(2)職業決定
連続投稿2話目です。
「ステータスを確認しよう」を進めると、効果音が鳴り再びメッセージが出て来た。
クリックして進めたことが、どうやらクエストを受注したことになったようだ。
モニターの画面には現在いくつかの項目が表示されている。
その中の<メンバー>と言う所に、カーソルが点灯している。
指示通りに<メンバー>をクリックした。
続いて出て来た画面に<ハジメ>と表示されて、同じようにカーソルが点灯していた。
「名前入力した覚えはないんだが・・・いつの間に?」
それともここに来た時点で、既に名前は知られていたとも考えられる。
これほど大掛かりな仕掛けを作れる存在なのだから、名前を知るくらい出来るのだろうと思うことにした。
名前:ハジメ
種族:ヒューマン(人間)
職業:なし
体力 :40
魔力 :40
力 :1
素早さ :1
器用 :1
知力 :1
精神力:1
運 :1
スキル:なし
名前をクリックするとステータスが表示された。
どう考えても弱いと分かるステータスだ。
ステータスを表示すると同時に、効果音が再び流れた。
クエストを達成したことを知らせる効果音だった。
同時にメッセージも出ていたので、それをクリックするとクエスト達成の文言と達成報酬が表示された。
『おめでとうございます。初めてのクエストを達成しました。
達成報酬:パン(受領箱)、幸運のチケット、SP+100
このように(受領箱)となっているアイテムは、受領箱に入ります。
<幸運のチケット>はこの後のキャラクターメイキングで使用できるアイテムになります。
どこで使えるかはご自分でお探しください』
メッセージを確認した後、受領箱を見てみると確かにパンが一つ入っていた。
所謂フランスパンと言うやつだった。
「そう言えば、食事ってどうなるんだ?」
まさかこのパンだけ過ごすわけでもないと思うが、やはり気になる。
外に出る扉もない以上、クエストかもしくは外に出ることが出来るようになるのだろうか?
今のところは全く状況が分からないので何とも言えない。
悩んでいる時間が勿体ないので、取りあえずモニターに戻って作業を進めることにした。
手に入れた報酬のうち、パンは確認することが出来た。
後は幸運のチケットとSP+100だが、SPに関してはすぐに確認できた。
スキルの項目のすぐ下に、SPが出来て現在は100が入っている。
幸運のチケットは今のところ利用意図が分からない。
取りあえず現在のモニターの表示を確認すると、トップの画面らしきところが表示されていて、いくつかのメニューが表示されていた。
<メンバー>
<所持アイテム> New!
<クエスト> New!
<拡張機能> New!
<掲示板> New!
<ヘルプ> New!
メンバーは先ほどステータスを確認するところだ。
アイテムは、幸運のチケットと0GPが表示されていた。
クエストは見たままなので、後回しにする。
続いて拡張機能だが、これを開くと更にいくつかの項目に分かれていて、中を見ると今いる部屋の拡張が出来る機能だった。
さらっと見ただけだが、風呂があったのが嬉しい。
ついでに、拡張する項目の後には、○○GPと表示されていた。
GPはここで使える通貨のような物だと理解できた。
他にもあるのかもしれないが、取りあえずはそう言う理解でいいだろう。
掲示板とヘルプに関しては、ハジメが知っているものと大差はなかったので、さっと見ただけで終わらせた。
ヘルプは後でじっくり見た方がいいかもしれないが、今はそんな余裕はない。
すぐにクエストに取り掛かることにした。
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取りあえずクエストは受領しないで、内容だけを見ることにした。
クエストはいくつかあったのだが、タイトルをクリックすると内容の詳細と報酬が書かれていた。
更にそのクエストを受領するか後回しにするかと言う項目もあった。
この辺は、ハジメが知っている一般的なゲームと変わりは無いらしい。
今確認できるクエストは以下の物だ。
「職業に就こう」
New!「スキルを獲得しよう」
New!「GPを使おう」
New!「ステータスを上げて成長しよう」
New!「掲示板に書き込みしよう」
一番上の「職業に就こう」に New!が付いていないのは、先ほど確認のために一度開いたためだ。
もう一度確認すると、先ほど見逃していた重要な項目が記載されていた。
依頼内容の最後に、さり気なく<幸運のチケット使用可>と書かれている。
リンクになっていたので、クリックすると「レアな職業が獲得できる」と表示されてきた。
思わず即使いたくなってしまったが、一旦落ち着くことにした。
他にも使い道があるのだから、そこで使ったほうがいいかもしれない。
クエストの一覧画面に戻って他の項目も確認してみた。
まず「スキルを獲得しよう」で確認できた内容は、スキルの獲得にはSPを使用することだった。
ここでも<幸運のチケット使用可>の表示があり、中身を確認すると「SP獲得+1000」と表示された。
スキルに関しては、取得制限はないらしい。
ただし、職業によって使える物と使えない物があるので、職業によっては獲得する意味がない物もある。
職業についていれば、使えるスキルだけが表示されてくるとのこと。
ただし、使えないスキルが獲得できないわけではなく、非表示になっているのを表示して獲得することもできる。
確認する限りでは、スキルを獲得する前に職業を決めた方がよさそうだ。
次の「GPを使おう」は、クエストを受領することによってGPを獲得して、その獲得したGPでパンを購入するという物だった。
これも後回しでいいだろう。
「ステータスを上げて成長しよう」は、ステータスの成長のさせ方が説明されていた。
ステータスの上げかたは、全部で三つ。
一つめは職業LVのアップによって。
二つめはSPを消費することによって。
三つめは何かの行動をすることによって。
どれも定番の上げ方で、特に違いはなかった。
ただ、三つめに関しては、どういう行動で上がるのかが分からないので、注意が必要だろう。
ついでにこのクエストにも<幸運のチケット使用可>の表示があった。
効果は「SP獲得+1000」でスキルの時と同じ内容だった。
最後の「掲示板に書き込みをしよう」は、タイトルのままで中身に関しては、特に注意すべきことはない。
あるとすれば、獲得報酬に「フレンド機能の開放」があったことだろう。
フレンドがあるという事は、同じような立場の者がいるという事だ。
これはこれで一つの情報になる。
一通り確認が終わったので、早速職業から決めることにした。
特に順番を気にする必要性も感じなかったので、一番上から実行することにした。
早速クエストを受領して職業を決めることにした。
やり方は単純だった。
まずステータスを開いて職業の欄をクリックする。
すると今就ける職業の職業の一覧が表示されるので、その中から就きたい職業をクリックするだけだ。
ハジメが今就ける職業は、戦士から魔法使いまで定番の物が表示されていた。
その中で一つだけ気になる物があった。
<作成師>
聞いたことのない職業だった。
いや、字面から何となくイメージはわくのだが、どういったものかはよくわからない。
例によってクリックすると説明文が出て来たので、それを読んでみることにした。
作成師:ハジメ専用職業。
様々な物を作ることが出来る万能職人。ただし、手を出し過ぎると器用貧乏に
なりやすいので注意。
分野に限らずあらゆる生産スキルを成長させることが出来る。
戦闘は若干不得手。
「専用職業かよ」
元々生産スキルは取るつもりだったので、願ったりの職業だ。
戦闘に関しては不安があるが、そもそもハジメ自身がバリバリの戦闘は得意とは言えないので、問題ないと考えた。
「それにしても何を基準に・・・って、あの性格診断テストか」
こちらに来る前に三十分近くやらされたテストを基準に、この職業が出現しているのだろう。
ハジメの性格上でも、確かに戦闘を苦手としているところもあるので、当たっているといえる。
あくまでゲームの上ではと言う注釈はつくが、元々戦闘が下手だという自覚もあったので、迷わずこの職業を選ぶことにした。
後々戦闘で困ることがあるかも知れないが、その場合は生産して引きこもる気満々だった。
「生産だけで引きこもることが出来ればいいが、そんなに甘くないかな? ま、ここは悩んでもしょうがないか」
例え戦闘職を選んだとしても、どう言った内容のクエストがあるか分からない以上、悩んでも意味がないと割り切ることにした。
この先の人生が掛かっているのだが、ここで悩んで後から後悔するより、さっさと決めた方がいい。
そう思うことにして、さっさと<作成師>を選択して、決定することにした。
『職業が決定しました。クエスト報酬を獲得しました。
プレイヤーが職業に就いたことにより、サポートキャラ機能が開放されました』
<作成師>になったので、クエスト報酬を得たのだが、それよりも次の行が気になった。
「サポートキャラって何だ?」
メニューに戻って確認するが、メンバーの所に「New!」が付いていた。
最初に確認した時に消えていたが、新しい項目が増えたのだと理解して、メンバーの項目を確認する。
すると次のページに、プレイヤーとサポートキャラという項目が出来ていた。
プレイヤーは、ハジメ自身が表示されたが、サポートキャラはクリックしても何も表示されない。
これだと何もわからないので、ヘルプを見ることにした。
サポートキャラ:プレイヤーの行動を助ける補佐要員。
魔法的な制約があるためプレイヤーに敵対的な行動をとることがない。
「来た、これ!」
思わずガッツポーズを取ってしまった。
戦闘が得意なサポートキャラがいれば、戦闘が必要になった場合でもなんとかなるだろう。
いや、なってほしい。
「あれ? でもサポートキャラってどうやってもらえるんだ?」
<メンバー>の項目を確認した時には、メンバーを増やすような項目は無かったのだ。
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サポートキャラの獲得方法は、すぐに分かった。
クエストに新しい物が追加されていたのだ。
New!「一人目のサポートキャラを獲得しよう」
次はスキルを取ろうと思っていたのだが、サポートキャラの様子を見てからスキルを獲得することにした。
早速クエストを受注して、実行することにした。
「・・・おっと。幸運のチケットが使えるな・・・」
今のところ幸運のチケットが使えるのは、SPを獲得する物しかない。
SPはSPで魅力的なのだが、ハジメはここが使い時ではないかと思った。
何しろ良いサポートキャラが来るだけで、今後の影響はかなり大きいものになる。
流石に少し悩んだが、ここで幸運のチケットを使うことに決めた。
リンクからそのまま「幸運のチケットを使用する」を実行すると、メッセージが出て来た。
『おめでとうございます。<フェンリルの子>獲得権を得ました。
<フェンリルの子>をサポートキャラにしますか?』
今度は迷わず「Yes」をクリックした。
クリックと同時に、クエスト完了の効果音が流れてくる。
「グルルルルル」
その音に合わせるように、横に一匹の犬(?)が現れてきた。
犬(?)と疑問形だったのは、明らかに犬よりも野性味が高かったのだ。
体長は大型犬くらいの大きさで、体毛は銀色のような色合いをしていた。
その尻尾は大きく左右に振られている。
「よろしくな」
ハジメがそう言って手を伸ばすと、フンフンと匂いを嗅ぎ始め、更にはペロペロと舐め始めた。
最初は精悍な顔つきをしていたように見えたのだが、そうしているとほとんど犬と変わらない仕草だった。
フェンリルが犬と同じ性質を持っているのかハジメには判断できなかったが、今のところは同じような印象を受けた。
ハジメがモニターに向き直ると、その犬(?)はおとなしくお座りをした。
いずれ時間が出来た時にたっぷりと構ってやろうと決意したが、いかんせん今は大事な時なのでしょうがない。
サポートキャラ獲得クエストで得た報酬は、ペット用のトイレだった。
しかも用を足し終わると自動で水が流れる優れもの。
フェンリルのトイレをどうしようかと思っていたのだが、これはありがたい報酬だと思うハジメであった。