(13)エンチャント
☆スキル掲示板より抜粋
エンチャントとはどういった技術なのか。
大別すると二つの技術がある。
一つは、武器や防具、その他の道具などに魔法の効果を付与すること。
もう一つは、魔石などに魔法の属性を付与して、それ自体をエンチャント用の触媒として使うこと。
最初の方を直接エンチャント、二つ目の方を間接エンチャントと呼ぶらしい。
間接エンチャントが何故あるのかと言うと、直接エンチャントの成功率を高めるためだ。
直接エンチャントの場合の成功率は、エンチャントレベルが低い場合はかなり低い。
それを高めることが出来るのが、触媒を使ってのエンチャントということだ。
高めるといっても成功率が百パーセントになるわけではないのだが。
直接エンチャントの際に、失敗してもそれだけで終われば特に問題はない。
ただ、残念ながらそんなに甘くはなく、エンチャントに失敗すると、対象となった道具が壊れてしまう。
そのため余程の自信が無い限りは、間接エンチャントを使うことを推奨している。
以上、ここまではヘルプさん情報まとめでした。
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「イリス! 右!」
「はい!!」
ハジメの注意が飛ぶと、イリスが右を振り返った。
ゴブリンが近寄ってきたことを確認したイリスは、そのまま持っているハンマーを振り回した。
「グギャ!?」
ハンマーが当たったゴブリンは、何とも言えない声を発してそのまま倒れた。
反対側を見ると、ルフがゴブリンの喉に噛みついている。
改めて周囲を見るが、ゴブリンその他のモンスターは出ていないようだった。
落ち着いたところで確認をすると、八体のゴブリンが倒れている。
追加のゴブリンがいないことを確認して、ハジメは大きく息を吐きだした。
ハジメたちは現在、拠点から三時間以上離れた、いわゆる第二段階と呼ばれる場所に来ていた。
数日前にルフが持ってきた魔晶石が、エンチャントの触媒としてかなり使える物だという事がわかったので、あわよくば追加をしたいという目的のためだ。
ルフに先導してもらう事数時間歩き続けていると、第一段階では出てこないモンスター達も出始め、更に出現率も上がっていた。
「しかし、ルフもよくもまあ、こんな場所から持ち帰ってきたな」
「私達がいない分、身軽で動けたのでしょうね」
そのルフは、ハジメが褒めたのが分かったのか、近寄ってきて尻尾をふりふりしている。
撫でて欲しいという催促だと分かったので、首筋を軽く撫でてあげた。
第二段階の場所に入ってから、既に二時間が経過していた。
残念ながら魔晶石は見つかっていないが、魔石はいくつか見つかっている。
モンスターからのドロップではなく、自然に落ちている物を拾った結果だ。
解体や報酬のスキルがあれば、モンスターからも見つかることがあるそうだが、ハジメたちはそのどちらも持っていない。
スキルが無くても解体自体は出来るが、非常に手間がかかる。
例えばゴブリン一体倒すのに五分掛かったとして、その一体を完全に解体するのに十五分以上かかるのだから話にならない。
スキルレベルが上がればそれも改善するのだが、ない物はないのだからしょうがない。
クエスト報酬である右耳だけ切り落として、別の場所へと移動を繰り返していた。
「・・・・・・そろそろ戻ったほうがいいかな?」
戻る時間のことを考えると、第二段階の場所に長居するわけにもいかない。
戻っている最中に日が暮れるという事態だけは避けないといけないのだ。
「そうですね。その方がいいかと思います」
目的の魔晶石は見つからなかったが、そもそもそう簡単に見つかるとは考えていなかった。
魔石は簡単に手に入るが、魔晶石は今の段階ではレアドロップらしくほとんど出回っていないと、パティとの会話で言っていた。
だからこそこうして第二段階まで出張ってきたのだが、そうそう甘くはないということだ。
「いずれは、遠征できるようにすることも考えないといけないかな?」
ハジメはともかく、畑の管理があるイリスは、そうそう遠出はできない。
一日程度なら問題ないのだが、流石に何日も畑を放置するわけにはいかない。
「一晩程度でしたら畑は問題ありませんが、それ以上となると事前に教えてくださいね」
「わかってる。それに、今のところ長期の遠征しても、あまり意味がないからな」
魔石を得るためだけに数日の遠征をしてもほとんど意味がない。
勿論、第二段階の場所にあるのは、魔石だけではなかったので、意味がなかったわけではない。
第一段階では見つけれなかった魔力草や毒草、麻痺草も見つけることが出来た。
といっても群生地帯をいくつか見つけた程度で、それぞれ数十本ずつ採取できたくらいだ。
湖周辺と違って戦闘が発生して、採取がままならないという事もあった。
見つけたうちの半数は調合用にするつもりだが、残りの半分はイリスに渡した。
イリスはすぐさまその場で、それぞれの草を種に変えていた。
畑で栽培するつもりなのだ。
ただ、魔力草はともかく、毒草や麻痺草が周辺にどの程度影響を与えるのか分からない。
渡されたイリスも慎重に確認すると言って受け取っていた。
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拠点へと戻ってきたハジメは、早速魔石を使って、予定していた実験をすることにした。
まずは、戻ってくる途中に採取して来たヘミール湖の水と、イリス特製の薬草を使って、回復薬の調合を行う。
途中で光のエンチャントを水に施した後で、いつものように調合を行った。
当然エンチャントを行う際は、取って来た魔石を触媒に使っている。
出来た回復薬は、次の様になった。
名称:回復薬
品質:C
効果:体力を200回復する
「よっし、やった!」
初めて品質Cの回復薬が出来た。
しかも品質C-を飛ばして、ランクCの物だった。
まず、品質Cの回復薬を作成するには、光の属性エンチャントが必須となる。
そのために魔石が必要だったのだ。
「C-」を飛ばして、いきなり「C」になったのには別の理由もある。
それがイリス特製の薬草だった。
イリスが作成した薬草が、自生している物よりも品質が高かったのだ。
それに気づいたときには、品質Cの物が出来るのではないかと考えていた。
必要なエンチャントの技術と材料の品質が、品質Cの物が出来ることとなったのだ。
「さて、問題はここからだな」
元々「C」の品質の物が出来ることは狙っていたので、最初から複数作るつもりでいたのだが、その必要が無くなったので次の作業をすることにした。
この作業をしたいがために品質「C」を狙っていたのだ。
用意するのは、薬草が百本にヘミール湖の水、後は先ほど使った魔石だ。
「・・・・・・短縮作成」
作成師のスキルである短縮作成を行う。
その結果は狙い通り百本分の品質「C-」の回復薬が出来ていた。
「C-」の回復薬が出来ることは織り込み済みだったのだが、今回狙った結果は別の所にある。
ハジメの視線は、出来た回復薬ではなく、今回使った魔石の方を向いていた。
その魔石は、崩れるわけでもなく、先ほどと同じように存在している。
手を伸ばして魔石を確認してみたが、短縮作成を使う以前と同じような状態だった。
「成功だな」
魔石を慎重に確認していたハジメは、安心したように溜息を吐いた。
ハジメが今回の実験で確認をしたかったのが、この作業で魔石が壊れないかどうかだった。
触媒用に使う魔石は、回数を重ねると壊れてしまうことがある。
多く使えば多く使うほど壊れる確率は高くなるので、基本的には魔石も消耗品扱いになっている。
魔石自体は、戦闘系のプレイヤーから大量に仕入れることが出来る。
そのため、さほど高価ではないのだが、それでも破損を抑えられるのならなるべく抑えたい。
そのための実験だったのだが、上手くいったようだった。
もう少し回数を重ねないと断言はできないが、百本分の回復薬が出来ているが、百回分とカウントされるのではなく、短縮作成一回分とカウントされている。
以前からもそうだったが、短縮作成はエンチャントが必須になる品質「C」以上でも、大量生産に向いているスキルと言える。
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実験成功に気を良くして、モニターを確認するとパティからのメールが届いていた。
届いたのは、つい先ほどで、拠点に戻ってきたときには無かった物だ。
何だろうと思い、メールを開いてみた。
From:パティ
To :ハジメ
件名:至急
内容:出来るだけ早う、在庫ある分だけ香水を持って来て!
種類は問わずでええから!
どこからか噂を聞きつけたのか、売れに売れて、既に在庫がピンチやねん!
仕入れの催促のメールだった。
以前卸したときは初回という事で、堪っていた分すべてを卸していたのだが、それが既に底を付きそうだという事だった。
回復薬は、数度卸していたのだが、香水はさほど売れているという事は無かった。
まだ時間はある。
メールだけだと詳細が分からないので、香水を卸しに行くついでに、回復薬を持って行くことにした。
交流の街に行く前に、イリスに一声かけてから行くことにする。
パティと会おうとするときは、必ず一緒に付いてきたがるので、声を掛けないと後で何を言われるのか分からないのだ。
裏口から畑へと出て作業を行っていたイリスへと声を掛けた。
「ご苦労さん」
「あ、ハジメ様。何かありましたか?」
「ああ。香水の在庫がピンチらしいんで、パティの所に卸しに行くが、一緒に「行きます!」・・・・・・そうか」
質問をしきる前に、答えをかぶせて来た。
既に作業していた場所から動いていて、農具を片づけ始めている。
「そんなに慌てなくても置いて行かないぞ?」
一応そう言っておいたが、聞こえているのかいないのか、さっさと片づけを済ませてしまった。
「では行きましょう」
「いや。まだ持って行く物も用意していないんだが?」
勢い込んで言って来たイリスに、ハジメはそう答えたが、なぜか白い目で見られてしまった。
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パティの露店は、大体はいつも同じ場所に開いている。
建物で店を構えているわけではない以上、特定の場所と言うのは無いはずなのだが、一応のルールが商人たちの間で決められているようだった。
ハジメの隣には、作業服から着替えたイリスがしっかりと付いてきている。
以前に別に作業服のままでも、とポロリと言ってしまったのだが、しばらく口をきいてもらえなかった。
鈍感系ではないつもりなので、なぜ怒ったのかと思うほど鈍くはない。
ただ、つい口から滑ってしまったのだが、もう二度と口にはすまいと決めた。
あの時のような経験は、一度すれば十分なのだ。
「いやー。ありがとう。助かったわ」
パティに香水の追加分を渡すと、笑顔を返された。
目にドルマークが見えていたのは、恐らく気のせいではないのだろう。
「いや。こっちも売れれば儲かるからそれはいいんだが。・・・・・・それで? 何があった?」
「理由はさっぱりやわ。二、三日前から、何や売れてきたなあ、と思うとったんやけど、今日になって勢いよく売れだしたん」
「それで在庫がつきそうになったと?」
物によっては既に在庫がなくなっている者もあった。
「そうやねん。今日来てくれたから良かったけど、明日だったら確実になくなってたわ」
「まさか、明日以降もこのペースが続くとかはあるか?」
「さすがにそれはないと思うわ。所詮香水やし。ある程度渡ったら収まると思うわ」
「だと、良いがな。問題は、ある程度、と言うのがどこまで続くかだな」
「いややわー。あんまり脅かさんといて」
香水は、回復薬のように一気に無くなる物ではないので、すぐに使い切るということは無い。
今はまだ新しく手に渡っている段階なので売れているが、しばらくすると落ち着くと読んでいる。
問題は、その新たに購入する人数がどれくらいになるのか全く読めないことだった。
そもそもプレイヤーがどれくらいの人数がいて、そのうち女性プレイヤーが何人いるかも分かっていないのだ。
結局、ハジメの懸念が現実の波として押し寄せてくることが、翌日になって判明するのであった。
今話からステータスの変化は、後書きに乗せることにします。
変化のあったステータスを(*up)もしくは(New!)で表示します。
名前:ハジメ
種族:ヒューマン(人間)
職業:作成師LV12(2up)
体力 :920(+150)
魔力 :1480(+200)
力 :20(+6)
素早さ:23(+7)
器用 :51(+8)
知力 :31(+6)
精神力:25(+5)
運 :9
スキル:調合LV7(1up)、魔力付与LV3(2up)、鑑定LV6(1up)、俊敏LV4(2up)、短剣術LV3(2up)、風魔法LV2(1up)、収納LV2(1up)、空き×1(New!)
職業スキル:短縮作成
名前:ルフ
種族:フェンリル(子)
職業:子狼LV8(3up)
体力 :1300(+250)
魔力 :132(+42)
力 :57(+15)
素早さ:41(+11)
器用 :13(+3)
知力 :23(+5)
精神力:16(+3)
運 :10
スキル:噛みつきLV6(2up)、威圧LV4(2up)、俊敏LV5(1up)、気配察知LV4(1up)、空き×1(New!)
固有スキル:鋭敏な鼻
名前:イリス
種族:牛獣人
職業:農婦(駆け出し)LV6(4up)
体力 :721(+475)
魔力 :630(+405)
力 :37(+25)
素早さ:7(+4)
器用 :25(+17)
知力 :15(+10)
精神力:15(+9)
運 :10
スキル:栽培LV6(3up)、料理LV3(2up)、棍棒術LV3(2up)、怪力LV4(2up)、空き×1(New!)
職業スキル:種子作成
固有スキル:緑の手




