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ミクシードワールド ~神の作業帳~  作者: 早秋
第一章 回復アイテム
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(9)拠点拡張とエンチャント

※感想にてとある理由からタリスの名前を変えた方がいいのではないかというご意見をいただきました。

作者も皆様にタリスの名前が定着する前に変更したほうがいいと判断したために、タリスの名前を変更することにしました。

変更後の名前は「イリス」です。

え? 変わってない? き、キノセイデスヨ、たぶん。

 まずはイリスの装備から整えることにした。

 武器として棍棒を一本、旅人の服と外套、サンダルは、ハジメと同じものを揃えた。

 これでイリスの装備は良しとする。

 いずれは装備も良くしていかないといけないのだが、今のところはさほど必要性も感じない。

 ハジメは気づいていなかったが、この辺りからイリスの表情が変わり始めていた。

 まずは畑を、と思っていたのだが、一番小さい畑でも五万GPしたのでとてもではないが手が出ない。

 他に何かと探してみると、五千GPで<小さい裏庭>と言うのがあったので、それを設置。

 裏庭の設置と同時に、キッチンの傍に裏庭に出るためのドアが出現した。

 小さいとはいえ畑を作る以上農具を揃えないといけないという事で、そのための農具を揃えた。

 ここまでハジメは景気よくポンポンと購入していたのだが、イリスの表情が減っていくGPを見て青くなっていた。

 画面に集中しているハジメは、当然気づいていない。

 一通りの道具を揃えて、次はイリス用の部屋を、とクリックしようとしたところで、それを止める声が聞こえて来た。


「お待ちください」

「へ? え、え・・・? あれ?」

 ここで初めてイリスの表情に気付いたハジメ。

 その顔は、完全に般若になっていた。

「え、えーと、イリスさん? せっかくの美人な顔が、すごいことになっていますが・・・?」

 美人と言われて、少しだけその表情が動いたが、残念ながら完全に改善するまでには至らなかった。

「だ・れ・の・せ・い・ですか!」

「お、俺のせい?」

 イリスの様子に、ハジメは完全に逃げ腰になっていた。

「他に誰がいますか! 全く、ハジメ様の買い物は無計画すぎます!」

「えー・・・? でも必要な物だし・・・」

「だとしても、いつでもこんな買い方をしていたら、欲しいときに欲しいものが買えなくなります」

「えーと・・・はい、ソノトオリデスネ」

 それに関しては、全く反論できなかった。

 そもそもこの世界に来る前も、金遣いは良い方ではなかった。

 イリスの言う通り、欲しいときに欲しいものが買えないというのは、しょっちゅうだったのだ。

 だからといって、借金してまで手に入れるような度胸も無かったのだが。

「今後は拠点のお金に関しては、私が管理します!」

「えー・・・?」

「い・い・で・す・ね?」

「・・・はい」

 渋々頷くハジメに、イリスがようやく納得したような表情になった。

 結局この後の相談で、ポイポイと無計画に買うのではなく、きっちりと相談したうえでGPを使っていくことになるのであった。

 

「それはいいけど、やっぱり別の部屋は必要だと思うんだが?」

「なぜですか?」

 不思議そうな顔を浮かべるイリスに、ハジメは慌てた。

「いや、なぜって・・・ほら、同じ部屋に男と女がずっと一緒っていうのは、やっぱり・・・」

「わ、私は気にしません。そ・・・それに、私はいつでも構いませんから」

 頬を赤く染めながら子声になりながらもはっきりと言ったイリスに、ハジメの心臓はもう爆発しそうだった。

 流石にここで何のことだ、と聞き返すほどの鈍感ではないつもりだ。

「そ、そ、そうなんだ・・・?」

「・・・・・・はい」

 消え入りそうにな声だったが、しっかりと頷くイリス。

 ここまでされて逃げ腰になるほど、ハジメも馬鹿ではない。

 これほどの美人に迫られて、男として嬉しくないはずがないのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 結局、新しい部屋は追加しないことになった。

 ただし、ベットは二人で寝るには狭すぎるという事で、新しいものを購入することを許してもらった。

 選ぶときはイリスもノリノリだったように見えたのは、ハジメの気のせいではないだろう。

「そう言えば・・・」

「はい?」

「女の人の視点で見てほしいんだけど、これって売れると思うか?」

 ハジメはそう言いつつ、ベットの下に置いてあった香水類を取り出した。

「それは?」

「いくつかの種類の香水」

 イリスは、一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに真剣になった。

「・・・匂いを嗅いでも?」

「勿論」

 一つだけ取り出して、イリスに香水の香りを嗅がせた。

「ただ、売れるにしても売れないにしても問題が一つあって、既に<購買>で香水の類は出ているんだよね」

「・・・値段は?」

「一本八百GP位からだったかなあ?」

 食事代から考えると、香水はかなりの値段がする。

 香水だけではなく、嗜好品の類は全てそのくらいの値段はしているのだ。

 しばらく考えていたイリスだったが、やがてハジメを見て言った。

「多分ですが、売れると思います。ただ、需要がどれくらいあるかは・・・。と言うのも私達のような獣人は、香水を使わないという人も多いので」

「そうなんだ? それは匂いがきついからとか?」

「いえ、匂いそのものは、そういう物だと分かればいいんですが、匂いを付ける文化がないと言いますか・・・」

 言葉にするのが難しい感覚のようだった。

 ハジメとて、何故と聞かれて言葉にするのが難しい習慣と言うのはある。

「まあ種族はいろいろいるみたいだから、その辺に期待かな?」

「そうですね。ご自身で売るつもりなんですか?」

「まさか。商人を職業にしている人もいるみたいだから、商売相手としてよさそうな人を見つけて卸すつもりだ」

 そもそもの前提となる<交流の街>に行けることが前提になるが、既にLV10になっているので、それはクリアしている。

 ただし、そこで商売をするとなると、どのような形でやるにせよある程度の時間が拘束されることになる。

 それくらいなら、専門として商売をしている者に卸して、売ってもらった方がいいと考えていた。

 サポートキャラ(イリス)に店番をしてもらうという事も出来そうだが、彼女は彼女でやってもらいたいことはたくさんあるのだ。

 現状は畑作りという事になるのだが。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 サポートキャラが来たらその後は<交流の街>に行こうと考えていたが、予定を変更することにした。

 イリスが裏庭の様子を見たがったと言うのもあるが、ハジメも空いているスキル枠に新しいスキルを追加したかったのだ。

 新しく付けるスキルは、魔力付与エンチャントと既に決めていた。

 イリスが来る前は、採取を付けようかと考えていたのだが、状況が変わった。

 どう考えても農地を管理することになるイリスに採取を付けた方がいいだろう。

 勿論二人同時に付けるという手もあるのだが、それをするのはスキル枠に余裕が出来てからにする。

 ハジメがスキルを追加して、そのクエストを実施することを話すと、イリスは「では、裏庭の様子を見てきます」といって、その場を離れていった。

 勿論、ハジメも裏庭は見ておいたが、それは広さを確認するだけで終わった。

 <小さい裏庭>とあるだけあった、本当に小さな広さの庭という感じだった。

 しかも先の空間は広がっているのに、ある程度以上行くとその先には進めない不思議仕様になっていた。

 その程度の広さであっても畑を作れることは、イリスにとっては嬉しいようで、ハジメが用意した農具を使って早速作業に入っていた。

 今のところ何を育てるのかは決めていない。

 薬草か香草類の何れかと考えてはいるが、イリス的にはどれでも構わないという事だった。

 どうやって増やすのかと聞くと、勿論種を入手すると当然のように言われてしまった。

 種の入手先を聞くと、ファーマーには、成果物から種を作成するスキルがあるとあっさり答えが返ってきた。

 採取していた薬草を使って実演してもらったのだが、本当にその場で種に変えていた。

 便利なスキルが手に入った物である。

 

 イリスが庭の作成に取り掛かっているので、ハジメはエンチャントのクエストを進めることにした。

 クエスト自体は実に単純な物だ。

 用意された<空の魔石>に、指定された属性の魔力を付与していくだけだ。

 指定された属性は、無・地・水・火・風の全部で五つだ。

 正確には無と言うのは、属性ではなく、魔法使いなどの魔法を扱える者が属性をそれぞれの乗せれるようにするための前段階の作業のことだ。

 要は、魔法と言う現象を乗せられる前の状態にするのがエンチャント、の基礎という事だ。

 勿論エンチャントを使って様々な魔法の現象を乗せることも可能なので、あくまでも基礎なのだが。

 と言う長々とした前置きを確認したうえで、実際にエンチャントを実行してみる。

 

地属性魔力付与アースエンチャント

 

 付与する<空の魔石>を持ったまま呪文を唱えると、一瞬手が光ったかと思うと手の中の魔石が<地魔石>に変わっていた。

 何ともあっけなく成功したのだが、明らかにエンチャントのスキルがあるおかげだろう。

 その後も他の水・火・風については、特に問題なく付与することが出来た。

 問題が発生したのは、無属性の魔力付与だった。

 呪文自体はただの「魔力付与エンチャント」でいいと書かれているので、間違ってはいないはずだが、何度唱えても付与されない。

 単純にエフェクトが出てないだけかと魔石を確認するが、<空の魔石>のままなので、付与自体がされていないのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「駄目だなこれは」

 何度やっても出来ないので、一度<空の魔石>を机の上に置いてクールダウンすることにする。

 裏庭で作業をしているイリスの様子を見に行くことにした。

「どんな様子だ?」

「あ、ハジメ様」

 様子を見に来たハジメに気付いたイリスが、鍬を置いて近寄ってきた。

「ああ、見に来ただけだから作業を続けてていいよ」

 裏庭の全てを畑にしているわけではなく、ある程度のあぜ道部分は残っていた。

 実際の畑になりそうな部分は、縦横で三メートル×四メートル程度の大きさだった。

 畑になる部分が煉瓦で囲われていた。

 その囲われている場所を、鍬を使ってイリスが土を耕しているのだ。

「いえ。ひと段落つきましたから、そろそろ休むつもりでした」

「ああ、そうなんだ」

 確かに見た目上は、土を掘り起こす作業は終わっているようだった。

「はい。後はうねを作って種を植えるだけです」

 今はまだ何をどれくらい植えるかは決めていない。

 薬草は必ず入れるつもりだが、あとは香草をどれくらいの割合にするかが問題なのだ。

 商売に出来そうなら当然その量は増やしたい。

 ただ、現状どれくらいの割合で売れるのかが分からない以上、計画を立てることが出来ない。

 その辺のことは、<交流の街>に行って取引できそうな商人を見つけてからと話をしていた。

 

「どれくらい採れそう?」

「薬草だけでいいのでしたら、安定すれば、一日五十枚程度は採れそうですね」

「え!? そんなの採れるのか?」

 見た感じだと自生している物に比べてかなり狭い範囲で多くの薬草が取れるように見える。

「はい。育ててみなないとどの程度の成長になるかわかりませんが、最低でもそれくらいは採れると思いますよ?」

「うわ。舐めてたな。もっと少ないかと思ってた」

「香草も同時に育てるとなると、そううまくはいかないですよ?」

「それはしょうがない。というか、香水が売れる様だったら薬草はいっそのこと育てるのは止めるよ。普通に採取してくるだけで十分だからな」

 結局は、香水次第という事になるので、これ以上はどうしようもない。

「わかりました。後はうねを作って終わりにしますね」

「わかった」

 ハジメが頷くのを見た後で、イリスは作業に戻って行った。

 再び畑作業に戻ったイリスを見て、ハジメも室内へと戻って行った。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「無属性のエンチャントか・・・」

 戻ってきてから何度か試してみたが、どうにも上手くいかない。

「・・・あれ? そもそも無属性って何だ?」

 他の四つはイメージがしやすいが、無属性はイメージすることが出来ない。

「ひょっとしなくても魔力その物とかか?」

 ちょっとした思い付きだったが、試しに魔力その物をイメージしてエンチャントしてみる。

 

魔力付与エンチャント


 今度はエフェクトの光がきちんと出て来た。

 四つの属性は、無意識のうちにそれぞれの属性を思い浮かべていたが、無属性は何も思い浮かべていなかったために失敗していた。

 無属性と言うのは、それぞれの属性になる前のことなので、ハジメの予想が当たった為に今度はエンチャントが成功したのだ。

 これで五つ全ての魔石が完成したので、クエストは完了となる。

 それと同時に、<神の作業帳>でまた新しいアイテムと、新しい手法が追加されるのだが、それを確認するのはまた後日という事になった。

 

 これでこの日の活動は終わり・・・とはならなかった。

 広めのベットに変えたとはいえ、同じベットに美女と一緒に寝ることになったのだ。

 最初は、初日に手を出すのはダメだろうと何とか我慢しようとした。

 したのだが、イリスの「・・・・・・しないんですか?」という言葉で、理性が吹き飛んでしまった。

 後はもう我慢も出来るはずもなく、シーツの上には白いものやら赤いものが残る結果となったのであった。

11/5 最初のままだと、イリスが完全にGPの管理を行っているように感じられるとの指摘がありましたので、GPの管理方法の文章の追加を行いました。

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