

「お前か。・・・・・・そうか。そういう事か」

「やはり気づきましたか。まあそうなってもらえるようにわざわざ顔を出しに来たんですが」

「何の用だ?」

「いえ。単に直接、敗北宣言をしようと思いましてね」

 その言葉に、ハジメは呆れたような表情を見せた。

「わざわざか? それに、俺は代表と言うわけではないが? 代表はこっちだ」

 そう言って微妙な表情をしているパティを指した。

 既にパティも状況を理解しているのだろう。

「ははは。いや、別にどちらでもかまいませんよ。取りあえず、今回は負けました。またいずれ遊びましょう」

 男はそう言って去って行った。

 

「勘弁してほしいんだが、と言いたかったんだがな」

「無理なんちゃう? 完全に目の敵にしておったで?」

「それはパティもそうじゃないか?」

「勘弁してほしいわ」

 ハジメとパティは、同時に顔を見合わせてため息を吐くのであった。

11/13 話し合いの場について説明不足を指摘されたため、その部分の加筆修正を行いました。


回復薬やら薬草やらを作りまくったので、今回もレベルアップあります。


 名前:ハジメ

 種族:ヒューマン(人間)

 職業:作成師クリエイターLV18(2up)

 体力 :1370(+140)

 魔力 :1870(+100)

 力  :40(+7)

 素早さ:41(+7)

 器用 :109(+25)

 知力 :63(+15)

 精神力:66(+18)

 運  :9

 スキル:調合LV9(1up)、魔力付与LV7、鑑定LV7(1up)、俊敏LV4、短剣術LV3、風魔法LV2、収納LV5、空き×2

 職業スキル:短縮作成

 

 名前:ルフ

 種族:フェンリル

 職業:狼LV12(7up)

 体力 :2910(+600)

 魔力 :795(+211)

 力  :153(+40)

 素早さ:97(+22)

 器用 :40(+10)

 知力 :53(+10)

 精神力:35(+6)

 運  :10

 スキル:噛みつきLV8(1up)、威圧LV7(1up)、俊敏LV8(2up)、気配察知LV5、収納LV5(2up)、火魔法LV4(2up)、魔力操作LV4(2up)、空き×2(New!)

 職業スキル:遠吠え

 固有スキル:鋭敏な鼻

 

 名前:イリス

 種族:牛獣人

 職業:農婦ファーマー(一人前)LV11(6up)

 体力 :2174(+501)

 魔力 :1223(+204)

 力  :97(+20)

 素早さ:25(+6)

 器用 :70(+15)

 知力 :44(+10)

 精神力:55(+12)

 運  :10

 スキル:栽培LV9(1up)、料理LV4、棍棒術LV3、怪力LV6(1up)、採取LV5(2up)、成長促進LV5(2up)、水魔法LV3(1up)、空き×3(New!)

 職業スキル:種子作成

 固有スキル:緑の手

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